冬アニメ『REVENGER』監督・藤森雅也さん×脚本・虚淵玄さんが語るヒリヒリするような時代劇、制作の裏側/インタビュー|「時代劇はミスマッチとの勝負」海外の人も楽しんでもらえる活劇に——
時代劇はミスマッチとの勝負
——現在、第7話まで放送されていますが、これまでの話の中で好きなシーンや印象に残っている話はありますか?
藤森:僕はやっぱり第1話の幽烟と雷蔵の出会いのシーンが大好きです。自分で言うのもアレですが、幽烟の距離の詰め方がとても絶妙にできたなと(笑)。
(うなずく虚淵さん)
藤森:あの心を閉ざした野良犬の内側にスーッと入ってくる感じが良いですよね。作画さんがちゃんと描こうという意思を持って作ってくれたシーンでもあるので大好きです。
虚淵:あのシーンは美術設定をもらったときに、やった!と思いました。それまでは、なんとなく江戸のイメージが抜けきれなかったところがあったんです。江戸で川に橋がかかっている地形だと、ものすごく寂れた景色になっちゃって……。
それが長崎の狭くて坂道がたくさんある地形、街の中に川も流れている、高台があり橋がかかっているという景色で、時代劇なんだけどヨーロッパ風の高低差を感じられて、このロケーションは勝ったな!この設定であのシーンをやってくれればこれはいける!と手応えを感じました。
——長崎という舞台設定が大いに働いたのですね。
虚淵:はい。結果的にうまくいったと、美術設定をもらうたびに思います。今までの先入観のある時代劇の中では出てこなかった異国情緒が感じられるのは本作ならではです。
——虚淵さん自身は第7話までで特に印象に残っているエピソードはありますか?
虚淵:第5話に出てくる堂庵のキャラクターをどっちに振るかで迷ったところでしょうか。
——どっちに振るとは?
虚淵:醜悪にするか耽美にするかです。あの辺の落としどころというか、鳰のエピソードとして綺麗にハマって良かったなと思います。
藤森:堂庵については鳰との組み合わせということもあって、自分がちょっと醜悪な感じにしたいなと思っていたんです。
——なるほど。
藤森:あと、第5話に関しては、鳰が堂庵を殺すシーンもなかなか気に入っています。実は、堂庵の声優の方に「ロミオとジュリエットを演じているつもりで」というお願いをしてやってもらいました。自分のコレクションがいっぱい見ている中で、自分がそのコレクションのひとつになるという、ある意味“美しさ”を感じる良いシーンだと思います。
——ロミオとジュリエットですか……すごく面白いディレクションですね。
藤森:醜男だって純愛はするんだよ!と(笑)。
虚淵:ただその純愛はどうなんだ!?と、鳰だって人のことを言えたもんじゃないですよね(笑)。
一同:(笑)。
虚淵:堂庵を醜いキャラにしたからこそ、鳰の中にある秀美の基準というものが人と全然違うんだとわかるシーンになっていると思います。それを引いても、鳰の中にある倫理観もズレているという裏返しにもなっているので、そういう意味でも堂庵を耽美キャラにしなくて良かったなと思います。
——確かに。鳰がどういう基準で人や物事を見ているのかがわかるシーンです。
虚淵:あと1番びっくりしたことと言えば、オープニングです。時代劇にこの曲を合わせるのか!と個人的にすごく楽しみでした。オープニング曲はムーブメントとしては相当新しめの曲なので、時代劇とどういう化学反応を起こすのか気になりますよね。
藤森:絵コンテを書かせていただきましたけど、良い感じに仕上がって良かったです。
——時代劇の作品に、ボーカロイドシーンを牽引してきた“かいりきベア”さんと匿名ボーカリストO2(オーツー)さんによる「レトベア」の楽曲という組み合わせが斬新的ですよね。
虚淵:やっぱり時代劇って、どの時代でもミスマッチとの勝負だと思うんです。その時々で流行ったものをどう取り入れていくかが大事なんじゃないかと。
新しいものを組み合わせて古い時代劇の作法みたいなものをどんどんヴァージョンアップしていくことは、ひとつのキーになっているんじゃないかなと思います。
今のいわゆる歌い手さん文化から出てきた新しい音楽が、時代劇に入ってくるのはとても面白いです。僕も藤森さんと同じで聞き慣れているわけではありませんが、だからこそ期待感、ワクワク感があります。
——最後になりますが、今後どのような展開を見せていくのか、見どころを教えてください。
虚淵:話が長崎の外にもどんどん広がってくるので、いよいよスケールも広まり『REVENGER』という世界の正体が明かされていきます。その辺も含めて最後まで見ていただければと思います。
藤森:劉というキャラクターが第6話から出てきていますが、雷蔵との戦いが今後描かれていきます。劉の正体についても濃密な人間関係が描かれているので、ぜひ楽しみにしていてください。
[取材/福室美綺]
作品情報
2023年1月5日(木)〜
TOKYO MXほかにて放送
INTRODUCTION
信じていたものに裏切られ、帰る場所をなくした男、雷蔵。
そんな彼が拾われたのは、力なき人たちの復讐を代行する殺し屋「REVENGER」(リベンジャー)だった——。
普段は、町の何でも屋の「利便事屋」(りべんじや)を営む男たちが持つ、表の顔と裏の顔。
優しく温和な態度とは裏腹に、破壊衝動を隠し持った町医者。
天使のように愛らしい無邪気さと倫理観の無い残酷さを併せ持つ、両性具有の美少年。
金と酒に目がなく、他人に厳しく口の悪い博打打ち。
そんな個性的な面々を率いる、優美な容姿にクールな頭脳を持つ蒔絵師。
不器用で、まっすぐで、欠落を抱えた男たち。
共に過ごしていくうちに、雷蔵と彼らの間に奇妙な友情が芽生えていく。
人を斬る。残酷な運命に抗うために。
5人の殺し屋たちのダークヒーローアクション!
STORY
むかしむかし、私たちとは異なる歴史を辿った長崎で……。
信じていたものに裏切られ、卑劣な罠にかかり、許婚の父を手にかけてしまった雷蔵。
許されない罪を背負い、自らも絶体絶命の危機に陥ったところを、町の何でも屋「利便事屋」に救われる。
実は、彼らの正体は力なき人たちの復讐を代行する殺し屋、「REVENGER」だった。
秘めたる信仰に生きる、優雅な蒔絵師・幽烟。
町の人たちに慕われる、元海賊の町医者・徹破。
無邪気さと残酷さを併せ持つ、両性具有の少年・鳰。
酒と博打を愛する、その日暮らしの博打打ち・惣二。
半ば拾われる形で、雷蔵は一癖も二癖もある殺し屋たちの仲間になることに。
生まれも育ちも主義も主張もバラバラな5人の間に、命がけの仕事を通じて奇妙な友情が生まれていく。
やがて、長崎で起きた事件の真相を追う中で、彼らは大きな陰謀に巻き込まれていく——。
STAFF
企画:松竹・亜細亜堂・ニトロプラス
監督:藤森雅也
ストーリー原案・シリーズ構成:虚淵玄(ニトロプラス)
脚本:虚淵玄(ニトロプラス)、大樹連司(ニトロプラス)
キャラクターデザイン原案:鈴木次郎、憂雨市
キャラクターデザイン・総作画監督:細越裕治
サブキャラクターデザイン:立花希望
総作画監督:西岡夕樹、遠藤江美子
助監督:松尾晋平
プロップデザイン:ヒラタリョウ、石森 連
アクション作画監督:宮本雄岐、堀内博之
美術監督:岡本穂高
美術設定:須江信人、多田周平、斉 婉廷、滝沢麻菜美
場面設計・美術設定:関根昌之
色彩設計:中野尚美
撮影監督:佐藤哲平
編集:松原理恵
音楽:Jun Futamata
オープニングテーマ レトベア(unknown Vo:O2) 「ダウンタイマー」
エンディングテーマ 坂本真綾 「un_mute」
音楽制作 フライングドッグ
音響監督:藤田亜紀子
音響効果:中野勝博
アニメーション制作:亜細亜堂
原作:利便事屋
製作:REVENGER製作委員会
CAST
繰馬雷蔵(くりま らいぞう):笠間淳
碓水幽烟(うすい ゆうえん):梅原裕一郎
叢上徹破(むらかみ てっぱ):武内駿輔
鳰(にお):金元寿子
惣二(そうじ):葉山翔太
ジェラルド嘉納(じぇらるど かのう):大塚明夫
漁澤陣九郎(いさりざわ じんくろう):子安武人