『僕とロボコ』ロボコ役・松尾 駿さんインタビュー|台詞の前後にメリハリをつけて「押忍!!クソ男飯!!」 声優の師匠ことボンド役・津田美波さんから学び、書き込んだ台本を前に初心に戻る!
『週刊少年ジャンプ』で連載中の宮崎周平先生によるギャグ漫画『僕とロボコ』。3分間のショートアニメが、2022年12月よりテレビ東京系で好評放送中です。
本作の舞台は西暦20XX年、美少女メイドロボット「オーダーメイド(以下、OM)」が一家に一台普及した時代。平凡な小学生・平凡人(たいら・ぼんど。以下、ボンド)の家にやってきたのは、膝がナッパでハチャメチャで、乙女な一面を持つ自称OMのロボコ。そんなロボコがボンドやその友人たちと過ごす賑やかな日常を描いたギャグストーリーです。
本稿では、ロボコ役のチョコレートプラネット・松尾 駿さんのインタビューをお届け。ロボコに扮して登場した「ジャンプフェスタ2023(以下、ジャンフェス)」には意外な経緯が。
“芸人ならでは”の笑いの演出方法はもちろん、ボンド役・津田美波さんに教えてもらいながら挑んだ本格的な声優業への感想や努力を語っていただきました。インタビューから伝わる愛を込めたアフレコ秘話をお楽しみください。
ボケの前後を意識して、普通の声で演じるロボコ
ーー原作漫画をご覧になった感想を教えてください。
ロボコ役・松尾駿さん(以下、松尾):正直、僕ら芸人は「もうギャグ漫画で笑えないのかな」と思っていましたが、読んでみたら面白くて! 時代にも合っていて、素直に面白いなと思いました。
ーーどのような点が時代に合っているなと感じましたか?
松尾:誰も悪いやつがいないですから。普通ならこの見た目と関係性だと、ガチゴリラと(金尾)モツオは嫌なキャラクターなはずなんですけど、誰よりも良いやつなんですよ。多様性が重視され、人を傷つけないようにする今の時代に合っているなと思いました。
ーー誰も否定しない優しい世界ですよね。そんな中、ロボコは暴れまわるっていう(笑)。
松尾:そう、ロボコがひとり迷惑をかけています(笑)。他の人が良くしていこうとする物語がいいですよね。
ーー見ていてほっこりします。テレビ番組で宮崎周平先生に取材した際に「アニメ化する時があったらぜひ僕を声優に使ってください」とおっしゃっていたようですが、本当にロボコ役に決まった時の心境はいかがでしたか?
松尾:「いや、ロボコかい!」と思いました(笑)。
ーーツッコミが(笑)。逆に出演するとしたらどのキャラクターを考えられていたのでしょうか?
松尾:演じるキャラクターまで考えていなかったです。とにかく、何か出演できたらいいなと半分ボケで言っていたので(笑)。まさか主役のロボコだとは思いませんでした。
ーーオーディションはどのような様子でしたか?
松尾:色々な声を作ってロボコの台詞を何度か読みました。最終的には「松尾さん、普通の声でやってください」と言われて今もそのままです(笑)。声を作ってしまうと、監督から「もっと普通でいいです」と言われます。
ーーロボコは女性のロボットで人でもなく性別も違いますが、演じる上であえて何も気をつけていないのでしょうか?
松尾:あまり力まないようにしています。今までの声の仕事ではとにかく声を作っていましたが、「押忍!!クソ男飯!!」などのセリフを除いて、普通のロボコはあまり力を入れすぎないよう意識しています。
ーーそれこそロボコは「押忍!!クソ男飯!!」、「萌・萌・滅」のように決め台詞的なボケが多いですが、声を発するボケで意識していることはありますか?
松尾:メリハリですかね。直前の台詞をより普通にした方が言葉が際立つと思うので、決め台詞は言いやすい分、前後に落差を出せるように気をつけています。
ーーアニメのスピードが相当速いのに緩急をつけるのは難しそうですね。
松尾:難しいですし、まだできてないと思います(笑)。ボケの前後を意識すれば、ロボコのキャラが立ちますし、笑いやすくなるので、そこは大事にしています。
ーーたたみ掛けるようにボケたり、ツッコまれた時の間など、芸人さんならではの視点で違いを感じる時はありますか?
松尾:コントとかなら顔や動きで表現できますが、声だけで表現するのはとっても難しいですね。僕は皆さんに助けられているので、ツッコむ津田さんの方が大変だと思います。
ーーそもそもボケとツッコミではどちらの方が消費カロリー(難易度)が高いのでしょうか?
松尾:どっちも大変ですが、本作に関しては津田さんの方が大変かと……。ボケはボケっぱなしで良いですし、僕は言いやすい尺で収録しているので津田さんが合わせてくれています。
師匠・津田さんに学んだ台詞の書き込みと準備
ーーアフレコ現場では津田さんとどのようなやり取りをされているんですか?
松尾:今まで何度か声の仕事をしていましたが、今までのものと全然違う大変さと難しさで、分からないことだらけなんです。
なので、自分の台詞の映像でのタイミングを把握することから声優の全部を津田さんが教えてくれています。津田さんはボンドの声と僕への指導があるので、倍大変だと思います。僕の中で、津田さんは声優の師匠なんです!
ーー芸人さんと声優の台本は、どのように違うのでしょうか?
松尾:単独ライブの台本は台詞をちょっと書いたりしますが、バラエティでは書き込むことはほぼないですよ。普段は全体の流れしか見てないです。台本、今あるので見ます?
ーーありがとうございます。台詞や時間が細かく書き込まれてますね!
松尾:アニメではタイムも見なきゃだし、台詞がページをまたぐ時は、めくらなくて良いように台詞を書き写したりとか。最初はルールすら知らなくて津田さんに聞いたら、「台本にタイムを書いておけば喋り出しが分かります」と細かいことまで教えてくれました。普段、こんなに準備することはありませんし、準備しないと時間がかかって皆さんに迷惑かけてしまうので。全て師匠の津田さんから教えてもらいました。
ーー画面とタイムを見ながら台詞を見て話す技術は、まさに職人技ですよね。
松尾:タイムが来たと思って喋っていると、全然違う場面になってたり……。プロの方がサラッとできちゃうのがすごいなと思います。
ーー準備にもかなり力を入れているのがわかりました。
松尾:準備の時間も違うので、思い入れも全然変わってきますね。『僕とロボコ』で仕事への姿勢も「ちゃんと準備しなきゃな」と思うようになりました。
ーー初心に帰るような感覚があるのでしょうか。
松尾:ありますね。周りがロボコを良くするように動いてくれますよね。ロボコを通じて、感謝したいなと、周りの人へ感謝しなきゃと改めて思うようになりました。
ーー松尾さんの考え方も『僕とロボコ』の作風のように優しくなっているんですね。
松尾:優しい人しか出てこないからね(笑)。