解き明かされる謎と感動の結末が魅力『かがみの孤城』。原作ファンのライターが知っておくと映画がもっと楽しくなる注目ポイントをご紹介!【ネタバレギリギリ!】
2018年本屋大賞を受賞し、大きな話題となった辻村深月先生の小説『かがみの孤城』がいよいよアニメ映画となって公開されました。読者に多くの感動を与えた物語の映像化は、注目作として様々なメディアで取り上げられ話題となっています。公開から数週間経ちましたが、もうご覧になられた方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。
細やかな心理描写が魅力で、学生を主人公とする青春ミステリーに定評がある辻村先生の作品。中でも『かがみの孤城』では様々な家庭環境やスクールカーストの中で生きる中学生たちの孤独や苦しさが描かれています。巧みに表現される子どもたちの痛みは、観ているこちらも胸が苦しくなるほど。
一方で、物語が進むにつれて謎が解明されていくのも本作の見どころで、序盤から各所に散りばめられた伏線がクライマックスで綺麗に回収されていきます。巧妙に張られた伏線は、初見で全て見つけることは恐らく不可能でしょう。
そこで本稿では、ネタバレギリギリのラインで注目ポイントをご紹介します。ギリギリのラインを攻めていますので、ネタバレを避けたい方はご注意ください!
※本記事には多少のネタバレが含まれます
イントロダクション
学校での居場所をなくし部屋に閉じこもっていた中学生・こころ。
ある日突然部屋の鏡が光り出し、吸い込まれるように中に入ると、そこにはおとぎ話に出てくるようなお城と見ず知らずの中学生6人が。
さらに「オオカミさま」と呼ばれる狼のお面をかぶった女の子が現れ、「城に隠された鍵を見つければ、どんな願いでも叶えてやろう」と告げる。期限は約1年間。
戸惑いつつも鍵を探しながら共に過ごすうち、7人には一つの共通点があることがわかる。互いの抱える事情が少しずつ明らかになり、次第に心を通わせていくこころたち。
そしてお城が7人にとって特別な居場所に変わり始めた頃、ある出来事が彼らを襲う。
果たして鍵は見つかるのか? なぜこの7人が集められたのか?それぞれが胸に秘めた〈人に言えない願い〉とは?(映画公式サイトより引用)
注目ポイントその1:城のルール
まず押さえておかなければならないのは、城のルール。城は毎日日本時間の朝9時から夕方5時まで開かれ、その間はそれぞれの鏡で自由に出入りすることができます。
5時までに城を出ることは許されていないルールで、破った場合は“狼に食われる”というペナルティが課せられ、破った本人だけでなく、その日城に来ていた全員がペナルティの対象に。
……察しの良い方はもうお分かりだと思いますが、物語のルールは破るために用意されたようなもの。7人のうち1人がルールを“意図的に”破ってしまいます。誰がルールを破ってしまうのか、それはなぜなのか、予想しながら観てみてください。
そして、自分が食べられてしまうような“狼に食われる”演出をぜひ映画館で体感していただきたいです。
注目ポイントその2:7人の共通点
7人の中学生たちの共通点──それは、城のルールでもある“日本時間の朝9時から夕方5時の間に城に来ることができる”ということ。
多くの中学生が学校に行っているであろう時間帯に城に行ける。彼らはそれが何を意味しているかをわかっていながら、あえてそのことには触れずに過ごしますが、耐えきれなくなった1人がついにその事に言及します。
「みんな、学校行けてないんだよね」
学校に行けてないことに引け目を感じていた彼ら。それに触れないことで平穏に過ごしていた城の日常に確かな亀裂が走ります。それは、秘匿したかった不登校という事実が明るみになっただけでなく、1人だけちゃんと学校に行っていたから。
しかし、開城時間に城に来ることができるのは7人に共通しています。これはどういうことなのか。ぜひ謎を探りながら見てみてください。
注目ポイントその3:フリースクールの喜多嶋先生
主人公のこころは母親に勧められて見学に行ったフリースクールで、喜多嶋という女性の先生と出会います。常にこころを気にかけ、優しく寄り添ってくれる喜多嶋先生に少しずつ心を許していくこころ。
登場する大人の中でも常にこころの味方である彼女。キャラクターボイスを女優の宮崎あおいさんが担当していることからも、ただの先生ではないことを予想している方も多いかと思います。
また、フリースクールのことは城の中でも話題に上り、こころと同じように1人良い先生がいると話す子がちらほら。こころと同じように、彼らもまたその良い先生が心の拠り所になっている様子を見せます。
実は喜多嶋先生の正体が物語の謎を解く大きな鍵。ストーリーの中盤でもその正体に迫る伏線が登場します。あなたにはその正体が見抜けるでしょうか?
注目ポイントその4:オオカミさまと7人の“赤ずきんちゃん”?
作中で最もミステリアスなキャラクター・オオカミさま。彼女は7人の中学生たちのことを時折「赤ずきんちゃん」と呼びます。狼に赤ずきんちゃん、そして狼に食われるという城のルール……まるでグリム童話「赤ずきん」を彷彿とさせる内容で、作中にも童話に関連する話がたびたび登場します。
実は最初から鍵探しのヒントを出し続けているオオカミさまによると、中学生たちは“迷える赤ずきんちゃん”なんだとか。……ここで違和感を覚えた方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。
“迷える”の後に続く代表的な言葉って“赤ずきんちゃん”でしたっけ?
また、グリム童話で主人公の敵役として登場し彼らを食べてしまうお話は「赤ずきん」以外にもうひとつ存在しますが、皆さんはご存知でしょうか。
この他にも、オオカミさまの口からは物語序盤から鍵探しのヒントが出てきます。謎解きも本作の大きな魅力である本作。こころたちといっしょに願いの鍵を探してみてください。
注目ポイントその5:天才ゲームディレクター ナガヒサ・ロクレン
城に呼ばれた中学生のひとり・マサムネはいつもゲーム機をいじっているゲーム好きなキャラクター。ナガヒサ・ロクレンは、マサムネが好きな流行りのゲーム『ゲートワールド』のディレクターとしてその名が登場します。
彼の口ぶりからゲームのみならず、生みの親であるナガヒサ・ロクレンもかなり有名なよう。しかし、他のメンバーはゲームタイトルにもナガヒサ・ロクレンにもピンと来ていない様子。唯一知っているという子が「ゲームにもなった映画だよね?」と話すものの、「なってねえよ」といまいち話が噛み合いません。
物語の中でサラッと登場するナガヒサ・ロクレンの名ですが、個人的にはこの伏線回収が一番嬉しく、心にグッとくるものがありました。ナガヒサ・ロクレンの名前に注目してみてください。
余談ですが、マサムネの声を担当しているのはベテラン声優・高山みなみさんです。高山みなみさんといえば、身体は子ども、頭脳は大人の名探偵の役でよく知られていますよね。作中ではそれを匂わせるシーンが登場するとかしないとか……こちらもぜひ探してみてください。