夏アニメ『AYAKA ‐あやか‐』連載 第1回:長山延好(監督)×上村祐翔(八凪幸人 役)|キックくらいしないと対等じゃない、幸人が尽義に振り回された第1話
7月1日よりスタートしたオリジナルTVアニメ『AYAKA -あやか-』。作家集団GoRAとキングレコードがタッグを組んだこの作品は、相棒×師弟×好敵手×兄弟という関係性と、それぞれに宿命を背負った男たちの絆の物語を描いていく。緻密なストーリー、深く広い設定、魅力的なキャラクターたち……。『K』を手掛けたGoRA作品の魅力が、ここにも詰まっている。
本土の児童養護施設で育ち、10年ぶりに綾ヵ島へ戻ってきた少年、八凪幸人を演じる上村祐翔さんと、本作で監督を務める長山延好氏(『ランウェイで笑って』『うらみちお兄さん』『恋愛フロップス』『最強陰陽師の異世界転生記』ほか)に、第1話を振り返ってもらった。
実は2年前!? シナリオ段階でオーディションをした意味
――監督は、どのような段階で制作に入っていったのでしょうか?
長山延好監督(以下、長山):僕が入ったのは、GoRAさんのほうでシナリオがほぼ確定した頃で、それを読みつつ、どういう映像にしていこうかを考えていきました。島を舞台にしていて、和風テイストではあるけど、キャラクター原案はモダンなところもあったので、いろいろなバランスを考えて、美術さんと相談しながら背景美術を練り込んでいくところから始めました。
――島の美術から作り上げていったのですね。
長山:そうですね。舞台設定としては火山列島をモチーフにしていたので、東京の南にある小笠原諸島などからインスピレーションを受けようと思って、写真を集めたりしていました。
――シナリオがあったということは、そこから絵コンテを作っていく作業だったのですか?
長山:そうです。redjuiceさんのキャラクター原案まではあって、キャラのデザインは決め込まれていたのですが、それをどう動かして表情を付けていくか悩みまして、絵コンテの前段階でとしてオーディションをしました。もう2年くらい前だったと思います。
上村:かなり前でしたよね。だからアフレコが待ち遠しかったです(笑)。
――上村さんはオーディションでの思い出はありますか?
上村:オーディションではかなり緻密な資料を用意していただきました。幸人を中心とした、八凪真人(CV.津田健次郎)の弟子たちの関係性とか、綾ヵ島という現代に近いけど、現実世界とは少し離れた特別な空間での成長物語になるといったことが書かれていて、あらすじを読んでも、すごく面白そうだったんです。幸人のキャラクターを見ても想像が膨らんだので、関われたら嬉しいなと思っていました。
――それでも、オリジナルアニメとなると、原作があるものよりは手がかりは少ないですよね。
上村:資料にプロフィールやあらすじがありましたけど、オーディション時のセリフは、かなり幅広い話数から散りばめられている感じだったので、幸人なりの喜怒哀楽が出せたらいいなと思いました。絵はきれいで、アニメになってどう動くかはわからなかったので、とにかく悔いなくやろうという感じで、テープを提出したと思います。
長山:テープだとディレクションもないし、自分で想像してやっていくしかないので、難しいですよね……。
上村:そうなんです。監督とはアフレコのときもあまり話す機会がなく、ちゃんと話すのも初めてくらいなので、僕が何で幸人役になったのかも知りたかったんです。
長山:実は幸人が一番難しかったんです。というのも、私の中でイメージが固まっていなかったんですね。伊吹や鞍馬は結構個性的なキャラなのでイメージがしやすかったのですが、幸人は当時の自分の中でまだキャラがブレていました。過去に人を傷つけてしまったことで、周りと交流を持たないようにしていたんですけど、そういう陰の部分の演技が演者さんによって違っていたんです。その中で上村さんのボイスを聞かせていただいたときに、一番しっくり来たというか。芯の強さがありつつ、悩みを抱えている内面も見える。それまで自分の中ではっきりしていなかった幸人のシルエットが見えてくる感じがしまして、ぜひ上村さんでいけないでしょうかと。僕だけでなくみんなと相談してですけど、決めていきました。
上村:ありがたいです……。
長山:この人!と、イメージが決まっているキャラもありましたけど、幸人の場合はそうではなく、テープから情報を汲み取って、この方にしたいと思った感じなんです。
上村:そういうところも、オリジナル作品ならではかもしれないですね。
長山:そうですね。声が決まってシルエットが見えたことで、キャラクターの動かし方も決まり、それをコンテに組み込んでいくことができました。
――声に、悩みを抱えている感じが出ていたんですかね。
上村:まぁその自負はありますね(笑)。声の雰囲気なんですかね…。第1話だと尽義に対して、ちゃんと会話ができるのかな?くらい心を閉ざした状態からスタートしているんです。
オーディション段階では、物語の終盤で尽義に怒るところとか、本当にいろんな表情があったんです。だから第1話の収録のときは、僕なりに準備していったものを出したら、それが最終回くらいの心の開き方かもしれませんと言われたので、そこから逆算していきました。そうやって一緒に探っていく感じは、オリジナル作品ならではだったと思います。僕も、幸人をこういう人だと作りすぎずに準備していたので。
長山:オーディション段階で、その調整幅も考慮して選んだんですけど、第1話だと尽義によって心をこじ開けられるところがあるので、わかりやすくするためにも抑え気味に演じていただきました。
――尽義役は寺島拓篤さんですが、声のバランスも良かったですね。
上村:寺島さんの声をお聞きしたときに、尽義の「迷惑だけど悪い奴じゃないんだろうな」っていう雰囲気が感じられて、すごく魅力的に感じたんですよね。だからこそ、幸人も何か予感させるものがあったんじゃないかなって、掛け合ってみて思いました。
長山:オラオラだけど、優しさも入っているんですよね。
――寺島さん自身は、あまりお酒は飲まないそうですね。
上村:飲まないと言っていました。
長山:飲まない分、飲んでいる周りの人の雰囲気を分析して演技ができているかもしれないですね(笑)。
――観察はしていたかもしれないですね。尽義はほぼ酔っていますからね。
上村:顔が赤くないときも二日酔いなので(笑)。