自身の“離婚”をキャラクターに反映!? 大切なものを失わないと気付かないこと――『THE MARGINAL SERVICE』監督・迫井政行さん&シリーズ構成・猪原健太さん対談【連載最終回】
ジャパン澁宿という架空の世界を舞台に、≪境界人≫と呼ばれる”伝説上の生き物”が起こす事件を解決する≪マージナルサービス≫というチームの活躍と、≪境界人≫たちの謎やドラマを描いたオリジナルTVアニメ『THE MARGINAL SERVICE(ザ・マージナルサービス)』も無事にフィニッシュ!
いろいろな映画作品をオマージュし、作品から漂う外画感、演じるキャスト陣も豪華&実力派ばかりという、本作のインタビュー連載を毎回お送りしてきましたが、最終回の14回は、連載第1回と同じく監督の迫井政行さん&シリーズ構成の猪原健太さんにご登場いただきました。
シリーズを振り返ってみての感想やお気に入りのシーンをご紹介いただきつつ、前回のキャスト座談会でいただいた質問の数々にもお答えいただきました。今だから話せる秘話など、お楽しみください。
最後にブライアンとゼノの関係が逆転。言いたかったことを込めた最終話のセリフとは!?
――最終話まで終わった今の心境や感想をお聞かせください。
迫井政行監督(以下、迫井):ブライアンとゼノのバディもので、二人の絆を描いてきましたが、最初と最後で関係が逆転したなと。最初はゼノの不器用で、ブライアンが破天荒という感じでやっていこうと思っていましたが、ふたを開けてみればゼノが自分の考えや想いに固執して暴走し、それを≪マージナルサービス≫のメンバー全員で救いに行く形になって。最終的にはゼノの息子のノアを取り戻す願いも叶ったし、いい形で最後を迎えられて良かったと思います。
シリーズ構成 猪原健太さん(以下、猪原):今になって思うと、作品のテーマとしては3つあったような気がしています。1つ目は、ブライアンが最終話で叫んだ「俺はあのころの映画が好きなんだよ」という、あのころの映画への想い(笑)。2つ目は、ペックがサメのエサにされたことに対して、「お前もどこかで差別してるんだよ」と指摘したような、無自覚な分断について。
そして3つ目はゼノをはじめ、メンバーみんな大切な人を失っているなとふと思って。「何でかな?」とよくよく考えてみたら、ちょうど書いていた時期に僕が離婚をしていて、それが大きかったんだなと気付きました。そんな部分をゼノにはだいぶ反映していたけど、他のメンバーも大切な何かを失っていて、≪マージナルサービス≫は何かを失った人たち寄せ集めだったのかな、そして自分の傷はそれほど大きかったんだなと(笑)。
迫井:僕もゼノにはすごく共感できるんですよね。男の不器用さが出ていて、ぐっときました。
猪原:大切なものは失ってみないと気付かないんでしょうね……。 セオドアも大事なオカルトグッズを壊されてからああなったし。失うことで一歩を踏み出すことができるんだなと思いました。
9話で印象的なゼノの狂気の演技と熱量。サメとゾンビネタができて満足!?
――全話の中で印象深かったシーンやキャラクターを挙げていただけますか?
迫井:第9話のアフレコで、ゼノが狂気じみていって、仲間を追い詰めていくシーンがありましたが、後半になるほど狂気性が増していく、(森川さんの)演技や熱量がすごくて印象に残っています。
猪原:僕は全12話の中で、サメ回(第6話)とゾンビ回(第8話)をやれたので、思い残すことは何もありません(笑)。
あと好きなキャラクターですが、ゼノには思い入れがあります。そしてペックですね。モモンガだとかいろいろ言われてましたけど……。最初にマスコットキャラを何にしようかという話になって、僕は映画で見たマーモットやウッドチャックがいいかなと思って、結果的に良かったかなと思います。ただサイズ的にはネズミではないんですけど(笑)。
迫井:ボルツもいいキャラだったなと思います。
――当初、ボルツは脳筋キャラの予定ではなかったんですか?
猪原:ボルツとロビンは脳筋キャラでした。「『ワイルド・スピード』みたいな感じで」と言われていたので、『ワイルド・スピード MEGA MAX』に出演していたドウェイン・ジョンソンをモデルにしています。筋肉のことしか言わないので、会話をさせなくていいのが楽しかったです(笑)。