三浦建太郎先生が『ベルセルク』を描き始めた時の感情を思い浮かべながら2番の歌詞を考えました――『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』ED主題歌 中島美嘉インタビュー
「思いっきり切なく悲しくしてください」
――では「Wish」について、もう少し詳しくおうかがいさせてください。原作を読んですぐに作詞に入られたとのことですが、その作業はスムーズに?
中島:はい。タイアップ先品の場合は、テーマを先にもらうことが多いんです。それをなるべく自分なりの解釈で書いていくという感じで。今回は「思いっきり、切なく悲しくしてください」というオーダーがありました。ただ、曲自体はそこまで悲しさを感じるものではなかったので、もしかしたらその塩梅を大切にされたいのかなと思いました。
――サウンドだけ聴くとむしろブライトな印象がありますよね。そのブライトなサウンドとストーリーテリングとの妙が結びついて、切なさや救いになるというか……。
中島:そうなんですよね。歌詞だけ読むと暗めなんですけど、曲に乗るとそこまで暗さを感じないというか。救われそうな曲になったなと思いました。不思議ですね。
みんなに意見を聞きたかったこともあって、書いたあとにスタッフのみんなに相談したんです。でもそれは「Wish」に限らず、一番を書き上げたあとに「こういう方向はいかがですか?」と必ず渡しています。「このまま進めて」と言われたらふくらませながら2番を書き始めるし、意見が出たら「考え直します」と。今回は特になくて、そのまま書き始めたような感じでした。
――<もう2度と 本当にありがとうも言えないの?>という言葉にすごくグッときてしまって。
中島:これは……言葉にしてしまうとどう思われてしまうか少し不安ではあるのですが、私は作者の三浦先生の気持ちを思い浮かべていました。ファンの方、みんながこう思っているんじゃないかなと。
2番の最初の歌詞は、三浦先生が『ベルセルク』を描き始めた時の感情を思い浮かべながら考えたものなんです。考えると涙が出てしまうんですよね。あくまで私の勝手な印象ではあるのですが、なにかに傷ついてきた人なのかもしれないなって……。
広く愛されれば愛されるだけ、いろいろな意見が生まれるものだと思うんです。それが全て好意的な意見とは限らなくて。その中で描き続けるってすごいことですから。その勇姿を忘れてしまうのは私たちの罪だ、と。
――それで<恐れていた最高の罪 刻まれた声記憶が 薄れていく事>という言葉が綴られているんですね。
中島:はい。歌詞を読まれた方には「なんのことだろう?」って思われるかもしれないなと考えながら、2番の歌詞を提出しました。
描いた作品は永遠に残るものですが、一歩踏み込んだところを感じ取って歌にしたいと思い、三浦先生が『ベルセルク』を描いている姿を想像しながらずっと書いていましたね。
「辛いときにただ横に、そして絶対に見放さない人」
――「Wish」のレコーディングはどのように行われたのでしょうか?
中島:歌うときも悲しいんだけど……プロデューサーやディレクターが「◯◯視点で歌って」という感じで、技術的な言い方ではなく、分かりやすい例えで伝えてくれるんです。例えば「女神視点で歌って」とか。そのほうが私も分かりやすいんですよね。そういったワードを拾いながら、いつも楽しくレコーディングさせていただいていて。「Wish」は少し優しい目線で歌いました。
――慈愛に満ちた歌い方でもあるなと思いました。
中島:聖母マリアの視点もありました。辛いときにただ横にいる人。絶対に見放さない人。そういう視点で歌ってたんですよね。
――それはプロデューサーからのリクエストではなく、中島さんが決めて?
中島:そうですね。自分の中で。でも大幅に外れてはなかったようです。
――エンディングのYou TubeのノンクレジットEDも見られている方が多くて。英語のコメントが多いことも印象的でした。
中島:多くの人に見ていただき、本当にありがたいです。