みつみにシンクロし、みつみと泣いて、みつみに救われる。春アニメ『スキップとローファー』岩倉美津未役・黒沢ともよさんインタビュー【リレー連載:第1回】
4月より、TVアニメ『スキップとローファー』の放送がスタートしました。地方の小さな中学校から、東京の高偏差値高校に首席入学した岩倉美津未。田舎の神童と呼ばれ、将来設計は完ぺきだけど、人との距離感が独特でちょっとズレてる彼女は、入学式当日からトラブル連発! いきなり目立ってしまいます。そんな彼女を助けてくれたのは……!?
十人十色、だけど、きっとあなたとの共通点が見つかる、魅力的なキャラクターたちを深掘りするべく、アニメイトタイムズではキャスト陣のリレー連載をお届け! 第1回は岩倉美津未こと、みつみ役の黒沢ともよさんです!
心のチリチリやモヤモヤをピンポイントで掬ってくれる
――初めて本作に触れたときの印象をお聞かせください。
黒沢ともよさん(以下、黒沢):「サイッコー!!」(笑)。かゆいところに手が届く作品。こんなにハッピーなお話なのに、心のチリチリやモヤモヤをピンポイントで掬ってくれる。これを見たらみんな満たされるのに、って思いました。日本に足りないビタミンが全部詰まってます!
――最初に原作を読まれたのは、オーディションのときですか?
黒沢:そうです。オーディションが、第1話の最初のほうと、文化祭で志摩くんと話すシーンだったので、文化祭のところまで読んで止めました。
――え!? なぜ!?
黒沢:作品がおもしろすぎて。これ以上読み込んで、落ちたらショックがでかくなると思って……(笑)。
――第一印象で、みつみはどんな子だと思いましたか?
黒沢:私の高校時代にみつみそっくりな子がいたんです。制服は校則に準じた着こなしで、髪型はこけしヘアー。決して社会の規範から逸脱しませんって雰囲気を出してるのに、マインドはめちゃくちゃポジティブ! ものすごくノリが良くて、「最高だ! イェイ!」って感じで、いつもはじけてました。
しゃべり方もみつみに近くて、みつみはちょっと奥を掘るようにしゃべってるんですけど、彼女も似たような話し方をしてました。なので、みつみを見たときにすぐにこの子の顔が浮かびました。彼女の存在に救われて私は高校3年間を乗り切ったので、そういう意味でもみつみに似ています。
――では、みつみの役作りはその方をモデルに?
黒沢:全部その子ってわけではもちろんないんですけれど、私の中ではすごく大きな要素としてありました。ほかに気を付けたことは、彼女は石川県を背負って東京に来ているので、そういう背景を忘れないようにしました。
あと、1学年8人しかいない中学校で育ったからこそのメンタルの強さも織り込んでいます。コミュ力が高いというのとはまた違う、ただのコワイもの知らずなメンタルです(笑)。
――具体的にはどのようなことを?
黒沢:さじ加減を考えないようにしました。踏み込むときはやり過ぎなぐらいグイッと踏み出す。逆に、ここは踏み込めるのにっていうところはスルーする。その際、裏の意図を感じさせない、計算を匂わせないよう心がけました。
――音響監督からは、みつみについてディレクションはありましたか?
黒沢:みつみについてはなかったんですが、女の子って友だち同士だと食い気味に話すじゃないですか。その現象がアフレコ中にも起こっちゃって、4人(みつみ、ミカ、結月、誠)で会話すると楽しくなり過ぎて、テンポがどんどんどんどん上がってしまって、オフゼリフが3秒ぐらい巻いて終わったこともありました。そのときは「そこは仕事だから。楽しくなりすぎないように」って注意されました(笑)。
――アフレコで印象に残っている出来事はありますか?
黒沢:音響監督の山田(陽)さんが現場の空間作りをとても大切にされる方で、分散収録が主流の中、『スキップとローファー』は出演者全員、広いロビーに集まって、シーンごとに必要な演者だけをスタジオに入れる形式を取ってくださったんです。なので、みんなすごく仲良くなって……。
実は私と迎井(司)役の(田中)光くんだけが年下で、ほかの方は先輩だったんですけど、私たちも同級生のように扱ってくださって、「このあと空いてる人、カフェ行かなーい?」とか「みんなでタコパしなーい?」とかって誘ってくださったんです。「タコパ、ともよはー?」「え……!? 私もいいんですか!?」みたいな(笑)。とても朗らかで学校みたいな、部活みたいな、稀な現場だったと思います。
――みんな一緒に集まれたことが貴重な体験だったんですね。
黒沢:そうなんです。あ、そういえば! 印象に残ってる出来事、ありました! 収録中にスタジオの電球の命が終わりかけたことがあって……。
――電球の命!?(笑)
黒沢:スタッフさんが替えの電球を持ってきてくださったんですが、その日はたまたまスタッフも含めて女性ばかりで……。そうしたら、唯一、現場にいた男性の江越(彬紀)さんが、「僕、やりますよ」って自然な流れでさっと取り替えてくれたんです! 「こんなのいつでもやりますよ」って。格好いいですよね! みんな思わず拍手しちゃいました。江越さん、志摩くんそのままなんです。会うとビックリしますよ(笑)。
――演じる際にこだわったところを教えてください。
黒沢:みつみはLINEスタンプになるような名言が多いんです。例えば、「今日はきっと完璧な1日になる……」「人の上に立つべき人間だからです!」のような。そういう、端から見るとコメディだけど本人は大まじめなセリフの案配を、絵や演出が動いてから考えたいと言われまして、毎回、4~5パターン録ってました。転ぶときも「うっ」っていう本当に転んでいるような声から、コメディ要素強めの「どべぇ!」「でへぇ!」といった声までたくさんのバリエーションを録って……。仕上がりを見せていただいたらとてもいい形にぴったりハマってて、音響制作さんと出合監督が細かく調整してくださったんだなってわかりました。
――みつみといえば石川県ですが、石川県の方言は難しくなかったですか?
黒沢:タッちゃん役の三浦(勝之)さんが石川県のご出身で、事前に方言部分のセリフを録音してくださったんです。あと、(原作の)高松美咲先生も石川県にゆかりのある方なので、毎回、お二人に確認してもらいながら収録してました。石川は縦に長い県なので、北と南では微妙に方言が違うらしく、そこもお二人は相談されていました。ただ、みつみが実家に帰るエピソードでは全員が方言だったので、まわりが方言ばかりだと釣られる現象が起こって、難しさはそんなに感じなかったです。