『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』林原めぐみさんが語る、周りの人から愛され灰原「哀」から灰原「愛」へ変わる気持ちの変化/インタビュー
劇場版(映画)第26作となる『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』が、2023年4月14日(金)より全国東宝系にて公開中です。
本稿では灰原哀役・林原めぐみさんにインタビュー。今作の見どころやご自身が演じている灰原哀というキャラクター、共演キャストについてなど、余すところなくお話してくれました。
※林原めぐみさんのファンで、まだ『名探偵コナン』観ていない人、記事で興味を持ち『名探偵コナン』をこれから見る人は、ネタバレも含みますのでご注意ください。
『名探偵コナン 黒鉄の魚影』ストーリー
東京・八丈島付近に建設された、世界中の警察が持つ防犯カメラを繋ぐための海洋施設『パシフィック・ブイ』。本格稼働に向けて、ヨーロッパの警察組織・ユーロポールが管轄するネットワークと接続するため、世界各国のエンジニアが集結。そこでは顔認証システムを応用した、とある『新技術』のテストも進められていた―。
一方、園子の招待で八丈島にホエールウォッチングに来ていたコナン達少年探偵団。するとコナンのもとへ沖矢昴(赤井秀一)から、ユーロポールの職員がドイツでジンに殺害された、という一本の電話が。不穏に思ったコナンは『パシフィック・ブイ』の警備に向かっていた黒田兵衛ら警視庁関係者が乗る警備艇に忍び込み、施設内に潜入。
すると、システム稼働に向け着々と準備が進められている施設内で、ひとりの女性エ
ンジニアが黒ずくめの組織に誘拐される事件が発生…!さらに、彼女が持っていた、ある情報を記すUSBが組織の手に渡ってしまう…。
海中で不気味に唸るスクリュー音。そして八丈島に宿泊していた灰原のもとにも、黒い影が忍び寄り…
決して触れてはいけない〈玉手箱〉が開かれたとき
封じ込めた過去がいま、洋上に浮かび上がる―
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灰原哀がメインキャラクターになること
――今作で劇場版は26作目になります。『名探偵コナン 黒鉄の魚影』で灰原哀がメインキャラクターになると知った時の率直な感想をお聞かせください。
林原めぐみさん(灰原哀役/以下、林原):「あぁ、もう逃れられないか」と……。
一同:(笑)。
林原:『名探偵コナン』という作品の中では、ひとりの中心人物ではありますけど、どちらかというと真ん中にいるわけではなく、特に劇場版は、哀ちゃんは、コナンくんを支える側にまわるという立ち位置。私自身もこの作品の中では、少し引いた立場でいたんですよね。
公開の度に(江戸川コナン役の高山)みなみちゃんがいろいろなところをイベントなどでまわって、コロナ前などは、スタジオにドンっとおみやげがあると、「あぁ、いろんなところを頑張ってまわってきたんだな~」とか、傍らで「ありがたいねぇ。ご苦労様」という感じで思っていましたけど、「いよいよ私も出て行くのか」と……。
一同:(笑)。
――劇場版でここまで灰原哀がメインとなるのは初めてですよね。
林原:そうですね。作品ごとに印象的なシーンはありましたけど、ここまでメインという形ははじめてです。でも、例えば安室さん(安室透/バーボン/降谷零CV:古谷徹)であったり、赤井さん(赤井秀一/ライCV:池田秀一、沖矢昴 CV:置鮎龍太郎)であったり、今までの流れも含めて、それぞれのキャラクターに深めにスポットが当たっていくのは、逆をいえば「何か終わりが近いのかしら?」と思ってしまうような……。
ただ事件に巻き込まれるだけではなく、ここまで組織の存在を匂わせてくる感じがちょっと別の意味でもドキドキしますよね。とか言いながら、まだ続いちゃうんでしょうけど……。
台本を読んで、我慢しないで泣き続けた
――今作の台本を読んだ時の印象や映画を見た感想などをお聞かせください。
林原:今作は黒ずくめの組織との対決で、哀ちゃんが中心にくるというお話は、ぼんやりとは聞いていたんですけど、台本をいただいた当日すぐ帰って、その日は寝かせて、次の日に読んだのかな……。
覚悟を決めて台本を読んで、そうしたらもう涙が止まらなくて……。この状態の私が当日まともにセリフを言える気がしなくて……スタジオで泣いていたら哀ちゃんの恐怖を担えませんからね。とりあえず我慢をいっさいせずに、気が済むまで、自分を泣かせておいたんです。
少し動揺した状態の中で、高山みなみちゃんに「泣く泣く泣く……」という感じでLINEを送りました。彼女は台本を神棚に上げて、自分にピン!!と来る日に読むらしくて、(林原さんが連絡をした時は)まだ台本を読んでいなかったので、「そんな? そんな?」と言いながらも、コナンくんのスタンプを送ってきてくれたりして、そこで何か、スッと自分が冷めて、「そうだね。仕事、仕事」という気持ちになりました(笑)。
一同:(笑)。
林原:それで、ちょっと江戸川コナンにザラっとした気持ちになって、哀ちゃんの「むっ」というスタンプ返したりしながら、ちょっと冷静になって。振り返って考えてみたら、私の中では哀ちゃんが泣いていると思っていたんですけど、林原めぐみが泣いていました。
「あぁ、こんなに人から愛されて、こんなに人から大切にされて、思われて、大事にされて」という。いつ死んでもいいと思っていた哀ちゃんの周りには、愛情がいっぱいで、それを私自身が受け止めきれていなくて。哀ちゃんは(今作の中での他のキャラクターの行動を)知らないのでね。博士(阿笠博士CV:緒方賢一)が泣いているところや、愛車のビートルを「ぶつけてでも止めたるわい」と乱れた運転をする、あんな博士を見たことないんです。
いつもは「哀くん~」と言いながら、お菓子のつまみ食いとかね(笑)。博士がすごいものを作っている人だということは知っていますし、研究者としての腕の高さもわかっているんだけど、どうしても一緒に暮らしている博士は、ちょっと抜けているところが8割みたいな人ですから(笑)。
そんな博士の憤りや、少年探偵団の子たちも現状を知らないなりに、ものすごく心配している様子や、そこをちゃんと蘭姉ちゃん(毛利蘭CV:山崎和佳奈)がカバーしてくれていたり、全力で助けようとしてくれたり、もちろん江戸川くんの働きも含めてですけど、「こんなにあなたの居場所はあるのよ」と、今話していても泣きそうだけど……。全部知らないんだけどね…哀ちゃんは。
そういうことが「ダァ~」と浮かんできたので、それで1回涙を全部流しきって、リセットして、林原めぐみさんがちゃんと哀ちゃんの代弁をできるように、「哀ちゃんだけが見ている恐怖、哀ちゃんだけが感じている模索、ここからどうしていこうか」というところに集中するという視点に切り替えました。
その中に微妙にエレーナ(宮野エレーナCV:林原めぐみ)さんがいたりとか、かつてこのような形で薬が使われることは知らずに研究を面白いと思っていた時代のシェリーや宮野志保がいたり。これまでの灰原哀というものが竜巻みたいに自分の中で、荒れに荒れて、凪になるまで待って、そこから島(アフレコ現場)へ行かなきゃという感じでした。
――アフレコ収録の時は凪になった状態で臨まれましたか?
林原:そうですね。もう完全に凪になった状態から始めて、そこからまた怒涛になっていくんですけどね。
――アフレコ収録してみていかがでしたか。
林原:一度しっかり泣き切って、冷静になって改めて彼女の視点と重なってみたら、この恐怖感は私の中では「いつか来るだろうな」と予測はしていたものでした。ここまでみんなと引き離されるとは思っていなかったけど、「ついに来たのか」という思いでした。恐怖であり、覚悟であるといった感じかな。
――ついに来ましたね。
林原:まさかの潜水艦という規模は、圧倒的に想定外でしたけど(笑)。
一同:(笑)。
林原:迫りくる危機感みたいなものは、すごくいつもありました。ただ、ひとりぼっちではなかったのでね。
ひとりぼっちだったら、「もしかしたら、全てを受け入れて諦めちゃっていたかもしれないな」とは思いますね。「もういい。私ひとりがここで消えても」という気持ちに、もしかしたら、なっていたかもしれない。
「帰りたい。帰らなければ」という自分の中に湧いてくる衝動も間違いなくあったと思いますけど、巻き込んでしまった「直美を帰さなきゃ」という気持ちもあったでしょうから。
最初はただ縮こまって、恐怖に固まっていましたけど、灰原哀なのかかつてのシェリーなのか、肝の座りぐあいみたいな部分も感じましたね。