これが、ジャズだべ。ーーアニメ映画『BLUE GIANT』の持つ圧倒的なパワーに「ジャズ」、「創作物」の本質を"わからせ"られた!【レビュー・原作比較】
石塚真一先生によるシリーズ累計920万部突破の大人気漫画『BLUE GIANT』。ジャズに魅せられた少年が世界一のジャズプレーヤーを志す物語を描いた超大作です。
満を持して本作のアニメ映画が2月17日より公開中です。みなさんはもうご覧になられたでしょうか?
恥ずかしながら筆者は、本作もジャズに対しても「触れたら絶対に面白いよな……」と思いながら何だか手が出せないという状態でした。
しかし、アニメ映画『BLUE GIANT』を鑑賞した後、筆者の電子書籍購入履歴は『BLUE GIANT』で埋め尽くされ、音楽サブスクの履歴は「BLUE GIANT(オリジナル・サウンドトラック)」や作中に登場した曲で溢れかえっています。
見た後に、主人公・宮本大たちの物語を更に追いかけたくなり、キャラクターたちを熱くするジャズとは何か知りたくなってしまうのが『BLUE GIANT』という映画です。
原作との違いや、追加された要素を解説しつつ、誰もが虜になってしまう作品の魅力、本作から伝わった、ジャズや創作物の熱さを共有させていただきます。
目次
泣ける演奏、こだわり抜かれた楽曲
本作は、世界一のジャズプレイヤーを目指しサックスと共に仙台から上京してきた主人公・宮本大(CV:山田裕貴/馬場智章(サックス))、が同級生であり大学生の玉田俊二(CV:岡山天音/石若駿(ドラム))、ジャズクラブで出会ったピアニスト沢辺雪祈(CV:間宮祥太朗/上原ひろみ(ピアノ))と共にバンド「JASS」結成。
10代で日本一のジャズクラブ「So Blue」のステージに立つことを目標に活動していくストーリーです。
ジャズをテーマにした作品なので、劇中の4分の1ほどがライブシーンとなっています。楽曲と雪祈の演奏を担当したのは世界的なジャズ・ピアニストである上原ひろみさん。上原さんは石塚先生や原作『BLUE GIANT』と縁のある方で、映像化が発表される前から「JASS」をイメージした音源を制作しています。
大のサックスを担当する馬場智章さんはオーディションで選ばれたジャズプレイヤー。サックス奏者としてニューヨークを拠点に活躍されています。玉田のドラムを演奏する石若駿さんは「King Gnu」の常田大貴さんのプロジェクト「millennium parade」にドラマーとして参加するなど、今大注目のアーティスト。
劇中の音源は上原さんらがこだわり抜いて収録した楽曲たち。10代らしさを残しながら、キャラクターたちの成長やステージごとに変化する会場、楽器を完全に再現した演奏です。これが映画のチケット代金を払えば聞けるって考えられませんよね。しかも、超熱いストーリーと一緒に楽しむことができます……。
ジャズの演奏は、熱くて自由
本作の演奏シーンは基本的に、3DCG作画と2Dでの作画を複雑に組み合わせたものになっています。二度と同じ演奏にならないというジャズの特性上、演奏シーンの作画がかなり大変なものだった、とパンフレットなどで語られています。
それに加えて本作の映像シーンには「抽象的な画」が意図的に入っています。演奏しているキャラクターの姿や、美しい光沢を放つ楽器達のカット、そして演奏のピークに達すると抽象画のようなカットが現れます。
奏者が感じているジャズの無限さ、その場で聞いたお客さんにしか分からないステージの見え方、音の感じ方が画面全体で表現されています。
これはきっとライブでも見ることの出来ない、本作だけのジャズです。この音楽が情熱に溢れていて、最高に自由なんだ、ということが視覚的に理解できます。
玉田の初ドラムソロに注目!
劇中のどの演奏シーンも激アツですが中でも、注目すべきは「WE WILL」という楽曲で披露される、玉田初のドラムソロ。
初心者にもかかわらず、必死に食らいついてきた玉田のソロはあえて3DCGではなく2Dでの作画をメインとしたものになっています。
ドラムはバンドの中で比較的、演奏自体の動きが派手な楽器です。そして初めてのソロは玉田が最も輝く瞬間。このシーンで筆者は号泣しました……。