この世は全部奇縁でつながっている気がします――『江戸前エルフ』の幕開けを彩る「奇縁ロマンス」で紡いだ、7周年を迎えた今だからこそ贈れたメッセージ|ナナヲアカリさんインタビュー
1巻を読んだときから共鳴するものがありました
――そんな中でニューシングル「奇縁ロマンス」が5月10日にリリースされました。まず『江戸前エルフ』のご印象などについてうかがえればと思うのですが……すっごく面白い作品ですよね。
ナナヲ:面白いですよね。あのリアルなゆるさというか……なんか、いいですよね。すれていない。この時代にあんなに優しいだけの世界があるのはめちゃくちゃいいなって思いながら毎週見ています。
――商店街の人たちが優しいし。
ナナヲ:ね、優しさしかない!
――(インタビュー時は)最新話の第7話「街の匂いは」で、ガラガラを回すときには皆さん影から見守っていて(笑)。
ナナヲ:あの場面は感動しました。そんなに愛されてるんだなって。街の人のエルダの甘やかし方がすごくいいですよね。ほっこりします。
――高耳様は神々しさがありながらも、レッドブル飲んだりVRやったり……(笑)。
ナナヲ:要素てんこ盛り(笑)。めちゃくちゃ面白い作品ですよね。
――主題歌が決まったときは作品に対してどのような印象がありましたか?
ナナヲ:最初の段階ではタイトルや絵しか知らなくて「本屋さんで見たことある」といった認識だったんですけど、読んでみたらとにかく面白くて。初見で読んだときにエルダがナナヲアカリの分身でもある“ダダダダ天使”のダ天使ちゃんにすごく通じるものがあるなと、1巻目で思っていました。だから作品に寄り添えるだろうなと思いました。
――このインタビューやこの作品をきっかけにナナヲさんを知った方に、ぜひダ天使ちゃんのこともぜひ教えていただきたいです。
ナナヲ:「ダダダダ天使」っていう楽曲からダ天使ちゃんっていうキャラクターを中心に楽曲制作することが多くて。ダメで怠惰で、ナナヲアカリを模して2次元化した女の子です。でもいろんなものに興味を持っていて。いつもポンコツなんですけど、そこに共感をみんなからもらって、逆に励まされるみたいな人もたくさんいる、愛すべきキャラクターです(笑)。私の分身なんですけど。
――まさにエルダに近いものが......ということは、ナナヲさんもエルダに近い? それとも小糸ちゃんのような?
ナナヲ:エルダに近いですね。小糸ちゃんのような存在がいると良いなと思っています。親友の女の子が、同じぐらいポンコツではあるものの叱ってくれるんで(笑)。ちょうどいい関係性です。
どんな状況でも、一歩踏み出せば悪くはない
――和ぬかさんが作られた「奇縁ロマンス」の制作についてもおうかがいさせてください。
ナナヲ:制作の基本は毎回一緒なんです。楽曲制作するとなった時に、「こういう楽曲を歌いたい」「こういうものが今の気分」ってことを簡単にまとめて、それを和ぬかさんにお伝えして。その後、簡単なデモが来てやりとりするっていう。
でも和ぬかさんとはストレートに通じ合ったので、1、2ラリーくらいでフルコーラスデモが出来上がりました。
――今回はコンセプトが分かりやすいというか。
ナナヲ:そうなんですよね。だからサウンド的にも方向性が分かりやすかったので、スムーズに進んでいきました。
――ナナヲさんからはどのようなご希望があったんですか?
ナナヲ:ナナヲが7年活動してきて……最初は「東京怖いな、嫌だな」「自分の歌をおおやけに出すの怖いな」とか思っていたんです。でも意外と全然そうじゃなかった。“案ずるより産むが易し”と感じることが最近よくあったんです。この1、2年、コロナ禍の途中からですね。
今までのナナヲのリスナーさんも、これから新しく知る人も、新しく何かをはじめることや、自分の知らない世界に踏み出してみることってちょっと怖かったり、戸惑ったりすることがあると思うんです。でも、それは悪いことじゃないし(きっとやってみたら大丈夫だよ)って。それを端的に伝えた感じですね。
――そのメッセージもサウンドも、7年目ならではという気がしています。なんといってもナナヲさんの「7(ナナ)」は特別ですから。
ナナヲ:「7」が付く日を大事にしています(笑)。そもそもミッドなテンポな曲でシングルを切るということがなかったので、サウンド的に新しいですよね。面白いものになったかなと思っています。
――今、コロナ禍で……というお話がありましたが、何かきっかけがあったんですか?
ナナヲ:いや、特にきっかけがあったわけではなくて。コロナ禍で自分と向き合う時間が長すぎたっていうのもあるんだと思います。きっとみんな、何か変わったんじゃないかな。悪い方向に変わった人もいれば、いい方向に変わった人ももちろんいると思うんですけど。悪い方向に変わった人も「それを受けてじゃあどうするか」を考えることができると思うので……ってことをひたすら考えていました。
実際ナナヲとしても、もちろんライブをはじめとしたいろいろな面でしんどいこともあったけれど、配信ライブなどを逆に考えるきっかけになったから、悪過ぎはしなかったんじゃないかって。
――歌詞の<路頭に迷わず踏み出せば案外気楽なようでした>というのは、ナナヲさん自身の気持ちとリンクしているのですね。
ナナヲ:それは真理ですね。昔だったら歌えていない言葉のような気がします。
「奇縁ロマンス」は歌っていて気持ちが良い曲
――「奇縁ロマンス」はめちゃくちゃ気持ちのいい曲ですよね。
ナナヲ:そうなんですよね。歌ってても気持ちが良いです。軽快なリズムだからすごくサラッと聴けちゃうけど、じっくり歌詞を読むとすごく良い。
――私はお恥ずかしながら「奇縁」という言葉を初めて知ったのですが、この曲にピッタリだなと。
ナナヲ:ピッタリですよね。珍しい言葉だけど、誰にでも当てはまる言葉だと思っていて。この世は全部奇縁でつながっている気がします。
――確かにいろんなものにつながりが実はあって、そしてそれが『江戸前エルフ』でも描かれていて。そのつながりを表したかのような、冒頭の<運命の赤い糸 僕と希望 繋がっていよう>っていうところがすごく好きなんですよね。
ナナヲ:そこをそう言ってくれる方が多いんです。ちょっとエッジボイスが多めの冒頭部分になっています。少しでも皆さんの心を掴めていたらうれしいです。
――掴めていると思います。レコーディングはいかがでしたか?
ナナヲ:でもかなり早かったと思うんですよね。最近レコーディング早いんですよ。
――慣れてきたということですか?
ナナヲ:たぶん作品を理解する速度が早まったんですよね。「あれだこれだ」っていう試しをその場でしなくてよくなった。今まではいろいろな種類を何回も歌って、その中から決めていたんですけど、今は1、2回歌って「あ、じゃあこっちで」と。だからかなりスムーズでしたね。
――それこそ最初に話していた自分の武器を言葉にすることができるようになったっていうのも関係しているのかもしれないですね。
ナナヲ:そうですね。自己理解が深まったなと。