硬いローファーが足に馴染んでいくように、ゆっくりと世界を広げていく。│アニメ『スキップとローファー』久留米 誠役・潘 めぐみさんインタビュー【リレー連載:第5回】
現在放送中のTVアニメ『スキップとローファー』。地味な自分に自信が持てず萎縮していた誠。でも、みつみの何気ないひと言から、苦手なチャラいタイプだと思っていた結月とも、心を開いて話をすることが出来るようになりました。今ではみつみと並ぶグループの個性派キャラとして、鋭いツッコミを入れたり、もらい物のお菓子を食べたり、オシャレを習ったり、豆乳を飲んだりしている誠ですが、彼女の作り上げた壁はまだ少しだけ残っているようで……?
十人十色、だけど、きっとあなたとの共通点が見つかる、魅力的なキャラクターたちを深掘りするべくお届けしてきたキャスト陣のリレー連載をお届け! 第5回に登場するのは、久留米 誠役の潘 めぐみさんです! 『スキロー』愛が強すぎて、時折、涙ぐみながら熱弁してくれた潘さんの熱い想いをお届けします!
あのときの自分に「ごめんね。ありがとう」
――初めて本作に触れたときの印象をお聞かせください。
潘 めぐみさん(以下、潘):ピカピカそわそわうろうろフワフワパチパチ。
――サブタイトルそのまま(笑)。
潘:みたいな感じで(笑)、本当にキラキラ輝いてて、なんて愛おしくて優しい世界なんだろうって思いました。初対面でツンケンされて、「あ、この子、苦手かも」って思った子も、中身を知っていくと「この子も愛されるべきだし、あの子も愛されるべきだな」って思えてくる。それと同時に、自分の高校時代を思い返すと、みつみたちの言葉や感情、感覚がリアルに響いてくるんですね。だから、あのときの自分に、「ごめんね。ありがとう」って言ってあげるきっかけをくれる作品だなって思います。
――人間関係でトラブルが起きても、悪い人はいないんですよね。
潘:たとえば、何か意地悪されたとしても、その人にはその人なりの生い立ちや過去があって今のこの人を形作っているんだなって考えると、許せるとまでは言わないけれど、向きあってみようと思える。自分の価値観って自分の中でどんどん培われていって、その価値観に合わないと受け入れられないって思いがちだけれど、その人は自分とは違うわけで、そこからちゃんと逃げずに向きあっていくところがこの作品のすごさであり、共感するところです。
――当初、誠はどんな子だと思われましたか?
潘:今の話にも繋がるんですけれど、誠は人見知りなんです。それは彼女が高校生になるまでの環境や体験から、「この人はこういう人だ」って相手を決めつけてしまう、というのが要因の一つなのかなと。その決めつけてしまうこと自体は、いい、悪いではなくて、彼女の分類に当てはまるケースもあったと思うんです。でも、その固定観念が彼女をがんじがらめにしてしまった。
――その印象は変わりましたか?
潘:彼女はネガティブな性格ではないんですが、他人から見た自分を意識し過ぎて、自信が持てなくなっていたんですね。でも、みつみたちと出会って、この人はみつみで、志摩くんで、結月で、ミカなんだ。自分の価値観に収めないでちゃんと個人と向き合おうと思い始めた。本人も言ってますが、こんな自分から変わりたいと思ってるし、浮かれた飲み物もおいしいと思える自分がいると気付いた。結局、誠の価値観を形作っていたのは、これまで彼女が見てきた狭い世界だったんです。
でも、それすらも悪いことだとしないのが、この作品で……。ちゃんとその誠も受け入れた上で、結月みたいに「私みたいなタイプ苦手なら、今日、無理に話しかけなくていいから」って、痛いところを突かれた気持ちになるけれど、理解してくれる人もいる。それによって、誠にその場に留まるのではなく、本当は仲良くなりたい、違う世界も知りたいんだという気持ちにさせてくれる。この感じ、自分も経験あるなって思いました。
――誠を演じる上でどのようなことに気を付けられましたか?
潘:私は演じるとき、役に自分が投影されちゃうほうなんですね。反対に、自分が役に影響を受けることも多い。ただ、これまで私が演じてきたキャラクターは、パワフルだったり、戦いの最前線に立つ子が多くて、私自身そういう性格なので、方向性が同じだったんです。「この人好き!」ってなったら懐にボーンと飛び込んでいくようなタイプ。なので、それが誠に影響しないように注意しました。
――徐々に変わっていく誠を表現される上でどのようなことを考えられましたか?
潘:タイトルになぞらえると、新品のローファーの硬い状態からちょっとずつ柔らかくなっていって、いいところにシワができて履き心地がよくなっていくような感覚を乗せられたらいいなと思って演じました。そのローファーで階段を一歩一歩順調に上がるんじゃなくて、最初のうちは、「ここで歩けば柔らかくなるかもしれない」ってぐっと踏み込んでみたけれど、「やっぱダメだったか」みたいに試行錯誤していって、その結果、かかとを潰して歩ける位に履き心地がよくなって、体が前のめりになっていった。その変化のペース配分を慎重に考えました。
――アフレコ中の出来事で、印象に残っていることはございますか?
潘:鮮明に覚えているのは、第6話の志摩くんの3段階「あー…」のシーン。あのシーンのテストのとき、終わった直後に女性陣みんなが思わず「あー…」って言ったのが印象的でした。みんなの心の声が漏れたというか、みんなの気持ちが1つになったというか……。江越さんと黒沢さんのお芝居が素敵すぎて、自分のことのようにリアルに感じてしまったんですね。
――あのシーンは観ているこちらも「あー…」って言ってましたね(笑)。
潘:あと、『スキロー』のLINEグループがあるんですけれど、江越さんがスタジオの電球を替えてくれた日、私はその場にいなかったんですが、ともよちゃんが写真をグループLINEで送ってくれたんです。その写真がブレてる上に謎アングルで(笑)、すごく『スキロー』っぽくて、なんかいいなって思いました。紀伊國屋書店(新宿本店)の階段ラッピングが『スキロー』になったときは江越さんがその写真を送ってくれて、私もすぐに行って写真をアップしたり、ともよちゃんが一緒にいた(内田)真礼ちゃんの写真を送ってきたり……。そういう関係性がすごくいいなって思いました。