春アニメ『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』アナーキー役・ファイルーズあいさんインタビュー|台本を読んでいて、ハッとさせられたアナーキーの言葉とは?【連載第1回】
気鋭のクリエイター・JUN INAGAWAさん原案による愛と狂気と破壊の物語。オリジナルTVアニメーション『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』の放送がスタートしました!
本作は、若き革命者・オタクヒーローと、彼を慕う3人の魔法少女・アナーキー、ブルー、ピンク、そしてさまざまなオタクたちが、あらゆるオタク文化が排除された世界で、謎の勢力に戦いを挑む作品です。
アニメイトタイムズでは、出演者の放送後インタビューを掲載! 第1回は、アナーキーを演じるファイルーズあいさんです。
運命を感じたアナーキー役。オーディションでの思い出
ーーTVアニメ『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』は原案がクリエイターのJUN INAGAWAさんですが、どんなイメージがありますか?
アナーキー役・ファイルーズあいさん(以下、ファイルーズ):何年か前に原宿の交差点の建物で、赤髪のツインテールの女の子の絵が大きく描かれていたのを見たんです(Jun Inagawa個展『“美しい破壊 – Beautiful Destroyer”』東急プラザ表参道原宿/21年9月17日~10月10日)。その頃はJUN INAGAWAさんの存在を知らなかったんですが、その女の子の絵が力強くて、目が離せない魅力があったんですよね。
それがずっと心の中に残っていて、この作品のオーディションを受けたときの資料でアナーキーを見たときに、「あのときの子にすごく似ているな」って思ったんです。そこからアフレコのときに、あのとき見た絵と同じで、それがJUNさんの作品だったことを知ったんですが、JUNさんは、目の離せない不思議な魅力のある作品を作る方だなって思いました。
ご本人も、自分のやりたいことが明確で、かつそのために自分のやることがわかっている、すごく努力家なんだなと思いました。絵を上達させても、上手いだけでは人は見てくれないので、そこに魅力を加えて世界観を創り上げなければならないんですが、それには努力が必要なんです。でもきっと本人はそれが楽しくて仕方がないから、努力とかそういうラインを超えちゃっていたと思うんですよね。良い意味で逸脱している人なんだろうなって思いました。
ーー好きの情熱が強い方なのでしょうね。自分の絵がアニメにまでなるわけですから。
ファイルーズ:あのとき、アナーキーに運命的な出会いをしていたんだと思うと、受かったことって何か縁(えにし)のようなものを感じますよね。最初に見たときも他人のように思えなかったんですよ。「好きだな、この子」って思ったので。
ーーキャストが発表されたときに、アナーキー役がファイルーズさんで、すごく納得しました。
ファイルーズ:あははは(笑)。汚い言葉を言わせれば、天下一です!
ーーオーディションでの思い出はありますか?
ファイルーズ:実は全然ディレクションもなく、淡々と進んでいったんです。自分としてもアナーキーちゃんはやりやすいというか。自然に感情を口に出せる子だったので、私らしいキャラだなと思いました。
ただ、作品資料と台本にセリフがあるんですが、セリフの説明が全然ないんですよ(笑)。意味不明なセリフがいっぱい書いてあったんですが、これに疑問符を付けたまま演じたら受からないんだろうなと思ったので、何も考えず、頭を空っぽにして、なおかつアナーキーになってセリフを言いました。
良い意味でJUNさんのような逸脱した感じ? タガが外れている感じを出さないとダメなんだと思って、理屈は捨てて、思い切り“アナーキー”に演じました!
ーーそんなに説明がなかったのですね。
ファイルーズ:ホントに何も書いていなかったんですよ! でも、ピンク役が一番苦労したと思います(笑)。「ごぼごぼごぼごぼ」しか書いていなかったので。
アナーキーのセリフだけだと訳がわからなかったので、作品資料に書いてある他のキャラのセリフにヒントはないかな?と思って見ていたら、ピンクは「ごぼごぼごぼごぼ」しかなかったので度肝を抜かれました(笑)。そういうおかしなことが当たり前にある作品なんだと思ったら、演じやすくなりました。
ーー受かったときは喜びもひとしおですね。
ファイルーズ:受かってもしばらくは、原宿で見たイラストがアナーキーだとはわかっていなかったですけどね(笑)。
数話収録を重ねて、黒沢ともよさん(ピンク役)と一緒にインタビューを受けたタイミングで、「あれ、JUNさんの絵だよ」って教えてもらったので。なので嬉しかったし、運命を感じました。
アナーキーの名前と同じような、無秩序で無法地帯みたいな作品、チャレンジ精神を感じる作品は好きなので、携われて良かったなと思います。
「オタク以外の人にもアニメの魅力や素晴らしさを知ってもらいたい」
ーーストーリーを見たときは、どんなところに魅力を感じましたか?
ファイルーズ:まず台本にあるロゴが良いんですよね。「私も魔法少女を受けられるポジションになったのか~」って思っていたら、「デストロイヤーズ」って仰々しい感じでタイトルが描かれていて。そこからしてキャッチーですよね(笑)。フォントの感じもウォールアートで、スプレーで描いたような無骨さがあって、デザインチックな要素もあったので、洗練されている印象がありました。
お話の中身としては、昔からあるインターネットスラングだったり、中野などのサブカルチャーが合わさっていて、この時代にアニメ化するからこそのクオリティもある。レトロと新しさが組み合わさった面白い作品だなと思いました。
ーーオタクカルチャーやサブカルチャーは、ファイルーズさんにも馴染みのあるところだと思うのですが。
ファイルーズ:私は生まれたときからオタクですから(笑)。中野ブロードウェイは楽しくてよく行っていたので、馴染みの場所が出てくると嬉しいですよね。
秋葉原は男性向けが多いイメージがあったので、私は池袋とか中野のような、男女両方あるような地によく赴いていました。
ーーオタクやサブカルの素晴らしさがわかる作品でもあると思いました。
ファイルーズ:はるか昔の新聞では、コミケに行っているオタクたちが、散々な言いようで書かれていたりしたんです。そういう時代を経て、今アニメはオタクだけのカルチャーではなく、日本を代表するサブカルチャーにまで昇華していったじゃないですか。それは素晴らしいことだと思うと同時に、好きなことを隠さずに、堂々と「これが好きなんだ!」って発信してきた人たちがいたからこそ、こういう時代になったと思うので、これからもオタク以外の人にもアニメの魅力や素晴らしさを知ってもらいたいですし、この作品がそのきっかけになったら良いなと思います。
アニメオタクだけではなく、鉄道オタクとかいろんなオタクが出てくるので、いろんな人に共感してもらえたらなと思います。
ーー好きなものを好きと言える、本当にいい時代になったなと感じています。アナーキーを演じてみて、どんな子だと思いましたか?
ファイルーズ:名前からして無秩序な感じですが、私が押したいポイントは、「無秩序で暴れん坊だけど、決してバカではない!」というところです。頭がいいんですよ。戦いでも機転を利かせますし、かなり強いんです。でも、それに慢心して、舐めプとかはしない。口が悪いし、言動も上品とは言えないけれど、魔法少女にふさわしい魅力がある子だと思います。
ーーアニメの第1話は、スタッフとキャストが一緒にキャラクターを作り上げていく話数でもあると思うのですが、何かディレクションはありましたか?
ファイルーズ:実はあまりなかったんです。伸ばす長さや「張り目で」といった、技術的な要望はありましたが、すごく任せてくださっているんだなって信頼を感じたので、それに応えたいという気持ちで臨んでいました。
オーディションで選んでいただいたということも自信に繋がっていました。のちのちJUNさんと対談したときにお聞きしたんですが、オーディションで私の声を聞いたときに、「アナーキーちゃんはこの子しかいない」と思ってくださったそうなんです。それが今でも支えになっています。アナーキーを演じるとき、さらに自信を持ってマイク前に立つことができるようになりました。
ーーアナーキー以外のキャラクターについてはいかがですか?
ファイルーズ:狂太郎が好きなんですよ。何だかよくわからないんですが、毎回ボコボコにされるんです(笑)。マスコットキャラクターのはずなんですが、あまりにも説明がなさすぎて、誰もわかっていないという。
いつもアナーキーたちのそばにいるんですが、めっちゃイライラするんです!(笑) みんなが狂太郎をボコボコにする気持ちがわかるというか。ボコられて輝くキャラなんです。みんなのサンドバッグみたいになっているのに、次に出てくるときはケロッとしているところとか、すごくかわいいので、狂ちゃんのぬいぐるみグッズ、待ってます!
ーーボコボコにもできるし。
ファイルーズあい:嫌なことがあったときとかに使えますね(笑)。
ーーそんな狂太郎を演じるのは楠木ともりさんですね。
ファイルーズ:楠木ともりちゃんが絶妙にイラッとくる演技をしてくるんですよ! 一緒に録れる機会があまりなかったので、返しの声を聞きながらやっていたんですが、予期せぬ言い方とか、トリッキーなアドリブを入れていたりするので、つい笑っちゃって、次のセリフに支障が出るくらいだったんです。なので、オンエアになってどうなるのかが一番楽しみなキャラクターです。