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アニメ『戦隊大失格』さとうけいいち監督インタビュー

「映像にする時、我々がどう料理するのかも見てほしいところの1つです」──春場ねぎ先生の新作『戦隊大失格』がアニメ化決定! アニメ化を手掛ける『TIGER & BUNNY』や『いぬやしき』でおなじみのさとうけいいち監督インタビュー!

 

原作の春場先生からのオーダーとは?

――原作の春場先生や編集サイドから何かオーダーはあったのでしょうか?

さとう:「アクションを盛り盛りに立ててください」と。「原作はアクションものの程でいながら、アクションはそぎ落として、ドラマを進めようと描かれていますから、アニメではぐりんぐりん動いたカッコいいものを見せてください」というシンプルなオーダーでした。

当時、最初の3巻まで読んだ時の印象では、「人間ドラマやキャラの内面を追いかけていくサスペンスものにしていけばいいんだな」と思っていましたが、そこに「アクションも」と求められると大変だなと(笑)。

きっとさとうだったらアクションをゴリゴリやってくれるんだろうなという印象があるからだと思いますが、あまりやりすぎてしまうと、違和感が出てきそうで。

過去に『TIGER & BUNNY』というアンチヒーローものを作った時はニチアサの戦隊ものをやってきたことで、それをひっくり返す発想で作ったんですね。それ以降、実写やアメコミの世界でもアンチものが増えた気がします。

そんなアンチものとしてのおもしろさとサスペンス感を立てようと思っています。アクションはカッコいいけど、こういう落とし方があるのかというものを求められているのだろうなとも思うので。

――先生や編集サイドは今回どのようにアニメに関わられているのでしょうか?

さとう:簡単に言うと上がってきたものを順番に見てもらっています。シナリオができた後にこういう順番で絵にしていきますよというストーリーボードを見てもらったり。毎週、原作サイドとの打ち合わせがあって、「こういうことをしてみたい」というやり取りは当然あり、最後に動いた絵を見てもらいます。

あと役者さんを選ぶオーディションをするタイミングがあって、先生も役者さんたちの声やお芝居を聞いていましたし、僕が考える主要キャラに対しての答え合わせができました。

例えばDは「常にやさぐれているわけでない」とか「こういう想いで挑んでいる」とか。また彼は13歳のキャラだけど、中間管理職よりも、もっと下の感じで「会社をもっとこうしたほうがいいのに」と思っている人のような感覚でやってもらえたらおもしろいかもと思っていましたが、役者さんに違う方向で作ってもらったものがマッチしたこともあったりして。

先生たちはたぶん「監督は音にした時にもっと立つようなお芝居に盛り付けなおそうとしているのか」とその場で確認できたと思うし、大幅なズレはないと思います。僕らは動くことや音が付くことで原作のおもしろさを倍加させて表現しようとしていますから、そこを楽しんでいただければいいなと思っています。

 

『TIGER & BUNNY』が生まれたきっかけとアンチヒーローものを作る難しさ

――アンチヒーローものについて、監督はどのように考えられていますか?

さとう:ヒーローものに対しての認識が広がったからできるものだと思っています。僕の世代は『ウルトラマン』や『仮面ライダー』が生まれてきたタイミングでしたが、その後たくさんの数の作品やキャラが登場してきて、アメリカも70~80年代にマーベルやDCからすごい数のヒーローものが生まれてきました。

ただ日本ではロンリーヒーローものが主流で、戦隊ものでは『秘密戦隊ゴレンジャー』があったくらいで。悪側がクローズアップされる作品も出てきましたが、当時は子供が見るものという見方があったため、善や道徳感のある方向に引っ張られていた気がします。

そして80年代の終わりから90年代になって大人が見るものとしてアンチヒーローものが見られるようになって。ヒーローものがある程度、出そろってきたところで「そろそろ違うものが見たいよね」という機運が出てきて。僕が『TIGER & BUNNY』を作ろうと思ったのも同じ理由でした。

その前に『鴉-KARAS-』を作ったのは、アメリカではニューヨークを守るスーパーマンやスパイダーマンがいるけど、日本には街を守るヒーローがいないと思ったのがきっかけですね。

 
『TIGER & BUNNY』は「大人がヒーローの力を持った時にどうするだろう?」というのが出発点で。ゲームの世界では『リーグ・オブ・レジェンド』や『オーバーウォッチ』など集団であるものをターゲットにして、向かい合っていくものが出てきた中で、『ザ・ボーイズ』や『ウォッチメン』のようにすべてが善ではないという認識も生まれてきて。

『ヒーローズ』というドラマ以降、抱えるものやネガティブなものという人間らしさも持ち込まれてきました。『戦隊大失格』を読んだ時、先生は『ザ・ボーイズ』や『イカゲーム』の感覚も取り入れて受けて、自分の世界にうまく組み入れていこうとしていらっしゃるんだなと思いました。

僕もこれまでやってきたものは道徳観があるものが多かったんです。ただ、今回は道徳観から出たアプローチもあります。皆さんに視聴していただくものなので、そこをうまく見せたい。

きっと先生もどこまでできるか考えながら描かれていると思いますが、シンプルにいえば、悪をどこまでカッコよく表現できるかだと思っています。

悪として筋を通している部分がブレると途端にカッコ悪くなると思いますから、そこを原作よりも立てていくつもりですし、「Dが道徳観を覚えていくのか?」や「ここで彼がいい人なのでは? と読み取れてしまうシーンがありますけど」など、よく先生サイドとも確認をとりながら作っています。

最後にどう回収するのかは意識していますし、シリーズ構成とも確認し合っています。

 

サブスク世代に「これは違う!?」と思わせたら勝ち!

――戦隊ものというと男性のファンが多いイメージがありますが、女性の方へオススメの楽しみ方や見どころを挙げるとすれば?

さとう:最下層の扱いである戦闘員の少年、Dの前に立ちふさがる正義観を持った連中に対して立ち向かっていくわけですが、人間に対する困惑さが愛らしく見える、かも(笑)。

特異なコスチュームを着ていますが、学園ヤンキーもののテイストもあるし、集団ヒーローものの作品も実写やアニメで増えてきて、アメコミ女子と呼ばれる方達等にも楽しんでいただけるのでは、と。

先生のきれいでかわいいタッチから萌えの要素も感じられるかもしれませんが、今、サブスクで流れているようなアンチ的な部類に入っていると思います。僕は外画テイストのドラマ展開を好んでやるので、そういう部分でも楽しんでいただけるかなと思います。

映像ではマンガのコマのイメージも出てきますが、ノリのテンポは僕が得意なコメディも含めて、外画っぽい雰囲気は出てくると思いますから、海外ドラマが好きな人にも見ていただきたいです。

僕が『TIGER & BUNNY』を作った時、ヒーローはどこから生まれて、どういう能力で……と一つひとつ作らなくてはいけなかったけど、今はぱっと見て、「この人がヒーローで、この人が敵だよね」と認識してもらえる世代で。

アニメも2Dだけではない、ピクサー作品があって、アニメコンテンツの選択肢も最初から広くて。だからこの作品で「他の戦隊ものと思って見たら違う!」と思ってもらえたらとりあえず勝ちかなと。

ニチアサの戦隊ものや特撮を見ているお子さんや親はドキっとするかもしれないけど、僕のやり方は毒の部分は残すけど映像のテンポや色も含めて、世代を超えて見たいものにしたいです。

――ということは、ターゲットは全世代ということでしょうか?

さとう:僕は、ですよ(笑)。できるだけニッチなものにさせたくないんです。サブスクでは『ヒーローズ』みたいな作品があって、世界中で視聴されていますし、この作品もスタートはTV放送ですが、目にした一発目で「これは違うかも!?」と思うテンポ感や演出で引っ張り込もうと思っています。

これは原作ものではありますが、オリジナルを作る時の怖さと一緒です。最初は原作の力を借りて、自分的アクションの部分を出せばいいかな! と思っていましたが、映像にする時にとても難しいことに気付いてしまって。

その難しさをおもしろがりながら作り始めてしまったので、現場のスタッフさんからは「スイッチが入っちゃったんですね」とか「絵コンテの段階では楽しいけど、描くとなったら大変ですよ」と言われたりして(笑)。

でもそれくらいの気持ちでやらないと伝わらないと思っています。1話と2話は僕の中ではパイロットフィルムです、「これがこのアニメのスタイルですよ」と理解してもらうためのもので、始まったばかりの『戦隊大失格』アニメ版としてのスタイル作りが今おもしろくなってしまったので、皆さんにも出来上がりを楽しみに待っていただきたいです。

――皆さんへメッセージをお願いします。

さとう:原作を読んでらっしゃる方はたぶんタイトルが気になって、読んでいくうちにストーリーやキャラにひかれていったと思います、戦闘員の視点から描くという発想におもしろさを感じた方も多いと思います。

アニメはまず先行して第一弾PVを公開しますが、一目見て気になるような映像を作っています。

また僕の作品を愛してくださっている方は『戦隊大失格』というマンガのアニメ化を手掛けるということで、原作を読んでくださって、どんなアプローチをするのか、想像する方もいるでしょう。

放送までまだ時間がありますので、まず原作を読んでもらって、「ココはどんな表現をするんだろう?」と想像や期待を膨らませていただければ。

 

TVアニメ『戦隊大失格』

 

スタッフ

原作:春場ねぎ「戦隊大失格」(講談社『週刊少年マガジン』連載)
監督:さとうけいいち

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