マーベル・スタジオ劇場公開最新作『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』日本語版を声優・浪川大輔さん(ネイモア役)×早見沙織さん(アイアンハート役)が力説|最新作は派手なだけじゃない。楽しくて、心に響く、力強い作品!
ネイモアとリリは対照的なキャラクター
――ご自身が演じられたキャラクターは、どんなキャラクターだと思いますか? キャラクター形成の際、イメージされたことがあれば、お聞かせください。
浪川:いわゆる地上チーム、海底チームとして見た時に、地上チームは近代的なイメージがありました。映画の予告編にもありましたけど、我々海底チームが立ち向かう時に、海から出てきて空を飛んでいるんですが、みんなは見上げているんです。
早見さんが演じているキャラクターは、見るからに最先端。ゴーグルの付け方も最先端なイメージがありますけど、我々海底チームはビショビショに濡れてますからね(笑)。
一同:(笑)。
浪川:その辺りの差は妙にノスタルジックな気持ちになりました。それでも心は折れない強さがある。ネイモアを見ていると、「本当の強さというのは何だろう?」と教えてくれているような気がしました。それはネイモアという名前からスタートしているかもしれません。ネイモアという名前の由来を調べてもらってもいいですし、とにかく映画を見てもらえればわかるかと思います。
地上チームもそうですけど、海底チームやネイモアは、マーベル作品のキャラクターの能力というよりも、持っているものの力強さというのをインスピレーションとして感じました。
――早見さん、キャラクターについてお聞かせください。
早見:リリ・ウィリアムズは若くして、圧倒的な学力と想像力と発明の才能を持つキャラクターなのですが、等身大の女の子、学生という部分も秘めているんです。今作においては、化学技術や発明という部分に着目すると、やっぱりシュリという先輩がみなさんも頭に浮かぶかと思います。
まさにその通りで、今作の中でも、とあるきっかけからシュリという存在と深く関わっていくことになりますし、皆までは言えないですけど、リリとシュリの心のやり取りや、どのように二人が心を通わせていくのかというところは、物語の中でもとても丁寧に描かれているので、その辺りは注目ですね。
浪川:バディ感。とても気になります。
早見:そうなんですよね。良いバディ感があるので、楽しみにしてください。リリも戦いに慣れている人ではないので、己の意志で必死に物語についていくというところが面白いと思います。
――ある意味、ネイモアとリリは対照的なキャラクターですよね。
浪川:対照的ですよ。だいぶ違いますよ!
一同:(笑)。
――今作『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の中で、個人的にお好きなシーンやおススメのシーン、聞きどころをお聞かせください。
浪川:戦うシーンについて、「それはないだろ!」ということはないです。マーベル作品のキャラクターなので、能力的な部分や人間離れししている部分は見るからにありますけど、ちょっと身近に感じられるというか、夢の中の世界だけではない、リアルなところというのはあります。
キャラクター性に繋がるのかもしれないですが、そこに切なさがあるなと感じました。あがいてもあがいても突破できるところとできないところというのは、どのキャラクターにもあるかと思うんですが、出てきたら「はい、もう出来レース」という感じではないです。
やっぱりお互いのキャラクターたちが引けないですからね。どこを切り取っても負けられない戦いではあるので、意地があります。その辺は自分が吹き替えていても、心の底から、喉の奥の方から、気持ちと声が出ていたところではありました。
早見:リリとシュリの関係性は見どころの一つです。シュリに対して、こんなふうにコミュニケーションを取る人は、今作ではリリだけなんじゃないかなと思いましたし、「これまでこんなふうにツッコミ入れたりする人いた?」と感じるシーンはありました。
もちろん、リリも的確に状況や物語を理解して、適応していくんですけど、そういった中にも自分の意志を持って、物語に関わっていくし、自分の持っているノリみたいなものをあまり抑えないですね。リリは自分の生き方や意思というものをしっかり表明して、進んでいくので、その辺りはシュリやラモンダに影響は少なからず及ぼしていくんじゃないかと思っています。
浪川さん、早見さんの吹替現場でのあり方
――吹替というお仕事についておうかがいします。吹替をする際に、何か心がけていることはありますか?
浪川:僕はずっと吹替をやってきたので、自然と落ち着く感じではあるんです。ただ、役者さんの息づかいと声がどんなふうに出ているのかを見て、合わせようとするのではなくて、自然と同じトーンになるようには心がけています。実際に役者さんの真横にいるわけではないので、画面上でしかわからないんですけど、声の高さや低さというよりは、同じ息を吸っていたら、たぶん同じ量の息、体型は違うんですけど、同じくらいの息を吸って、同じくらいの息を吐きたいと心がけてやっています。
自然とそこが合ってくれば、音圧というのが似てくるんじゃないのかなと……。こちらも自分がしゃべりたいとは思っていなくて、その役者さんがしゃべりたいようにしゃべりたい。その役者さんがやりたいことを自分も自然とやれていたら嬉しいなと思っています。
吹替される方の中には「自分のキャラクター性と役者さんのキャラクター性を足してかけ算になればいい」という人もいらっしゃると思いますが、僕はそのような考え方と少し違います。その役者さんが持っているものが100%だと思っているので、1%も落とさず、100%で吹替することを考えて、僕はあまり自分のことを考えないようにはしています。
ただ、そこに演出が入ったり、自分でこうやりたいと思ったりとか、いろいろなものがあるので、その許容範囲というのがOKかどうかは判断してもらいますけど、基本的にはその役者さんが素敵だなと思って演じています。
早見:リスペクト!
浪川:リスペクトですね。あんまり難しく考えてはいなくて、よほど声を作ったりはしない限り、本当に自然にそのまましゃべっています。
――浪川さんは以前、アフレコ収録の前にチューニングされるとお聞きしましたが、今作でもチューニングはされたのでしょうか。
浪川:チューニングはアニメーションの方が多くて、吹替はそんなにしないですね。ただ「このトーンを維持して」と言われた時だけ、そういう時は頑張んなきゃなと思います。
――早見さんが吹替をする際に、何か心がけていることはありますか?
早見:私は吹替の現場は毎度手探りと言いますか……。アニメーションもそうなんですけど、「まずは聞いていただいてから」と思っています。
自分がこうしたいというよりは、まずは持っていって、「己のこの声帯と吹替の完成された世界の中に、少しでも違和感なく、存在できるのでしょうか。ぜひ聞いていただいて、何かあれば本当に何でもお申し付けください」という気持ちで、いつも現場にうかがわせていただいています。
浪川:それが一発OKなんですよ! これが天才なんですよ!
早見:いえいえ、そんなことはないです。毎回、吹替の現場においては、すごく緊張します。どの現場に行く時でも、緊張はするのですが、吹替はチェックの時から緊張します。丁寧に息を吸っている部分、呼吸の部分をしっかり見ています。現場で緊張感があると、役者さんとの呼吸もだんだんちぐはぐになっていったりすることがあるので、全身全霊で「現場で聞く」ということを大切にしています。
――収録現場も様々ですよね。
浪川:今作もそうですし、劇場版の現場はだいたいそうですけど、マイクが異常に多いんです。
早見:多いですね。
浪川:だから、あんまり動けないんです。
早見:私、めっちゃ動いちゃいますよ(笑)。
浪川:それで、ピンマイクを付けて、ヘッドホンを付けて、普通のマイク、ガンマイクがあって、ガンマイクは1m以上離れているんです。
早見:遠いところにあって……。
浪川:けっこう遠くにあるマイクで、たぶん一番録っているんです。だから、小さい声もそのマイクで録っているんですけど、あんまり指向性がないから。
早見:そうだったんですね。私は逆に、何かすごく嬉しくて。動けるから……(笑)。
浪川:いっぱいマイクがあるから(笑)。
一同:(笑)。
浪川:譜面台が置いてあってね。
早見:カッチリ固められている感じで、いつもと違いますね。
浪川:いろんな録音の仕方があるよね。
――楽しいお話をありがとうございました!
[取材&文・宋 莉淑(ソン・リスク) 写真・MoA]
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』作品情報
2022年11月11日(金)映画館にて公開
ストーリー
ヒーロー映画として異例のアカデミー賞®3冠、作品賞も初ノミネートを果たし、全世界で社会現象となった「ブラックパンサー」の待望の続編。国王とヒーロー、2つの顔を持つティ・チャラを失ったワカンダ国に海の帝国の脅威が迫る。ティ・チャラの妹であり天才科学者のシュリたちは、この危機にどう立ち向かうのか。そして、新たな希望となるブラックパンサーを受け継ぐ者は誰なのか…。未来を切りひらく者たちの熱き戦いを描いた、ドラマチック・アクション超大作が始まる。
スタッフ
原題:Black Panther: Wakanda Forever
監督:ライアン・クーグラー
製作:ケヴィン・ファイギ
全米公開:11月11日
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
日本語版キャスト
シュリ:百田夏菜子
ナキア:皆川純子
オコエ:斎賀みつき
ラモンダ:幸田直子
エムバク:木村昴
エヴェレット・ロス:森川智之
ネイモア:浪川大輔
リリ・ウィリアムズ:早見沙織