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『四畳半タイムマシンブルース』浅沼晋太郎&吉野裕行インタビュー

『四畳半タイムマシンブルース』は2022年の小さなお土産みたいな作品|「私」役・浅沼晋太郎さん&小津役・吉野裕行さんインタビュー

作家・森見登美彦氏による小説を原作として2010年に放送されたTVアニメ「四畳半神話大系」。本作と上田誠氏による『サマータイムマシン・ブルース』のコラボレーション作品が『四畳半タイムマシンブルース』です。

アニメイトタイムズでは、「私」役の声優・浅沼晋太郎さんと小津役の声優・吉野裕行さんへインタビューを実施! 物語の感想をはじめ、12年ぶりに「四畳半神話大系」のキャラクターを演じたことなど、様々な話題をお聞きしました。

『四畳半タイムマシンブルース』は、「四畳半神話大系」のキャラクターたちがクーラーのリモコンを巡って右往左往する様が描かれています。TVシリーズを知らずとも充分楽しめる作品に仕上がっていますので、当時からのファンの方はもちろん、興味はあったけれど「四畳半神話大系」を見たことが無いという方も注目してみてください!

※本取材は2022年8月に行ったものを掲載しています。

『サマータイムマシン・ブルース』と「四畳半神話大系」の親和性の高さには驚きがあった

ーー2010年放送のTVアニメ「四畳半神話大系」から12年が経過しました。改めて『四畳半タイムマシンブルース』のアニメ化が決まった時の心境をお教えいただければと思います。

私役・浅沼晋太郎さん(以下、浅沼):再び『四畳半』の世界で「私」を演じられることに、素直な喜びがありました。この作品は自分にとって、声優としてのターニングポイントになった作品でした。

オンエアされてしばらく経ってからになりますが、普段アニメをご覧にならないような方々から「凄いね」みたいな声をいただくことが度々あったんです。脚本を上田誠さんがやられていたからか、演劇界でもご覧くださった方が多かったようで。僕が一方的に名前を存じ上げていた先輩役者さんまで見てくださっていたことを知って、とても嬉しかったことを覚えています。

だからこそ僕も作品への思い入れが強くなっていて、あれだけのセリフ、ナレーション量を12年経った現在もできるだろうかとプレッシャーもありました。

小津役・吉野裕行さん(以下、吉野):今回の小津のポジションはTVシリーズとはまた異なったものに感じたので、これまでとは少し違う彼の魅力を楽しんで貰えると思います。演じる上で気を使う部分が変わっていたので、単純にまた携われる喜びが強かったです。

ーー12年前に演じたキャラクターを再び演じてみていかがでしたか。

浅沼:自分にとって特別な作品、特別なキャラクターだったので、最初は「12年前より劣っていてはいけない」という思いから、かなりガチガチに凝り固まった状態で収録に臨んでしまったんです。

実際、気負い過ぎたのか、監督の意図するスピードよりも早くナレーションを読んでしまい、ちょっと早すぎると言われました。僕としては、それでは『四畳半』ファンのみなさんにがっかりされるのではと不安を覚えたのですが、「内容に有益な情報がそれほどないから、BGMのようで構わない」というディレクションのあったTVシリーズのナレーションに比べて、今回は状況説明やSFの解説も担っているので、当時よりも若干ゆっくりしたナレーションなんです。それを聞いて、すっかり納得して収録することができました。

それと、僕としては「良い意味で成長しないこと」が「私」の美点だと思っていたのですが、夏目監督とのディスカッションを経て、今回の「私」は少しだけ成長していることを理解し、既に収録していた部分も改めて収録し直したりしました。自分で思い込んでしまっていた「私」のキャラクター象を一旦捨てて、新しい『四畳半』として今回の作品を受け入れられたと思っています。

吉野:あの頃演じたものに見劣りしないように、そうありたいと思うことは理解できます。役者としてそういう欲は出ます。けれど、自分たちも12年分歳を重ねているので、できることとできないことがでてきてしまう。当時とは感性も変わっていますし。

TVシリーズは、レギュラーでやってるからこそグルーブ感のあるお芝居が出てくる。今回の作品は映画で、これ1本だけで決まる。もちろん僕もあの頃の小津であって欲しいと思いますが、TVシリーズの頃の悪辣ぶりはない。だから今作にあわせたアプローチで演じさせていただきました。

ーーおふたりは「四畳半神話大系」以外にも森見先生の作品に触れられているのでしょうか?

浅沼:TVシリーズの収録が終わってから、『ペンギン・ハイウェイ』や『夜は短し歩けよ乙女』などを読ませていただきました。『四畳半』の原作は、TVシリーズのオーディションの時にチェックしました。森見先生とはゆっくりお話させていただいたことはまだないのですが、人の滑稽さから感じる愛らしさを好まれている方なんだろうなぁという印象です。

吉野:僕は基本的に本は読まないんです。TVシリーズの時に原作にチャレンジしたのですが、お恥ずかしながら結局途中までで読み切れませんでした。けれど今回は例外的に読みました。キャラクターたちのいい塩梅に遠回りをしたような言い方が絶妙で凄く好きでした。

純文学とかをわかっていない自分が言うのも変ですけれど、やっぱり言葉を巧みに使っている。本が苦手な自分みたいな人間が読んでも、表現の仕方が面白いと思えるんです。森見先生の、文章のみで全てを表現する原作のみが持つ気持ちいいリズム。これは魅力的でした。

僕は作品作りにおいて原作は原作、アニメはアニメで別だと考えています。だから原作を読んだという事実はありますし、大事にしますけれど、そこのバランスの取り方が難しいんです。だから、個人的にはあまり知らなくていいと思っています。

浅沼:もったいぶった言い回し、みたいな感じがありますよね。

吉野:些末な問題を大きく大きく扱う、これが全てだよなと。

ーー今回の物語について。まずどんな感想を抱きましたか?

浅沼:元々上田誠さんの『サマータイムマシン・ブルース』の実写映画を見ていたんです。その作品と『四畳半』がこんなにも親和性が高く、違和感なく混ざることに感動を覚えました。

から揚げにマヨネーズをかけた時の感覚に近いと言うか…考えてみれば当たり前にマッチするんだけれど、やってみるまで気づかない、みたいな。そういう感動がありました。だから『四畳半』を見たことがない人でも、ここから違和感なく入っていけると思います。

吉野:いくつもの時間軸を行ったり来たりする作品ですよね。もちろん僕も見させていただきましたが、アフレコは台本に書いてあることが全てなので、そこに忠実にお芝居するだけでした。なので、今はスクリーンで見たい、時間が経ってからファンのみなさんと一緒に見たいという想いが強いです。

作中の小津については、物語の本筋の部分にあまり関係がない。あっちに行ったりこっちに行ったりはしますが、そこを考えるのは浅沼さん演じる「私」なので……

浅沼:いやいやいや(笑)。

一同:(笑)。

吉野:今回の『四畳半タイムマシンブルース』は「四畳半神話大系」のキャラクターを使って違う作品を作っている感覚なんです。だから書いてある役割を演じるだけだったので、あまり小津が悪いことをしている感覚はありませんでした。

浅沼:親しみやすくなっていましたよね。

吉野:キャラクター同士の関係性が出来上がっていて、視聴者側もそこを把握している。その前提があるから、彼らがお芝居している感覚なんです。

ーー本作における「私」と小津の関係性について。TVシリーズと変わった部分や見どころになりそうなところを教えていただけますか。

浅沼:吉野さんもおっしゃっていたように、小津は変わったと思いますね。TVシリーズの時は、話数毎に出会い方や立場、肩書が違っていて、それが神出鬼没のモンスターかのような印象を与えていました。けれど今回は親しみやすくなっていて、「誰しも学生時代に周りに居たであろう悪友」みたいな立ち位置で最後まで一貫しています。TVシリーズのファンの方は、この小津を見ると少し大人しいと感じるかもしれません。

だからこそ、とても人間味を感じるんですよね。この作品から「私」や小津、明石さんを知る人にとっては、とてもチャーミングに、とても身近に映るんじゃないかな。

吉野:小津はそんなに迷惑かけてるかな?って僕は思いますね。そこまでではないというか、度々やらかしはしますけれど、樋口師匠だって結構迷惑なタイプじゃないですか?

一同:(笑)。

浅沼:嫌な奴という括りなら相島先輩が群を抜いていますから、今回の小津はプチトラブルメーカーって感じでした!

吉野:今回はひと夏の思い出をみんなで共有できるような物語だと思っていて、だからそんなに悪い間柄でもないんだなと思ったんです。小津はちょっと面倒臭いやつだなとは思いますけれども。僕からするとちょっとした遊び心で「(※リモコンを)持ってきちゃったんですよ」くらいのレベルなんです。いい塩梅だったと思います。

浅沼:より大学生感が強くなりましたよね。TVシリーズの頃は場合によってはスケールが大きくなって、気球が出てきたり宗教が出てきたり、これ、大学生の物語だったよな? と思わされることもよくあったので(笑)。

吉野:そんなに登場人物が必要ではなかったしね。かと思えばあの老婆。あの老婆ってTVシリーズでも下鴨幽水荘の大家だったっけ? 占い師だったよね?

浅沼:違う役として出演してるんですよね。だから、確かにあのキャラクターたちが『サマータイムマシン・ブルース』を演じている、というのには納得できます。

ーー今回の作品に登場するキャラクターについては、本多力さんが演じる田村くんも気になるところかと思います。

浅沼:先ほど言ったように『サマータイムマシンブルース』を見ていたので、「この役そのままやるんだ!」って思いましたね。

吉野:やっぱり作品を知ってるとそう思うんだろうな。そのままだとか、自分はこの役を演じているんだとか。あとは小津みたいな迷惑な奴はいるのか、とか。

浅沼:小津はムロツヨシさん演じる石松大悟と、何人かの要素が混ざってる感じです。

吉野:これはこれで物語として心地よくコンパクトに収まってますよね。みんな仲が良い感じですし。仲の悪い奴らがこんなに男女関係なく密集しないですよ。

浅沼:TVシリーズだと話数毎にキャラクターたちの関係性が変化するじゃないですか。ある話では親密だったのに、別の話では急に他人みたいになったりする。今回はみんなの関係性が変わることなくずっと一緒なので、そこが嬉しかったですね。

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