井内さんは世界で一番早見さんの演技を聞いた!? 『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 深章 厄災篇』リュー・リオン役 早見沙織さん・シリーズ音楽 井内啓二さん対談インタビュー
2015年に放送された『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』から8年。ついに映像で紐解かれていくリュー・リオンの過去。
シリーズ累計発行部数1200万部を突破する人気小説『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(原作:大森藤ノ イラスト:ヤスダスズヒト GA文庫/SBクリエイティブ刊/通称ダンまち)を原作とした本作。
絶望とも呼べる展開が続き、先の気になる物語が展開されているテレビアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 深章 厄災篇』が2023年1月より放送・配信中です。
これまで主人公、ベル・クラネルにとって頼りになる冒険者として描かれてきたリュー・リオンの過去が描かれていますが、シリーズを彩る音楽にも「厄災篇」ならではの変化が起こっていることに気づいている方も多いと思います。
そこで、今回は酒場「豊穣の女主人」で働くエルフの少女で、元冒険者であるリュー・リオンを演じる早見沙織さんと、シリーズの音楽を担当されている井内啓二さんにお話を伺いました。役者と劇伴作家。異なる立場から『ダンまち』シリーズを支えるお二人ならではのエピソードも!
お二人が「厄災篇」において意識したことは?
──『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 深章 厄災篇』が放送中ですが、シリーズの中でもかなり絶望とも言えるようなシリアスなシーンが続いています。お二人ともそれぞれどのような思いで本作に臨まれたのでしょうか?
リュー・リオン役 早見沙織さん(以下、早見):『ダンまち』にはリューさん(リュー・リオン)役としてはじめのうちから関わらせていただいて。
スタッフさんやチームの皆さんと、“続編はリューさんがすごく過酷な物語の主軸になっていく。カギを握る存在の人になっていく”というお話を、『ダンまちⅣ』が始まる以前から皆さんとさせていただいていました。
なので、その段階から私自身も緊張感だったり気合というのが整っていましたね。実際に、収録に向けて原作を読ませていただいて。想像以上に、すごく「絶望」という感じで……。
──井内さんはいかがでしょうか。
音楽 井内啓二さん(以下、井内):アニメ化のお話いただく前に原作を一読者として読み進めていたところもあったのですが、この惨劇を本当にアニメ化するんだな……、と思いながら、打ち合わせなどに挑んだ記憶があります。
──実際に音楽を制作されるなかで、印象的だったことなどありますでしょうか。
井内:『ダンまちⅣ』では、これまでの心躍る冒険といった内容から一転、背負うものが増え英雄としての道を歩み出したベルと仲間たちとの葛藤が深く掘り下げられている印象を受けました。
原作の流れを考えると、『ダンまちⅢ』まででベルの成長と物語という意味では、ひとつの区切りがついたと思うんですよね。
そういう意味でも、『ダンまちⅣ』は1期のアバンタイトルで書いたスコアを思い返しながら、新たな解釈で書きたいなと漠然と思っていたんです。それは監督もやっぱり同じ想いだったようで、『ダンまち』1話のアバンと同じ構成を『ダンまちⅣ』の1話に持ってきていました。
ですので、目指す方向はチームとしては同じなのだなと思いながら、『ダンまち』1話のアバンで書いた「Into a Fantasy」という楽曲のモチーフを活かしたいと考えました。
しかしながら、主人公のベルとしても冒険を重ねた上で色々と背負うものが増えており、1期では、初めてオラリオを訪れた新米冒険者という視点でわくわくする感じの曲を書いていたのですが、『ダンまちⅣ』は重厚や辛辣さを意識しつつ、1から書き直しています。
「英雄願望」のテーマも、シーズン毎に書き直しているのですが、4期のデナトスで、新たなる二つ名を授かり受けたベル自身の成長を上手く取り込ん表現ができたのでは無いか、と思っています。
──『ダンまち』といえばケルト音楽調の楽曲がすごく印象的だなと思っていたんですけれど、厄災篇に関しては、本当にひりつくような音楽で……。
井内:そうですね。今回はダンジョンの中で体力を回復する目的のさながら会話をしたりとか、ダンジョンのひとつ角を曲がると恐怖が待っている。そんな中でのやり取りというシチュエーションも加味されると思うので。
基本的には私的な会話をしているんだけれど、どこか影や含みがあったりとか、そういった人物の背景的なものを結構丁寧に拾って音楽に落とし込んでいきましたね。
──早見さんからしても、これまでとは異なる状況でベルと長い時間を過ごすことになった『ダンまちⅣ』かと思います。実際に収録されていかがでしたか?
早見:厄災篇はシリーズ通しても珍しいくらい、基本的に登場人物がすごく少ないんですね。今回はリューさんとベルくんの会話劇みたいになっていて。
なのでまずは、松岡(禎丞)さんとの掛け合いというのをすごく大事にしようと思っていて。戦闘のシーンとボロボロの状態ですごく静かな中で2人きりで会話しているシーンと、本当に静と動の差がとても大きくて。
どれくらいの数のモンスターを仕留めるのか、暴れるところはどれぐらい暴れるのかとか、どれぐらいダメージを受けているような状態にするのかとか。それは、やっぱり1人だけでは決して完成するものではなかったので、ベルとリューの状態やどういう緊迫感をお互い抱えているのかというのは、なるべく松岡さんと共有できたらいいなというのは考えていました。
OPテーマ「視紅」は生命力を感じさせすぎないように
──これまでのリューは、どちらかというと頼りになる冒険者という描かれ方をされていたと思います。ただ、厄災篇ではリュー自身も死を覚悟するほどの緊迫感のある戦闘の連続で。
早見:そうですね。これまでは、今おっしゃっていただいたようにリューさんはすごく頼れる存在でしたし、過去にいろいろあって、いろんな経験を経てきたからこそ、今の確固たるリューさんがいて。
『ダンまちⅣ』では、その過去が逆にリューさんの足をちょっと縺れさせるというか。過去があるから今回のリューさんはいつものリューさんとは違う状態になっていく。そこがすごくキーポイントだな、と思っていて。
それもあって今回のリューさんからは、弱さとか憂いている状態がすごく多く出てくるので、逆にベルくんが頼れる存在。それこそ英雄のように頼もしく引っ張っていってくれます。
それによって、リューさんも立ち上がることができるんですが、普段のイメージとはまた逆になっていくという状態を『ダンまちⅣ』では特に意識しています。
──今、早見さんには声優としての視点からお話を伺いましたが、『ダンまちⅣ』にはアーティストとしても参加されていらっしゃいます。アーティストとしての視点では今回どのような思いで臨まれたのでしょうか。
早見:今回は、迷宮篇には「Guide」というエンディングの楽曲で参加させていただき、厄災篇では「視紅」オープニングテーマで参加させていただきました。
2曲を比べると本当に全然テイストが違うというか、方向性が全く変わっていて。それは、物語にどういう形で色を添えていくかというアプローチが全く異なっているからなんです。
「Guide」はエンディングということもありますし、本編で過酷な冒険が続いた後ほっと包み込んでくれるような、見守ってくれるようなそういう温かさを持った楽曲で。厄災篇オープニングの「視紅」は、これから絶望が始まっていくという物語の過酷さをオープニングから予期させるような重厚感だったり、ハラハラした緊迫感を意識しましたね。
特に今回の「視紅」というオープニングの方は、楽曲自体がすごく分厚いというか、オケ自体がすごくガシガシ疾走感があるんです。反対にボーカルはすごく線が細いんです。
それは生命力を感じさせすぎないようにするためというか。ダンジョンの中で、それこそ次に何が起こるかわらかない中で、一筋の生命線を辿って必死で生きながらえていく。そういう状況をボーカル感で表せたらいいなと。
迷宮篇と厄災篇、それぞれの物語に沿って2曲違うかたちでアプローチさせていただきました。