くもり空の向こう側から見えた景色 斉藤朱夏ロングインタビュー「私ではなく、キミのおかげ。キミが階段を一段登らせてくれた」【特集企画Part2】
今年の斉藤朱夏は怒涛であった。4月には朱演2022 LIVE HOUSE TOUR 『はじまりのサイン』を。8月には3rdシングル「イッパイアッテナ」をリリース後、全国11ヶ所を巡った朱演2022 LIVE HOUSE TOUR『キミとはだしの青春』を開催。そして12月3日(土)には朱演2022『くもり空の向こう側』(日本青年館ホール)で2022年最後となるライブを迎えた。
今回、斉藤朱夏さんに2022年の振り返り、さらには2023年の幕開けとなる4th Single『僕らはジーニアス』について超ロングインタビューを実施。アーティスト、そして人間・斉藤朱夏の魅力を深堀りした模様を全4回に分けてお届けする。
Part1では、『くもり空の向こう側』で「ピエロ」をカバーしたことで、チーム感を実感したと教えてくれたが、その理由とはなんだったのか。そしてなぜ「ピエロ」をカバーすることになったのか。
Part2では改めて、『くもり空の向こう側』から見えた景色を探っていく。
「ハヤシケイのことを尊敬しているんです」
──『くもり空の向こう側』でハヤシケイ(LIVE LAB.)さんがKEI名義でリリースされた「ピエロ」をカバー。「ピエロ」でチーム感が見えたとのことでしたが、実際に歌われてみていかがでしたか?
斉藤朱夏さん(以下、斉藤):緊張しました!(笑)
──そうですよね(笑)。
斉藤:「よく笑う理由」から「ピエロ」につなげたくて。
1部が終わったときにみんなで「ピエロ良かったね!」「うちら、めっちゃバンドじゃん!」って話していて。シーケンスとかも走らせていないので、本当に生の音だけで。とにかくみんなの音を聴いて歌えたので、また新しいひとつのチームが生まれた瞬間だったように思います。
──「ピエロ」はツアー中にずっと聴かれていたとおっしゃっていて。
斉藤:ケイさんが作った楽曲は基本的には聴こうと思っていて。だから他のアーティストさんに提供された曲も聴いているんです。なんだろうなぁ……。私きっと、ケイさんのことがシンプルに好きなんですよ。
──(笑)。それだけリスペクトされているというか。
斉藤:そうなんですよ。すごくリスペクトしているし、なによりも音楽で寄り添ってくれる。本当に尊敬しています。本人にはそんなこと言えませんけど。
──言ってないんですか? それこそ朱夏さん、距離が近い人なのになんだか意外です。
斉藤:「この歌詞いいね」みたいな話はしています。でも「尊敬している」とは一度も本人に言ったことはありません(笑)。
──尊敬されていることはきっと言葉にせずとも伝わっているとは思うんですが、このインタビューを読んでぜひ驚いてほしいです(笑)。
斉藤:お互いあまり言葉にしないんです。特にケイさんは言葉にせず、SNSで褒めてくれます(笑)。
𝑩𝑰𝑮𝑳𝑶𝑽𝑬─── https://t.co/LgIiep9BK5
— ハヤシケイ/KEI (@homing_echo) September 7, 2022
──ハヤシケイ(LIVE LAB.)さんのことは朱夏さんやReoNaさんからお話は伺っていますが、私はまだお会いしたことがなくて。どんな方なんでしょう?
斉藤:変わり者ですよ(笑)。でもすごく大きな愛でいつも見守ってくれていて、私の事をすごくよく理解していて、楽曲でそっと寄り添ってくれる優しい人です。
カバーした「ピエロ」に対しても「どうでした?」って聞いたら「ちゃんと歌ってましたね」「恥ずかしかったです」って(笑)。でもそれを言葉にしていたときのケイさんの空気感が柔らかくて、楽しそうで。言葉以上に「きっと嬉しかったんだろうな」って。
私とケイさんって真逆のタイプなんですよね。真逆のふたりが音楽を作っているのがおもしろいね、っていう話をよくしています。
「ピエロ」の<大丈夫>が背中を押してくれた
──ハヤシさんの曲をたくさん聴いてきた朱夏さんにとって「ピエロ」はなぜ刺さったんだと思います?
斉藤:「ピエロ」は『キミとはだしの青春』の最中にずっと聴いていて。あのツアーって、「楽しい」もあったけど、自分と向き合う瞬間が多すぎて、やっぱり苦しい時間もあったんですよ。
──うんうん。自分と向き合うって、ネガティブなところにも向き合わなきゃいけないわけですし、そもそもライブ本数も多くて自分との戦いもあったでしょうし。
斉藤:毎公演全然違うし、毎公演緊張するし。ライブってすごい大変だと改めて感じました。そのときに支えてくれたのが「ピエロ」。サビの<大丈夫 大丈夫>という言葉が私の背中を押してくれました。
──その言葉に救われたからこそ、「くもり空」の向こう側にいけたと言っても過言ではない?
斉藤:それはありますね。自分自身、青空の下の道を走っている印象があまりなくて。基本的に曇っているんですよね。
──パブリックイメージとしては、夏の青空の下にいるイメージですけど、それだけではないことは、これまでの歌で伝えていましたものね。
斉藤:明るいイメージが強いんですけど、実際は全然違うんです。くもり空の下で、その先の一本の光に向かってずっと走っているという印象です。だからこそ<大丈夫>という言葉を聴いて、大丈夫なら、まだまだ走っていかなきゃなって。だからすごく救われましたね。
──「シャボン」「ワンピース」「セカイノハテ」にも、<大丈夫>という言葉がありますけど、それとは感覚的に違う大丈夫なんですかね?
斉藤:全然違います。「ピエロ」に関しては自分自身に言い聞かせている、というより、目の前のキミに向かって語りかけて歌っているような印象がありました。客席で泣いているキミを見たときに「大丈夫だから泣かないで」って気持ちでした。
だからツアーで聴いていた時の「ピエロ」と、カバーで歌ったときの「ピエロ」は、また感覚が違って。ツアーから『くもり空』の間って、改めて考えてもどこか不思議な空気感だったんですよねぇ……。