新海誠監督最新作『すずめの戸締まり』見どころ紹介、あらすじ・物語・テーマ解説!|過去の新海作品を振り返るともっと楽しめる? これまでに描かれた物語から本作を読み解こう!
2022年11月11日(金)より公開の新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』。新海監督にとって『天気の子』以来、3年ぶりの劇場版アニメ作品として、全世界が公開を待ち望んでいます。
アニメイトタイムズでは、本作の最新情報、見どころ紹介記事などを掲載予定! 本稿では、新海監督の数ある名作の中から数作品をピックアップして振り返ります。今回は新海監督のデビュー作である『ほしのこえ』と、近年大ヒットを記録し、最新作『すずめの戸締まり』を更に楽しむ鍵となりそうな『君の名は。』『天気の子』をご紹介!
新海監督が描いてきたもの、『すずめの戸締まり』で描かれる物語とは?
目次
新海監督がほぼ1人で製作した!?『ほしのこえ』
2002年2月2日に公開された『ほしのこえ』は、監督、脚本、演出といった制作工程のほぼ全てを新海監督が行った、初の劇場公開作品です。
2人の男女による、宇宙・地球間での遠距離恋愛を描いた恋愛SF作品で、本格的なSF設定でありながら、電子メールを使った遠距離恋愛の様子が当時のアニメファンに衝撃を与えました。
背景美術の美しさ、王道でありながら一味違う設定、切ない恋愛ストーリーなど現在では多くの人に愛されている新海作品の魅力が詰まった原点となる作品です。筆者は後追い世代で、『秒速5センチメートル』や『星を追う子ども』を鑑賞した後に本作を視聴したのですが、物語に心動かされたのはもちろん、「ここから始まったんだな……」と感極まったのを覚えています。
本作は、「セカイ系」と呼ばれる作品ジャンルを代表するアニメとして語られることもあり、2000年代のアニメファンにとっても原点のような作品なのではないでしょうか?
「セカイ系」って、なに?
現在ではあまり多用される言葉でありませんが、新海監督のインタビューなどによると『ほしのこえ』やその他の作品の影響もあって、『天気の子』を発表した際にセカイ系の作品だったと語るファンの声が散見されていたようです。
ジャンルとして使われるセカイ系というワードの意味は、時代や使われ方によって変遷していますが、TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』以降に作られた作品に対して使われるようになった言葉です。現在では“君と僕”などといった小さな関係を徹底的に描いたり、キャラクター間での問題が世界の滅亡や危機とシンクロし、キャラの行動によって世界全体に影響を与えるような展開を指すことが多いようです。
『ほしのこえ』ではノボルとミカコの関係が描かれており、『天気の子』でも主人公とヒロイン、そして迫りくる問題という展開になっています。
しかし、新海監督自体は「セカイ系」を意識して作品を制作してきたつもりはなく、あくまでもその作品を作った際の時代背景や自分の中で描きたいトピックを描いた結果だと、過去のインタビューなどで語っています。『すずめの戸締まり』に登場する主人公の鈴芽と旅人・草太がどの様に物語を進めていくのか注目ですね!
世界的に注目された『君の名は。』
2016年8月26日に公開された本作は、言わずとしれた大ヒット劇場アニメ作品です。新海誠監督といえば『君の名は。』を思い浮かべる人も少なくありません。当時最高レベルの映像美と、RADWIMPSによる繊細かつ壮大な音楽、監督らしい切なさもありながら、エンターテインメント性がプラスされたラブコメ要素が観客を虜にし国内外で大ヒットを記録。
筆者は当時高校生だったのですが、クラスや学校全体で「『君の名は。』を理解できたか・できなかったか」という話題で持ちきりでした。本作は主人公の立花 瀧(CV:神木隆之介)とヒロイン、宮水 三葉(CV:上白石萌音)の精神が入れ替わり、それをきっかけに2人の不思議な交流が始まるというストーリー。
そこにプラスして、2人の生活する時間軸が違うというタイムリープ的な、超時空的な要素が加えられており、何度も鑑賞して物語の理解を進めたり、全てわかった上で観るといった楽しみ方もされていました。幅広い層が映画館へと足を運ぶきっかけとなり、現在に続く「日本のアニメブーム」の契機となった作品の1つです。
また、話題になったのは劇中に登場する「町を破壊した隕石」です。三葉が暮らしていた糸守町は瀧のいる時間軸の3年前に隕石で消滅し、多くの住民が亡くなっていたのです。物語後半で2人は入れ替わる現象と、時間軸の違いを使って隕石が降って来るという天災から住民を救い出します。2人のタイムラグと天災が掛け合わさった後半のドキドキと解決した後のハッピーエンドが印象的でしたよね。
本作で主人公たちは、「降り掛かってくる問題を、時間を遡って未然に防ぐ」という選択をしました。次に振り返る『天気の子』でも同じような天災が起こりますが、『天気の子』のキャラクターたちはその問題とどのように向き合ったのでしょうか。
主人公・帆高と社会の対立を描いた『天気の子』
2019年7月19日公開『天気の子』。一大ムーブメントを作った『君の名は。』に続く作品という事で公開前からメディアなどにも大きく取り上げられ、注目されていた作品です。
本作は家出少年の森嶋帆高(CV:醍醐虎汰朗)と、祈るだけで天気を晴れさせる事ができる力をもつヒロイン・天野陽菜(CV:森七菜)が出会い、恋に落ちていくというもの。劇中の東京は異常気象により長雨が続いており、様々な事情で生活が苦しい陽菜は帆高の協力のもと「晴れ女」パワーを使って、依頼者の依頼を受けて特定の日を晴れにするというビジネスを行います。
こちらも帆高と陽菜、その周辺人物たちが織りなすちょっと不思議な日常を軽やかに描いておりエンターテインメント性の高い作品になっています。もちろん本作も大ヒットを記録し、陽菜の「ねぇ、今から晴れるよ」という印象的なセリフはインターネットを中心に話題となりました。
引き続き音楽を担当したRADWIMPSや、声優に起用された俳優、物語の伏線など様々なトピックで語られていた本作でしたが、話題の1つとして「ラストの展開」が挙げられます。終盤、陽菜は晴れ女の能力を持つものの運命として人柱にならなければいけない事が判明します。長雨を止めるには、彼女が犠牲になる必要があるのです。
帆高は人柱になることを受け入れ空に消えていった陽菜を追います。最終的には「雨を止め災害を防ぐ為に陽菜を犠牲にする」or「陽菜を連れ帰り止まらない雨の中、共に暮らす」という二者択一を迫られる事に。
そこで帆高は陽菜を選び東京の一部分が雨によって水没するのでした。
前作、『君の名は。』は天災を回避しましたが、『天気の子』では世界を元に戻すのではなく、狂ってしまった場所だけれども、大事な人と生きていく事を選ぶというエンディングとなりました。
公開後には、ファンや観客の間で新海の作家性や作品に込めたテーマなど、様々な感想や解釈がSNSで発信されました。新海監督はインタビュー「自分らしさではなく、今自分が描くべきだと感じた事を描いた」と語っています。
『君の名は。』、『天気の子』を通してキャラクターや監督が世界や社会の問題にどのように向き合うのかが描かれていますよね。果たして、『すずめの戸締まり』では何が描かれるのでしょうか。
(C)2016「 君の名は。」製作委員会
(C)2019「天気の子」製作委員会