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夏アニメ『英雄教室』新木 伸×森沢晴行×岸田こあらインタビュー【連載第2回】

夏アニメ『英雄教室』新木 伸さん(原作)×森沢晴行さん(原作イラスト)×岸田こあらさん(コミカライズ)座談会|頭の中である人物が語りかけてきたことが作品誕生のキッカケ!? さらに小説にはなかった漫画版ならではの要素も明らかに 【連載第2回】

キャラクターはシルエットを意識してデザイン

――原作のイラストに関しては、どのような経緯で依頼が来たのでしょうか?

森沢:別の機会で新木先生にご挨拶したときに「今度頼もうと思っているんですよ」と言われて。でも、それはよくある社交辞令だろうなと思っていたら、本当に依頼がきました(笑)。

――新木先生からの指名だったと。

新木:そうですね。編集さんも候補リストは作っていたんですけど、その筆頭に森沢さんがいて。根回しもしてあったし(笑)。

それに、僕の方からいくつか要件を出していたんですね。ヒロインは媚びている感じではなく、ブレイドの横に並び立つ感じ。1巻目のイラストで2人は背中合わせに座っていますけど、それって信頼感があるからなんですよ。相棒感が出せて、なおかつ生命感が欲しかった。殺しても死なないような、ヒットポイントの高そうなヒロインを描ける人で、ファンタジー系ができる人――そういった要件に該当する人を検索してもなかなかいなくて、森沢さんが筆頭だったんですよ。

森沢:ありがとうございます。

――そこから、キャラクターたちをどのようにデザインしていったのか教えて下さい。

森沢:「色」からヒロインの性格は想像しやすかったので、あとは自分の中でどうファンタジー作品としてキャラを落とし込んでいくか、というところでデザインしていきました。

ただ、メインヒロインが3人と言われたので、全員恋愛対象に入るのかなと思って、実はクーも最初のデザインではもうちょっと頭身が高かったんです。でも、マスコットキャラみたいに、どんどん頭身が低くなっていきました。

――赤、青、黄色と言われたら、それぞれ性格の異なるヒロインだと思いますからね。新木先生からはデザインでなにか言われることもありましたか?

森沢:この仕事を受けるときに、いろんな方から「新木先生は結構ダメ出しするよ」と聞いていて、いや大変そうだなぁって思ったんですけど(笑)。僕はあんまりリテイク出された記憶はないです。すんなりと通りました。

新木:企画書に、アーネストだったら「常に帯剣している」「プロポーションがいい」「くだけた調子になってからは二面性がある」、クーなら「ツインテール」、ソフィは「身長153cmでスレンダー気味」といったイメージを書いていましたからね。ソフィはなぜマフラーなんだろう? と思ったけど、合っているからいいかなと(笑)。

森沢:ソフィは格闘術なのでマフラーがなびくとかっこいいかなって(笑)。

新木:ポンチョは?

森沢:なんとなくのイメージですね。僕はキャラクターをデザインするとき、最初にシルエットを意識して描くんですよ。なので、つるっとしているとちょっと微妙かなぁと。

新木:「シルエットで見分けがつかないと、いいキャラとは言えない」ってよく言いますよね。完全にディテールをつぶして外形だけ切り抜いても、これは誰々とわかるデザインがいいと。

――では、森沢先生にとって特に印象深いキャラクターを挙げるなら誰でしょうか?

森沢:やっぱりアーネストには思い入れがありますね。あと、一番タイプかな(笑)。シルエット的に結構凹凸もありますし。

新木:凹凸はありますね。

森沢:アーネストは、凹凸があるようにと、ゴージャス感をなるべく出すように意識してデザインしましたね。

コミカライズの決め手となったのは「漫画力」

――そして、小説の6巻が刊行されたぐらいのタイミングで、コミカライズがスタートしました。

岸田:コミカライズはコンペだったんですよ。ありがたいことに選んでいただいて描くことになったのですが……全然実感がわかなくて。月刊少年ガンガンに載って初めて、「あ、私が描いたんだ」ってなりました(笑)。当時は、読み切りが1回載ったぐらいのド新人だったので、本当に嬉しかったです。

――作者を目の前にして言いづらいかもしれませんが、原作小説を読んだときの率直な印象はいかがでしたか?

岸田:正直に言うと、私はラノベってあまり読んだことがなかったんです。だから、最初に『英雄教室』を読んだときは全部が新鮮でした。ハーレムものはあまり得意ではなかったんですけど、『英雄教室』はキャラクターひとりひとりが魅力的で、ハーレムものではなくキャラクターものとして楽しめましたし。このキャラはどうなっちゃうの? ってどんどん続きが読みたくなりましたね。

――原作小説の1巻のあとがきに「キャラクター特化型コンテンツ」と書かれていましたが、まさにそれが伝わったのですね。

新木:僕は昔からキャラクターに全振りしている作風でやっているので、自分の持ち味でいかないと、と思って。(原作がスタートした)2015年は、ちょうど世の中で「なろう系」といわれる作品や異世界モノが始まり出した頃。当時の僕は、全然それを認識していなかったですけど、『英雄教室』はたまたま「すごい力を持っている主人公が、ぬるいところに行ってスローライフをする」みたいな文脈にハマっていて。そういう文脈はキャラクター小説と相性が良いんです。キャラクターの魅力を掘り下げていく話だけに特化していけばいいので、やりやすかったですね。

――そのキャラクターの魅力を漫画で表現するために、どのようなことを意識したのでしょうか?

岸田:最低限の格好いいアクションや構図はもちろん大事だと思っているんですけど、なにより「なにが起きているかわからない」漫画にはしたくないので、わかりやすく、かつキャラクターが魅力的に映ることを第一に描きました。アクションに関しては特にそうです。止め絵も、バッと決まった瞬間とか自分が格好いいと思っているものを入れる感じですね。

新木:確かにそれで言うと、岸田さんをプッシュした理由にもつながりますね。

僕がプッシュした理由は「何が起きているのか、わかるかどうか」。それを僕は「漫画力」と呼んでいるんです。止め絵の上手い人はいますけど、漫画で一番大事なのは、絵の上手さではなくて「漫画力」だと思っていて。例えば、「今、すっげぇパンチ力で殴った」とか「攻撃を受け止めてぐっとこらえている」とか、そういう「何が起きているのか」のわかる、漫画力の一番ある人を選んだら岸田さんだったんです。

岸田:嬉しい! ありがとうございます! 今、夢かもって気分です。

(C)新木伸・森沢晴行/集英社・英雄教室製作委員会
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