夏アニメ『アンデッドガール・マーダーファルス』黒沢ともよさん&八代拓さんインタビュー|とてつもない台詞の数から生まれる奇妙な人間ドラマーー2023年は『アンファル』だけは見逃さないで!
シリアスなシーンもシリアスになりきらない
ーー先ほどからお話にちらほら出ていますが、特に本作はセリフが多いですよね。作品を見ていてもお二人は「すごく喋るな!」と感じました。
一同:(笑)
ーー実際、収録は大変でしたか。
黒沢:(無言で頷く)。
八代:喋れ喋れ(笑)。
黒沢:第1話はね、お兄さん(津軽)が大変でしたけど。
八代:そうですね。ただ僕の場合は、例えば、独り言でブツブツ言ってたりとか、芸事的に小噺を挟んでみたりとか、あとはアクションって感じですけど。師匠、輪堂鴉夜が一番喋るところといえば、やはり謎解きです。物量はお互いに多いときがあったりするんですけど、ジャンルは違うと思いますね。
黒沢:違いましたね。交渉と説明は私がずっと担当していました。
八代:確かに。
黒沢:あとは2人の喧嘩などで構成されていました。お互いに褒め合ったり、けなしあったり、大いにすることで、互いを鼓舞しながら収録していました。
八代:本当にそうです。僕が噛むと黒沢さんが……。
黒沢:「ヨッシャー! 噛んだ噛んだ!」って(笑)。
一同:(笑)。
八代:「イエーイ!」みたいな顔で喜ぶんですよ!
黒沢:喜ぶって決めてた(笑)。私はしーんってなる方が耐えられないんだよね。
八代:じゃあ、気遣いだったっていうこと?
黒沢:そうですよ! 当たり前じゃないですか。
八代:イラッとしましたね……!
一同:(笑)。
八代:でも、これは悪い意味じゃなくて。「くそがー!」みたいな焚きつけられるという意味です。師匠は師匠でけろっと噛むんですよ。「噛むんかい!」みたいな。
黒沢:噛む。全然噛むよ。そのときに、お返しで「イエーイ!」って言ってくれるとめちゃめちゃ救われるんです。「ありがとう」って。ただ、噛むにもほどっていうものがあって。噛みすぎると皆、心が沈んでいくんですね。そうすると、逆に皆が「いけるよ。大丈夫だよ」と。
八代:そっちはそっちで辛いよね。
黒沢:でもそのバランスにすごく救われたなって思います。本当にくじけそうなときは優しい言葉が欲しい。
八代:なるほど、確かにそうかも。
黒沢:これが面白いもので、これから話数が進んでいくにつれて、すごいベテランの先輩方も、すごい量話すときがくるんです。もう、皆噛む!
八代:人は噛む(笑)。
黒沢:「噛んでいいんだ!」みたいな。
八代:そうはならんよ!(笑)
黒沢:先輩たちはツルっとやって帰るんだろうなと思ってました。Bパートに自分の長台詞があったりとかすると、私が失敗したら申し訳ないなとか思うんですけど、皆、綺麗に噛んで、「駄目だ!読めない!」って。
一同:(笑)。
黒沢:普段私がやってることをやってくれるから、「ああ先輩!」って。
八代:ちょっと特殊ですしね。すごいワード数とともに、カット数も多いですし、割とテンポも良く、じっくりというよりもポンポンと小気味良く演出がなされていたので。だから、演者が試される現場だったと思います。
黒沢:そうですね。緊迫して挑むことももちろんできたと思うんですけど、それをやったら、固まってしまうなと思って。監督さんたちは、緊迫してやらせてくれようとしてくれてたよね。スッって感じでやらせてくれようとしてたんですけど、それに私がすごい抗って、「皆、間違えましょう!」って。めちゃめちゃ抗ってやってた記憶がありますよね。
八代:確かに。シリアスなシーンでも、この作品はシリアスになりきらない面白さがあるんですよね。
黒沢:一言あったりとかね。
八代:そう。ちょっとしたボケがあったり、“ちょける”瞬間があったり、何か最後はくだらなかったりとか、そんな良さがあります。なので、黒沢さんが作った空気がもしかしたら正しかったような気がしました。あまりシリアスになりすぎても、最後に幕が閉じないんじゃないかなって。
黒沢:いやでも本当に助けられました。たくさん楽しいことをお話してくれて。
八代:僕はヘラヘラしてるのが信条でした。この現場においては、津軽だったので。現場でも、基本的にはヘラヘラしてたいなというふうに思っていました。
黒沢:まさかこんなに私の方がヘラヘラすると思わなかった?
八代:そう!(笑)
一同:(笑)。
八代:まさか上回ってくると思わなくて。「師匠もっと愉快なんだ!」と思って。だから楽しかったです。
ーー1本取られたなと。
黒沢:お!
八代:はい。現場を通して、師匠に一本取られた。だから、まだまだ弟子ですね。
黒沢:楽しかったよね。難しかったからこそ、手を取り合って、お互いに助けられました。
八代:本当にありがとうございました。