冬アニメ『REVENGER』監督・藤森雅也さん×脚本・虚淵玄さんが語るヒリヒリするような時代劇、制作の裏側/インタビュー|「時代劇はミスマッチとの勝負」海外の人も楽しんでもらえる活劇に——
“痛み”というこだわり
——ここからは『REVENGER』のストーリー性についてお伺いいたします。第1話は雷蔵が婚約者の父を誤って殺してしまい、婚約者も失ってしまうという衝撃的な展開から始まりました。この展開は脚本を考える時点からすでに決まっていたのでしょうか。
虚淵:そうですね。構成そのものはほぼブレていません。やっぱりアウトローな話にしようと言いつつも時代劇なので侍は出したいですし、侍は法律を守る側のポジションです。現代でいうとお巡りさんが人殺しになっちゃう話なので、それは重くしなきゃいけないなと。
やっぱり侍という生き方そのものが今となっては文献でしか残っていない觀念なわけであって、ああいう掟を重ねた生き様というのがどれだけのものだったのか、ちゃんと描き出したかったという気持ちがありました。
——揺れ動く主人公の生き様に《利便事屋》のメンバーが影響されていくところも印象的です。
虚淵:キャラクターに関しては、最初にほぼメインキャラの5人が出揃った感じで覚書を出して作っていきました。惣二が割と書いている途中で愛されキャラに舵を切ったところはありますが、他の4人はほとんどブレずに最後まで駆け抜けた感じです。
藤森:覚書を見たとき、鳰の読み方がわからなかったのを覚えています(笑)。最初に虚淵さんが提示してくれたキャラクターのプロフィールが結構ガッチリしたもので、名前も全部決まっていました。虚淵さんがおっしゃったように、どんどん変わっていったのは惣二だけです。
虚淵:実は、脚本を書いてもらった大樹連司さんのアレンジなんです。その人情味あふれる部分は、僕にはなかったところだと思います。
視聴者にホッとひと息つかせる部分というか、そういう人としての温かみをどんどん取り入れてくださいました。最初の設定だと惣二は相当な露悪的というか、かなりアウトレイジな5人組だったのでホッとする要素がなかったんです。
ちょっと話が通じる存在がいると、視聴者的にも見ていて感情移入しやすい。そういうベクトルに修正してもらえて、結果的にはすごく良かったと思います。
——当初の設定だと、惣二はかなり尖った人物だったのですね。
虚淵:そうですね。他の面々が裏仕事に対して屈折した思いを抱いている中で、1番即物的なリアリストというか、悪党であることに対して何の躊躇もないというタイプのポジションでした。
周りがふわふわやっている中でそうじゃない、もっと厳しくならないと生き残れないと説教したり悪態をついたりするようなキャラクターだったんですけど、そこまで救いのない話にしなくてもちゃんと回っていくんだなと。そこまでみんなで人間を辞めなくても良かったんだと気づかされました(笑)。
一同:(笑)。
虚淵:作品性とのすり合わせとして、惣二が態度を軟化させてくれたのは良かったと思います。
——そのキャラクターを映像として表現する際、監督自身気をつけたところがあれば教えてください。
藤森:脚本が非常に細かく練られていましたので、それをどう映像化していくか、何が1番効果的なのかを考えました。やっぱり日常の時代劇感とリベンジをするときのぶっ飛び具合、その差をがっつりと画で出さないといけません。
カットの長さに関しても日常シーンで長めに取り、クライマックスになってくると短いカットを積んでいくという、ある意味、荒唐無稽なものをごまかしている感じです。
いかに気持ちよく、かつ痛みも感じるようなものをしっかりと作っていく。全体的なバランスを見ながら、そういうところに気をつかいながら制作しています。
——確かに、“痛み”はすごく伝わってきます……。
藤森:そこはこだわりがある部分でして、主人公サイドがやっていることでも人を殺すというのは重いことなんだよと客観的に見せていきたいなと。綺麗事で済ませないところは、自分のこだわりとして譲れない部分です。