この記事をかいた人
- 石橋悠
- 1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。
ーー過去作でもそうですが、新海監督の作品は新宿の街が登場しますよね。新宿の街は監督にとって特別な想いがあるのですか?
新海:今回の映画だと、新宿が出るのは一瞬だけなんですよね。東京だと御茶ノ水の辺りがメインになっているので新宿を描く必要はなかったんです。
「また新宿か」と思われるのも嫌なので、今回は描かないと思っていたんですけど、やっぱり登場させちゃいましたね(笑)。あの辺りは馴染みがある場所なので、ちょっとしたロケハンもしやすいんですよね。
僕にとって、東京と言えば新宿だったんですよ。時代とともに東京の中心って変わっていくのかなと思うんですけど、僕が上京した90年代前後というのは『シティーハンター』で新宿の掲示板が出てきたり、『パトレイバー』でよく都庁の前に立っているカットがあったり、新宿が注目されていた気がするんです。その後、東京の文化的中心地は渋谷に移ったりして変遷していきましたが、僕は世代的に新宿が中心だったので思い入れがあり、今回もつい出してしまいました。
ーーついつい出ちゃうんですね。
新海:必然性は全く無いんですけどね(笑)。
ーー新海監督の作品は監督の好きなものが沢山出ている気がして、そういうところも好かれる理由だと思います。
新海:本当はちゃんと理論立てて作っているんですよ。
ーーそれはもちろんそうだと思います(笑)。では最後に、映画公開を控えた心境をお聞かせください。
新海:この映画は今までで一番作業の物量も多くて、スタッフとも「完成が見えないね」という話を制作中によくしていました。今でも完成したのが信じられないくらいです。
無事に完成しましたが、まだ公開されていないので今は何も考えられないというか(笑)。今日が完成してからの初めての取材日で、そう聞かれた時の質問の答えをまだちゃんと持っていないんですよ。
ただ、どの作品も自分の人生にとって特別な作品ですが、『すずめの戸締まり』を作るために今までの20年間があったような気がします。
僕が最初に個人制作した『ほしのこえ』というアニメは、当時「セカイ系」と評されていて、社会と関係のない男女の物語を作る人だと思われていました。
だけど、今回の『すずめの戸締まり』は強く社会にコミットするような映画になっています。そんな映画を作ることは、当時の自分からは考えられないような気もしますが、この映画ができた背景には、この20年間の観客とのコミュニケーションの積み重ねがあると思います。
映画を公開して、お褒めの言葉も批判ももらって、さまざまな意見を受け止めながら「次はこれはどうだろう」と新しい作品をこれまで作ってきて、『すずめの戸締まり』も、「今度こそどうだ」という気持ちで作った作品です。
今度こそ観客の深いところまで届けばいいなと願っています。それがわかるのはもう少し先ですが、それまで緊張して過ごそうかなと思います。
ーー公開されたら絶対に見に行きます。ありがとうございました。
[インタビュー/石橋悠 写真/佐藤ポン]
2022年11月11日(金)公開
新海誠 集大成にして最高傑作
国境や世代の垣根を超え、世界中を魅了し続けるアニメーション監督・新海誠。全世界が待ち望む最新作『すずめの戸締まり』は、日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる”扉”を閉めていく少女・すずめの解放と成長を描く現代の冒険物語だ。
すずめの声に命を吹き込むのは、1700人を超えるオーディションから新海誠が探し出した、たったひとりの才能・原菜乃華。溢れ出る感情を声にのせるみずみずしい原石に、物語のヒロインを託す。
扉を閉める旅を続ける“閉じ師”の青年・草太役には、新海誠が「内面の豊かさ」をオーディションで見出した松村北斗。椅子に姿を変えられてしまう青年という難役を真摯な姿勢で乗り越え、見事に演じ切った。
そして二人を支える、すずめの叔母・環役に深津絵里、草太の祖父・羊朗役に松本白鸚。さらには染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜という精鋭キャストが集結。すずめの旅を鮮やかに彩る。
音楽には、新海作品3度目のタッグとなる RADWIMPS。共作として日米の映画やアニメシリーズで活躍する映画音楽作曲家・陣内一真が参加し、本作でしか成しえない最強の布陣で、壮大かつ繊細な冒険映画の機微を表現する。また、主題歌「すずめ」を唄うのは次世代の逸材・十明。唯一無二の歌声で、物語の昂ぶりを奏でる。
すずめが歩む道の先で待つのは、見たこともない風景。人々との出会いと別れ。驚きと困難の数々。それでも前に進む彼女たちの冒険は、不安や不自由さと隣り合わせの日常を生きる我々の旅路にも、一筋の光をもたらす。
過去と現在と未来をつなぐ、“戸締まり”の物語。2022年11月11日。その景色は、永遠に胸に刻まれる。
九州の静かな町で暮らす17歳の少女・鈴芽(すずめ)は、「扉を探してるんだ」という旅の青年・草太に出会う。彼の後を追って迷い込んだ山中の廃墟で見つけたのは、ぽつんとたたずむ古ぼけた扉。なにかに引き寄せられるように、すずめは扉に手を伸ばすが…。扉の向こう側からは災いが訪れてしまうため、草太は扉を閉めて鍵をかける“閉じ師”として旅を続けているという。
すると、二人の前に突如、謎の猫・ダイジンが現れる。「すずめ すき」「おまえは じゃま」ダイジンがしゃべり出した次の瞬間、草太はなんと、椅子に姿を変えられてしまう―!それはすずめが幼い頃に使っていた、脚が1本欠けた小さな椅子。逃げるダイジンを捕まえようと3本脚の椅子の姿で走り出した草太を、すずめは慌てて追いかける。
やがて、日本各地で次々に開き始める扉。不思議な扉と小さな猫に導かれ、九州、四国、関西、そして東京と、日本列島を巻き込んでいくすずめの”戸締まりの旅”。旅先での出会いに助けられながら辿りついたその場所ですずめを待っていたのは、忘れられてしまったある真実だった。
公開日:2022年11月11日(金)
作品タイトル:『すずめの戸締まり』
原作・脚本・監督:新海誠
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:土屋堅一
美術監督:丹治匠
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
制作プロデュース:STORY inc.
声の出演:
原菜乃華、松村北斗
深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜
松本白鸚
公式サイト:https://suzume-tojimari-movie.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/suzume_tojimari
公式Instagram:https://instagram.com/suzumenotojimari_official/
公式TikTok:https://tiktok.com/@suzumenotojimariofficial
1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。