まだお互いに歩み寄れていない人間と≪境界人≫。虐げられる≪境界人≫たちの想いが浮き彫りになった第4話。『THE MARGINAL SERVICE』甲斐田裕子さん&三宅健太さんインタビュー【連載第5回】
第4話で印象的だったのはイヅナが手錠をかけられたシーンとイザベラがブライアンに語るシーン
――第4話で印象的だったシーンを挙げるとすれば?
三宅:僕は天狗が手錠をかけられるシーンが衝撃的であり、悲哀も感じつつ、この作品の世界観やテーマを大きく表しているのかなと思いました。
――あと野球場のマウンドから予想外のものが生えてきたシーンも驚きました。
三宅:まさかまさかの天狗の鼻ですもんね。でも自らの存在をアピールする手段としては粋だし、おしゃれだなと思いました。
甲斐田:イザベラの家に仕掛けられた爆弾が爆発する寸前、ブライアンに助けられて「なぜ私を守った?」と尋ねたら、ブライアンが手を差し伸べて「誰しもが悪というわけじゃない。少しは信じたい」と話して、イザベラは目をそらしながらイヅナの話をし始めるシーンです。ブライアンの気持ちを察して、伝える時の彼女の表情やうつむき加減のカットが好きでした。今までの彼女からちょっと心を許して、距離感が縮まった気がして、もし次に登場する時は心境に変化が出るだろうなと思わせてくれました。
――≪境界人≫はほぼ不死身で、イザベラを助ける必要がなかったのに、助けてしまうブライアンは同じ人として見ているからかもしれません。
甲斐田:≪マージナルサービス≫の中で唯一違う考え方だと思うし、ブライアンみたいな人が増えてくれば争いも起きないんでしょうね。
三宅:寄り添おうとしすぎると拒絶されるし、離れすぎると無関心になる。ブライアンみたいな距離感がちょうどいいし、素敵だなと思います。
お二人と宮野さん、森川さんの4人の収録は大人のおしゃれな現場
――本作は分散収録で、お二人は宮野さん、森川さんと一緒の収録でした。
甲斐田:分散で、少人数での収録はやりにくいですね。早くみんなで、できるようになってほしいです。
三宅:掛け合いが重要な会話劇では特にね。
甲斐田:声を吹き込む時だけでなく、休憩時のムダ話も含めた一体感が大切なんですよね。別々に録ってもちゃんと作品としてでき上がるけど。
三宅:1回の収録ごとに生まれる空気感は二度と再現できないわけで、雑談を含めた共演者同士のコミュニケーションは作品のプラスアルファになっていると思っています。
――お二人と宮野さん、森川さんのチームの収録を拝見していると大人の現場だなと。ちょっと小粋でおしゃれな感じもあって。
三宅:見られていたんですね(笑)。おしゃれだったって?
甲斐田:わからないけど。でもみんな、おじさん、おばさんになったなと思います(笑)。
――レギュラーチームではないのに、すっかり信頼関係ができていて。余計なことを言う必要がないから、収録が止まると雑談に花を咲かせて。
三宅:僕は甲斐田ちゃんに何も言えないです。
甲斐田:何で? どういう意味?(笑) でもあの雑談が収録の準備運動になるんです。私はイヅナと入れ替わりで、直接掛け合いをする二人と一緒にできたからやりやすかったです。
三宅:僕も同じです。
もし≪境界人≫だったら欲しい能力とは?
――もし≪マージナルサービス≫のようなチームを作るとしたら、どんなチーム名にしますか?
甲斐田:「X-MENS」?
三宅:Xを×(バツ)にして(笑)。「ハンニバルズ」というのはどうでしょうか? ある役者さんへのリスペクトを込めて。その方は≪境界人≫よりも強そうですけど(笑)。
――もし≪境界人≫だったら、何をモチーフにした≪境界人≫になりたいか、またどんな能力が欲しいですか?
甲斐田:私はずっと空を飛びたいと思っているので、飛ぶ能力を持つ≪境界人≫がいいですね。イザベラが飛べるのが一番ですけど。
――なぜ空を飛びたいんですか?
甲斐田:気持ちよさそうじゃないですか? 移動も楽だし。
三宅:我々の仕事では遅刻できないからね。
甲斐田:空が飛べたら他の能力なんていらないって思っちゃう。
三宅:僕は「変化(へんげ)」ですね。昔話などで、たぬきは人にもモノにも化けられましたが、それができたらいいなと。時々、人間以外の役柄を演じることがあって、物体を演じることもあるんです。炊飯器の声を出してほしいとか(笑)。モノになれたら、それっぽくできるのかなと。
例えば「岩っぽい声で」というオーダーがあったら、岩になって声を出せばそれが正解なわけですから。でも今回演じたイヅナに憧れますね。これだけ知能指数が高かったら、また違った人生になっていたかも。ノーベル賞をとったり……それはさすがにムリか?(笑)