ふたりで『ルパン』の系譜を徹底研究。たどり着いた答えは“音楽”にあり? アニメ『LUPIN ZERO』ルパン役・畠中 祐さん×次元役・武内駿輔さんインタビュー
過去シリーズを研究! ルパン語録も作成!?
――演じるにあたって意識されたことはありますか?
畠中:僕はモノマネできるタイプではないので、声を似せることはできなくて。でも山田さんのインタビュー記事やご本人の映像などで、役者への姿勢に触れた時、逆に似せる方向でルパンを作らないほうがいいんじゃないかと。参考にするのは山田さんのルパンへの向き合い方や姿勢だけで、僕なりのアプローチでいこうと思いました。
あくまで僕の創造ですが、ひょうきんだけど人見知りで、チャーミングで冗談を言ったり、人を楽しませていて。厳しさもあるけど、優しさもある、そんな繊細な人間像が見えてきて、それがルパンにもある気がしたんです。ルパンという仮面をかぶっているけど、繊細さもあるし、今回描かれる少年期特有の混乱や悩みも抱えているのではないかと。
どう生きていいのかわからないけど、ルパンの皮をかぶろうとする彼がいて、それを人間臭く演じることができたら、『PART1』のルパンに繋げていけるんじゃないかと思って。今までのルパンのしゃべり方を僕がうまくできないことさえ、人間臭さに繋がればいいなと思って演じました。
武内:これまでのルパンと次元には、山田康雄さんと小林清志さんの人生観が反映されていると思ったので、僕も小林清志さんの経歴や人生の歩みを調べるところから始めました。小林清志さんは、もともと翻訳家をされていて、音楽にも精通されていることとか。でも次元を知るためにはルパンを知ることも必要だと思ったので、お二人の背中や残り香を何とかつかむ作業を必死にやりました。
あと次元を踏襲するにあたって、師匠を真似てみることから始めるように、僕もできる限り、再現してみようと。次元がセリフを発する時、独特のタイミングや間があって、それを間違えると次元ではなくなってしまうような。例えば「~なのか?」と疑問を口にする時、尻下がりで尋ねているのに尻上がりだったら違和感を感じますよね。だから過去のTVシリーズを見て、ポイントになりそうなところをメモしていました。
畠中:語録も作ったよね?
武内:山田康雄さんのアドリブ語録とか。次元が人を殺す時に「バラす」と言うとか、いろいろメモを取ったりして。当時と現代の脚本ではセリフ感は違うかなと思ったので、違和感が出ないように、どこまでできるかわからないけど、架け橋になれたらいいなと。一人でルパン劇みたいなものをやって、それをボイスメモに録ったりしていました。
畠中:僕の元へも送られてきました。結構似ていて、「なるほど、これはルパンだ」と(笑)。
武内:それをしていくことで、自分で台本を読んで考えやすかったです。祐からタイミングの相談を受けた時にも「ここは『あらららら』よりも『うわあ』のほうが言いそうじゃない?」とかアドバイスしたり、祐からも逆にアドバイスをもらったりして、お互いに共有していく感じでした。
畠中:圧倒的に僕がもらうほうが多かったです。武内くんは声優が本当に好きなんだなと、まざまざと見せつけられました。「すごいな。この子は」と。
『ルパン三世』は1曲の音楽。収録時にアドリブを入れられたのは山田康雄さんのおかげ?
武内:僕の中で『ルパン三世』は1曲の音楽みたいなものだと思っていて。セリフの1つひとつにもリズムや音階があって、ジャズみたいなものと感じたので、知り合いのジャズミュージシャンにジャズの勉強をしに行ったりしました。
さらに、『ルパン三世』はグルーヴ感が大事だし、歌が上手な人の方が向いているんじゃないかとも考えて。実際に山田康雄さんも小林清志さんもピアノを弾かれますから。収録でも即興でセリフを掛け合うような、あたかも祐とセッションしている、音楽的なフィーリング感を感じながらやっていました。
畠中:小林さんが「お芝居はジャズ音楽のように難しいことなんだよ」とおっしゃっている記事を見て「なるほどな」と。今はパーツごとに収録できるので、分散収録でもクオリティを落とさずに作れるし、とても整っているけど、昔の『ルパン三世』で果たして整っていたのかといえば、セリフがかぶっているところがあったり……。
武内:『PART1』なんてムチャクチャだからね(笑)。
畠中:でも心地いいんですよね。アナログだけど、そこでしかできないグルーヴ感は確かにあって。技術が発達してしまったことで失ってしまったものを、この現場では大事にしないといけないなと。だからどんなにハチャメチャになったとしてもグルーヴ感を大切にしようと武内くんと話しました。
武内:アドリブでも事前に考えてきたアドリブもあれば、その場で浮かんだものでやり合ったり。
畠中:最近、アドリブを入れる人が少なくなった気がします。今のデジタルでパーツごとに録る方法に変わったこともあって。
武内:今回、だいぶアドリブを入れたし、実際かなり採用してもらえました。なぜアドリブを入れられたかといえば、収録の時、かなり絵が出来上がっていた状態だったのも大きくて。山田康雄さんが「絵がないと芝居できないよ」と言ったという逸話を聞いたことがありますが、「教えをちゃんと守っているんだ」とビックリしました。
絵がないと口が開いているのか、閉じているのかもわからない、でも絵があると例え口が閉じていても「勢い的にイケるな」とわかるんですよね。ここでも山田さんに助けていただきました(笑)。
畠中:キャストもスタッフもお互いに甘えがないんだなと実感しました。