目指したい未来が一番近くにある事が剣心にとっての救いになる──夏アニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』神谷 薫役・高橋李依さんインタビュー
和月伸宏先生によって1994年から1999年にかけ「週刊少年ジャンプ」で連載された漫画『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』。数々のメディアミックス展開で人気を博した本作が新作アニメとして蘇り、いよいよ2023年7月より放送開始となります。
放送に先駆け、アニメイトタイムズではヒロイン・神谷 薫を演じる高橋李依さんへのインタビューを実施!
オーディションや収録時のエピソード、役が決まった時の出来事を改めて振り返っていただいたほか、自身の演じる神谷 薫を演じる上で最初に意識したことなどを伺いました。
緋村剣心役の斉藤壮馬さんや明神弥彦役の小市眞琴さんとの作品に関するエピソードも語っていただいた本インタビュー。ぜひ放送前にチェックしてみてください!
原作にはない和月先生による細やかな追加カットとは!?
――『るろうに剣心』は長い間愛されてきた作品ですが、高橋さんはこれまで作品に触れたことはあったのでしょうか?
神谷 薫役・高橋李依さん(以下、高橋):もちろんタイトル自体は当然知っていました。私自身は原作の連載がスタートした年に生まれた世代なので、実写映画が『るろうに剣心』の物語に触れる最初の機会になりました。
当時友達と、俳優の佐藤 健さん演じる剣心がめちゃくちゃカッコいい! みたいな話題になった事を覚えています。どこかに行ってしまいそうな儚さや、強さと危うさが同居していて、本当にこういう人物が実在していたのではないかと感じていました。
作品自体には、個々人の戦いを目撃したという印象があります。特に火に包まれる京都の光景が記憶に残っていて、教科書に出てくる歴史的な戦いの規模感を、作品を通してより身近に感じるきっかけにもなりました。
――新作アニメにあたってオーディションを受けられたそうですが、振り返ってみるといかがでしょうか。
高橋:オーディションは2021年の夏頃にありまして、新作アニメの制作はその報せで知りました。オーディション原稿には原作の該当シーンのコマが貼ってあったこともあり、原作の表情は特に意識して演じてみるのが良いのかなと感じたんです。
オリジナル作品だと自分で想像する部分も多いのですが、今回はこういう表情や場所で言っている台詞なんだというのが明確でしたし、原作を基盤にするアニメ化だという想いも伝わってきて。だからこそ丁寧に汲んでいきたいなって思ったんです。
その後、出演が決まったと聞いた時はとても驚きました。今は責任感や覚悟もあるのですが、当時は驚きが一番でしたね。私もマネージャーさんも現実を咀嚼しきれておらず、時間の経過がゆっくりに感じたことを覚えています。
事務所でスケジュール確認を済ませた後に、マネージャーさんから「ちょっとお話がありまして……」とベランダに呼び出されて。かなり深刻そうな様子だったので、「いい人だったけど、もしかして会社を辞めちゃうのか……」ってしょんぼり思っていたら、手を差し伸べて「『るろうに剣心』受かりました!」っていう報告だったんですよ。「この人辞めないの!?」と「『るろうに剣心』受かったの!?」というふたつの驚きで大混乱でした。
そもそも世代的に『るろうに剣心』はあくまで見ていた側、お客さん側の作品だという感覚が大きくて。だからオーディションを受けられただけでも驚きだったんです。
もう「受けられただけで光栄でした」みたいなある種の満足感があったので、結果を気にすることがなかったと言いますか、自分が受かる未来を予想もしていなくて……。
――その後「Aniplex Online Fest 2022」で解禁されたPV第1弾が薫の台詞が入った初めての映像だったかと思います。イベントでの裏話も伺えますでしょうか?
高橋:あの時は剣心役の斉藤壮馬さんとステージに立たせていただきました。裏で壮馬さんと「僕も緊張してるよ」なんて話していたのですが、私からするとそんな風に見えなくて。だから私の方が思う存分緊張させてもらいました。
壮馬さんとはデビュー当時からお仕事で切磋琢磨してきた仲間なので、ふたりでこの発表ステージを迎えられて本当に心強かったです。短い時間のステージでしたが、上映されだしたPVを袖で見ていて、ここから更に気を引き締めていかないといけないなと感じていました。有観客で世界同時配信だったこともあって、本当に感覚が一気に変わった瞬間だったなと。
――収録は既に進んでいるそうですが、アフレコの様子はいかがですか?
高橋:とても楽しい雰囲気で進んでいます。当初は分散収録でしたが、最近は一緒に収録できるようにもなってきたので、ほとんど掛け合いで演じさせてもらっています。アフレコの合間には作品に関するトークで盛り上がったり、本当に居心地の良い現場です。
剣心たちと敵対するキャラクターを担当される役者さんたちは、長年この業界で戦ってこられた猛者の皆様ばかりで、本当に全力でぶつからないと勝てないようなお芝居をされるんです。私たちとしては必死に食らいついているような感覚でもありますね。
それで言うと、あるキャラクターの台詞「うふふ」だったり、今後登場する敵の個性も、強く印象に残っていくと思います。中には、原作では言っていないけれども、元々言っていたかのように感じる台詞が増えていたり。原作を確認すると言っていなかったことに気付くのですが、不思議としっくりきていて。きっとそれも、和月先生が監修されていたり、スタッフの皆さんがたくさん話し合ってくださっているからなのだと思います。
もちろんこれらは役者陣の即席なアドリブではなく、台本の中に追加されているもので、今回のアニメ化にあたって先生の中で更にキャラクター性が膨らんだのか、既に多くの方に知られているキャラクターたちの魅力がまた一段と底上げされているように感じました。
他には、原作を細かく見ている方が気づくくらいのお話かもしれませんが、キャラクターたちの生活感や人生をより深く感じられるカットが増えているようでした。例えば、左之助が飴売りの横を通りがかって、ある人物を思い出したり。
キャラクターや作品には、今まで愛され続けた分の人物像がすでに固まっていると思うので、私としては必要そうだと感じたことは提案してみますが、基本的に過剰なことはしたくないと考えていて。だから先生たちが新しく差し込んでくださった描写は凄く安心するし、噛み締めながら演じられます。
――和月先生とはお会いされたのでしょうか?
高橋:はい。普段のアフレコにはリモートで参加されていますが、私たちの演技を常に聴いてくださっているので、安心して頑張れています。直接お会いしたのは、「AnimeJapan 2023」の時。黒碕 薫先生(北海道編でストーリー原案を、アニメではシリーズ構成・脚本協力を務める)と一緒に会場でご挨拶させていただけて。素敵なお土産までいただき、見守ってくださっているんだという実感をみんなで噛み締めていました。
アフレコのディレクションでは、調整室でやり取りした内容を音響監督さんが伝えてくれる形なので、誰からの指示かは基本わかりません。後に確認したところ、収録初期にイントネーションや読み方の変更などテクニカルな部分の指摘があっただけで、先生からそれぞれのキャラクター観に対してはなかったそうなんです。
だから私たちの演技をそのまま受け入れて下さっているのかなと。オーディションの段階からしっかり聴いてくださっていたとも伺っているので、そういう意味でも心強いです。振り向いたらすぐに、背中を押してくださるような感覚です。