『BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-』黒崎一護役・森田成一さん、石田雨竜役・杉山紀彰さんインタビュー 「絶望に次ぐ絶望がやってきます。もののあはれの“あはれ”さの成分の深みをさらに知っていく期間になるのかなと」
大塚明夫さんの表現力の凄みを改めて感じました
――久保先生も現場にいらっしゃったと伺いました。どのような話し合いがあったのでしょうか。
森田:特に『BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-』に関しては、原作で語らないシーン、語れなかったシーンも数多く出てきます。実際には久保先生の頭の中にあったもので。そういったところは当然ながら原作をガイドとして使えないですし、初めて経験する場所だったので、そこに関しては久保先生、田口監督含めて、ものすごく細かく話をして、質問を投げて。久保先生も「その質問がくるとは思ってなかった」と驚かれていた様子でした。とにかくディスカッションを多くしていたのが、今回のクールにおける最も印象的な出来事ですね。
初めてのことが多い中で、崩れることなく黒崎一護をやっていくことにプラスして、今まで見たことのない、誰も知らない黒崎一護を皆さんにお見せするとなったときに……より一層、黒崎一護という人物を大きく膨らませたい、というのが大きな狙いでした。
――杉山さんもお話し合いには参加されていたんですか?
杉山:僕の場合は話し合いというわけではなかったのですが、お話を聞いていて印象的だったのが……久保先生の中には描きたいことがたくさんあっても、週刊連載ですから、大きく主軸から離れすぎてしまうと、週区切りで見た時に分かりづらくなりかねないんだろうなと。
だから取捨選択して、漫画では描かれていないけれど、本当はこういうシーンや設定があるんですよ、と。それがアニメの時間軸であれば表現できるし、表現したほうがより伝わるという判断で、そういうシーンが盛り込まれていて素晴らしいんですよね。漫画で描くとすごいページ数を使っているものでも、動画にしてしまうと、数秒、数分になってしまうことが多いじゃないですか。
『BLEACH 千年血戦篇-訣別譚-』を観ていて思いましたが「確かにこのシーンを漫画に落とし込んだら、一週分を丸々使っちゃうな」と。動画の時間軸であればプラスアルファしても蛇足にならないし、話の本筋も見失わない。確かにアニメならではの良い表現なんだろうなと改めて感じましたね。
――ご自身の中で「こう来るか」、ないしは「この人には敵わないな」などと思った方はいらっしゃいましたか?
森田:現段階だと完成品を見たのは第14話、15話のみなんですけど、やはり大塚明夫さん(京楽春水役)のあの卓抜した雰囲気は本当にすごいなと。明夫さんは元々ものすごいんですけども、今回さらに……こんな言い方をするのは後輩として失礼かもしれませんが、さらに円熟味を増して「こういう表現の仕方があるのかな」と。本当に驚きました。
役者としてゾッとすると言うか。怖さもあるけどワクワク感もあります。(6月末に実施した先行上映会で)一緒の梅原裕一郎くん(ユーグラム・ハッシュヴァルト役)、武内駿輔くん(アスキン・ナックルヴァール役)という、若い世代の想像力で作っていく演技が対比としてあって。
10年という時を経て、ちょうど良いタイミングで『千年血戦篇』が作られたんじゃないかなと。今こうしてやっていくことによって、『BLEACH』の豊かなバラエティ性がいろいろな色、空気感で描かれるんじゃないかなと感じています。だからどこを切っても、見どころ、聞きどころだと。
―― 一護も大変ですよね。第1クールでは山寺宏一さん(キルゲ・オピー役)と対峙して……。
森田&杉山:(笑)
森田:山寺さんとはいろいろな作品でご一緒させていただいて。時には僕が付き人兼師匠のこともあれば、いろいろな立場でご一緒しています。その中で今回は戦う役柄になったため、山寺さんには「今回は敵だね」と言われました(笑)。「ヤバい人が敵だなぁ、なんで俺はこの人と戦うんだろうなぁ」と……。
杉山:(笑)
森田:初っ端から山寺さんかよ!と。毎回『BLEACH』は大先輩たちと戦うことになるので、慣れっ子と言えば慣れっ子なんですけどね。そのたびに衝撃的な展開になっていくのが楽しみです。
若い世代の役者さんたちは僕たちが考えられないような――むしろ、考えられないのかもしれないな、というような新しい感覚での引き出しで演技をしていて、それも僕たちにとっては活力になっています。それをどう受け取っていくのか。今まで通りの受け方をしないで、受けていけるのかも役者としての挑戦でもあるのかなと思っています。
杉山:大ベテランの方々の存在感の凄まじさをまざまざと感じることが多くて。森田さんがおっしゃられた通り、大塚さんのお芝居が、もう。総隊長になって立場が変わって、ああいう状況の中、どういうお芝居をされるのかってところで……(声を)張らなくても、これだけの存在感、威圧感、強大さがあるというのは、大ベテランならではの表現力だなと。がなったり、大声を上げたりすれば強いってものじゃない、というのを見せつけられました。
逆に若手の方たちのフレッシュさ溢れるキャラクター感も新鮮でした。中には昔の『BLEACH』を見ていた方もいらっしゃると思うんですが、幅広い世代のキャストが合わさることで、作品により幅を持たせているんじゃないかなと。長く続いている作品ならではの、良さのひとつではないのかなと思っています。
100%の月牙天衝よりもキツいものに
――森田さんに前回お話をお伺いさせてもらったときに「第1話の卍解、月牙天衝は、声の成分を30%に抑えています。まだ本気じゃない」とおっしゃっていました。今期は声の成分は何パーセントになるのかなと。
森田:第2クールでは僕はずっと修業をしているんですよ。
杉山:(笑)
森田:今までこんなに戦っていないこともないので、戦っていない一護を演じるという難しさはありますよね。だからまだ(30%以上の声色は)取っておいていいんだなと。
ただ、今まで語られなかった修業シーンの収録は、100%の月牙天衝よりもキツいんじゃないかなというくらい、相当キツかったですね。さきほどお話した通り、知らないところを描くということと、修業シーンが持つ本当の意味がある。その説明を受けてから演技をすると、この修業シーンってものすっげぇ重いんだなと……。月牙天衝を一発打つよりも緊張したかもしれませんね。
――現段階だと未知の部分も多いので、森田さんがおっしゃる、本当の意味というのも気になるところです。
森田:そう、未知なんです。でもものすごい秘密が隠されています。それをわかった上で第14話を再度見るとびっくりしますよ。このシーンってこういう意味なのか、と。その伏線を知ったときの驚きはすごいと思うので、最後まで楽しみに見ていただけたらなと思っています。
――“星十字騎士団(シュテルンリッター)”サイドに雨竜が加わったこともあり、ポジションの変化も踏まえて杉山さんにお話を伺いたいです。
杉山:実は……雨竜も出ていない話数も多いんです。第2クールは、今まで登場したキャラクターたちに改めてフォーカスが当たったり、乱戦のときにどういう活躍をしていたのかだったり、細かくスポットが当たっています。
あれだけ個性あるキャラクターたちがいる中で「あのキャラクターはこの時なにしてるの?」となるのは勿体ないじゃないですか。そういうところを丁寧に拾ってアニメ化してくださっています。原作に出てくるいろいろなキャラクターのファンの方たちも楽しめる作りになっているのではないでしょうか。
――楽しみです。
森田:物語の主軸になっている一護と雨竜の話というところは、大きなトピックスにはなるんですけども、それ以外のキャラクターにも濃い物語があるので……それだけ見てもお腹満腹以上。お腹が破裂するよ?ってくらいの物量なんですよね。込められているメッセージに関してもそうですし。物語の厚さ、深み。そこでしょうね、ポイントは。