WOWOWオリジナルアニメ『火狩りの王』明楽役&EDテーマ担当 坂本真綾さんインタビュー|「未来に生きる子どもたちへ希望を与えられるような音楽を届けたい」【連載6回】
作品の世界観にマッチすることを第一に歌詞を書いた
ーー坂本さんは本作のEDテーマ「まだ遠くにいる」の歌唱と作詞を担当されています。西村(純二)監督は「これをアニメ化するのは大変だろう」、脚本の押井(守)さんは「(脚本を手掛けるにあたって)相当な難物」とおっしゃっていたのですが、坂本さんが作詞をするにあたって難しさは感じましたか?
坂本:作品自体が壮大なテーマなので、歌詞を書くのは難しかったです。でも、(西村監督も押井さんも)やっぱりそう感じていたんですね。私だけじゃなかったんだ(笑)。
明楽を演じると決まるより先に、『火狩りの王』のEDテーマのお話をいただいていました。その時に聞いた話によると、「押井さんが原作にすごく惚れ込んでアニメ化に力を入れている」ということだったので、作詞をするにあたっては原作を読みながら「押井さんはこの作品のどんなところが1番好きなんだろう」と考えていたんですね。終盤に物語の展開が難しくなってきた時も、「きっと押井さんは理解しているに違いない!」と思いながら読んでいました。だから、難しさを感じていたのが私だけではないと知ってホッとしました(笑)。
ーー原作を読み込んでいらっしゃったということもあり『火狩りの王』の物語が鮮明に思い浮かぶ歌詞だと感じます。
坂本:原作『火狩りの王』をじっくり読ませていただいて、作品の世界観にマッチすることを第一に歌詞を書きました。
また、未来に生きる子どもたちへ希望を与えられるような、支えになるような音楽を届けたいという思いも込めています。
ーー未来の子どもたち、ですか?
坂本:歌詞を書いていた時、世界がなんとなく悪い方向に向かっている気配を感じていたけど、何をしたらいいかは分からないというモヤモヤをずっと感じていて……。そして、歌詞を書き終わった後に世界情勢がとても大きく動いて、まだ遠くにいる(ある)と思っていた悪い気配が急激に近づいてきた怖さがありました。あっという間に望んでいない方向に引っ張られるんだって思いました。
私たちの世代は人生を折り返しているけれど、もっと若い世代が私たちの間違えた選択のつけを全部払わなければいけなくなってしまう。本来は未然に防がなければいけなかったのに。それについて今私たちは何をすべきか分からないなって。そこで過去の大変な時代に生まれてきた人たちはどうしていたんだろうと考えたら、結局はみんな必死に生きることを繰り返しているんですよね。生まれる時代は選べないから、その時代を懸命に生きるほかないんだろうなって。
私たち大人が未来の子どもたちにどんな未来を用意してあげられるか分からないし無責任かもしれないけど、「もし大変な時代になったとしても、灯子たちのように懸命に明るい方へ向かって走り出せるだろう」という、ある種の願いを込めています。