血の通った人間としての須堂、その感情を嘘偽りなく演じたかった│アニメ『AIの遺電子』須堂 光役・大塚剛央さんインタビュー【連載第2回】
見る人によって感じ方、捉え方が大きく変わると思います
――須堂というキャラクターについては、わりとすぐに掴めましたか?
大塚:やはり第1話で彼に人間味があることを知れたのは大きかったです。そこから第2話、第3話と進んでいくにつれて、ヒューマノイドやAIに対するスタンスも見えてきたので、そのときに見えた須堂のいろいろな側面を大事に汲み取るようにしました。
須堂は相談されるケースによって、対処の仕方が変わるんです。内容によっては例えば医療の出番じゃないと答えることもあって。彼の中で「できる、できない」、「いい、悪い」がちゃんとあるので、患者さんとのやりとりを重ねていく中で「これは許せることなんだな」、「これはできないんだな」と、だんだん掴めていったという感じです。
――物語の内容は私たち視聴者も考えさせられるものばかりですよね。
大塚:アニメも原作同様にオムニバス形式で進んでいき、それぞれにテーマがあり伝えたいことがあり、しかも想像の余地を残した終わり方が多いので、見る人によって感じ方、捉え方が大きく変わると思います。それがこの作品の面白いところですね。
――第2話では、マサとジュンという陸上部の生徒のお話が描かれました。須堂は伸び悩むジュンの背中を押すようなセリフを結構言っていましたよね。
大塚:医者としてどう患者さんと接するかは医者の数だけありますし、須堂も患者さんそれぞれにどう接するか完璧な答えは出せないと思うんですが、須堂のセリフからは患者さんに寄り添い、励まそうとするのは決して社交辞令ではなく、本心なのだろうなと思いました。いろいろ考えた中で励ましたくて励ますという答えに行き着いたのなら、そこは嘘偽りなく演じたいなと。
ジュンのレースを観にいったときの「……今の世界だって捨てたもんじゃないさ」というセリフもすごくいいなと思いました。原作で読んだとき以上に、現実世界にもっと希望を持っている感じがして。彼自身もつらい過去を抱えているんですが、それでも今の世界を「捨てたもんじゃない」と肯定的に受け入れている。そういう部分での彼の人間味は、演じるうえでも大きなキーポイントになっています。
――第3話ではケンジとポッポ、シズカとジョーという二組の関係性が描かれました。
大塚:先ほどもお話ししたように、「これはどっちなんだろう?」と考えさせられるお話ですよね。ポッポの言葉はプログラムなのか、それともヒトと一緒に接していく中で出てきた言葉なのか。人によっては感情が宿ったと考える人もいれば、そうじゃないという人もいると思うんです。ジョーの話にしても、シズカと別れたときにどんな感情があったのか。あるいは本当に何もないのか。言葉で語らずに余韻を残して終わるのが、この作品らしいなと思いました。
――須堂はケンジやシズカの悩みを変に否定したり、全肯定したりしないですよね。
大塚:彼自身の中には答えがあるのかもしれませんが、あくまでも客観的な立場から説明するんです。自分はこう思うけれど、でも事実としてはこうだから、それを踏まえて考えてほしいといった感じに。人間味や感情だけではなく、医者らしい冷静な部分もあるのが信頼される理由なのかなと思います。
――須堂をサポートするリサの印象はいかがですか?
大塚:見た目はとてもかわいらしく、元気で明るい性格ですが、決してキャピキャピしていないところが面白いなと感じました。かわいさが一番の魅力ではないというか。看護師として須堂をしっかりサポートする一方で、彼女もまたヒトと変わらない悩みを抱えているのが大きいのだと思います。それを宮本(侑芽)さんが自然なお芝居で表現されたことで、等身大のヒューマノイドという魅力的なキャラクターになったのかなと思いました。
――リサが須堂に好意を寄せているような描写もよく出てきますが……。
大塚:そうですね(笑)。2人のやりとりはこれからも結構出てきますので、2人がどうなるのか、須堂はリサをどう思っているのか、引き続き楽しみにしていただけたら嬉しいです。
――宮本さんとの掛け合いはいかがでしたか?
大塚:宮本さんとはメインキャラクター同士でご一緒するのは初めてでした。基本、毎回掛け合いでやらせていただいていて、自然なお芝居が心地よくてとてもやりやすいです。リサというキャラクターがすっと入ってきました。
ヒト、ヒューマノイド、そしてロボットが共生するにあたって絶対にぶつかるであろう問題がリアルに描かれている
――須堂の大学の同期であり、MICHIの運用の審査メンバーに誘ってきたカオルについてはいかがですか?
大塚:カオルは勝手知ったる仲ではあると思うんですが、須堂と進む方向が少し違っています。それでも別にカオルを否定したりせず、自分は違う道を行くというスタンスで接しているのが大人だなと感じます。干渉しすぎない割り切った関係というか。この関係がどうなっていくのかも注目していただきたいです。
――ちなみに、大塚さんはヒューマノイドとの共生は可能だと思いますか?
大塚:難しいですね……。『AIの遺電子』の世界は決まり事がちゃんとあるので、そういったルールや倫理観が最初から根付いているのであれば、当たり前のように共生できると思います。ただ、今この世界にヒューマノイドが誕生しました、目の前の人がそうですとなったら、「この人は本心からそう思っているのかな」、「そもそも、心はあるのかな」とか余計なことを考えちゃいそうです。それこそ、現時点でもAIとどう共生するかのような話題、問題がありますから。
――そうですね。確かに、共生までのプロセス、認識の変化が重要な気がします。
大塚:『AIの遺電子』は何十年も先の話ですが、どのぐらいの問題があって、それをどのように解決して、ヒューマノイドと暮らす世界になったのか。そういった背景もすごく気になります。
――ありがとうございます。では、第4話以降の見どころを教えていただけますか?
大塚:第3話までオムニバス形式で進んできたように、第4話以降もエピソードごとに主軸となるヒト、ヒューマノイドがどんどん変わっていきます。第1話のようなシリアスなお話もあれば、恋愛が絡んだクスッと笑えるようなお話もあるので、ぜひすべてのエピソードを楽しんでいただけたら嬉しいですね。どのお話にも共通するのが、ヒト、ヒューマノイド、そしてロボットが共生するにあたって絶対にぶつかるであろう問題がリアルに描かれていることです。それぞれのお話でメッセージが違ってくるので、ぜひいろいろと考えてみてください。よろしくお願いします。
TVアニメ『AIの遺電子』作品情報
放送・配信情報
2023年7月7日よりMBS・TBS・BS-TBS ”アニメイズム”枠ほかにて放送中!
■放送情報
MBS:毎週金曜日 25:53~
TBS:毎週金曜日 25:53~
BS-TBS:毎週金曜日 26:30~
AT-X:毎週日曜日 23:30~
【リピート放送】毎週木曜日 29:30~ / 毎週日曜日 8:30~
RKK:毎週金曜日 26:23~
■配信情報
U-NEXT、アニメ放題、dアニメストアほか、各配信サイトでも配信中!
・7月7日より 毎週金曜日26:25~ 配信開始
U-NEXT・アニメ放題
・7月11日より 毎週火曜日24:00~ 配信開始
dアニメストア
・7月14日より 毎週金曜日22:00以降 順次配信開始
ABEMA・Amazon Prime Video・DMM TV・Hulu・FOD
バンダイチャンネル・ニコニコチャンネル・MBS動画イズム
TVer・Lemino・WOWOWオンデマンド・クランクイン!ビデオ
Google Play・J:COMオンデマンド・auスマートパスプレミアム
TELASA・milplus(みるプラス)・HAPPY!動画
イントロダクション
これは、私たちの未来の物語――。
21世紀に始まったAIの圧倒的な進歩は、社会の発展に寄与する一方、高い知性を持つ機械を道具として使う是非を、人類に突きつけた。
そして22世紀後半。
人々は「産業AI」とは別格の存在として、人権を持った「ヒューマノイド」を当たり前に受け入れ、共に暮らしている。
須堂光は、ヒューマノイドを治す新医科の医者として、ヒトとAIの共存がもたらす「新たな病」に向き合っていく。
時に、裏の顔も使いながら……。
キャスト
須堂 光:大塚剛央
樋口リサ:宮本侑芽
ジェイ:岩中睦樹
カオル:高森奈津美
スタッフ
原作:山田胡瓜(秋田書店「少年チャンピオン・コミックス」刊)
監督:佐藤雄三
シリーズ構成・脚本:金月龍之介
キャラクターデザイン・総作画監督:土屋 圭
サブキャラクターデザイン:尾崎智美
色彩設計:中内照美
美術設定監修:矢内京子
美術設定:田中 涼
美術ボード:河野 羚
撮影監督:畑中宏信(グラフィニカ)
モニターグラフィックス:加藤道哉(サイクロングラフィックス)
編集:塚常真理子
音楽:大間々 昂、田渕夏海
音響監督:小泉紀介
音響効果:山谷尚人(サウンドボックス)
音楽プロデューサー:水田大介
音楽制作:日音
音響制作:Bit grooove promotion
アニメーション制作:マッドハウス
製作:AIの遺電子製作委員会2023
主題歌情報
オープニングテーマ:「No Frontier」/Aile The Shota
エンディングテーマ:「勿忘草」/GReeeeN