『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』 黒沢ともよさん×安済知佳さんインタビュー|今回の久美子と麗奈は、また一つ階段を上ったような、“粘度の高い”関係性!?【スタッフ&キャスト短期連載:第2回】
2015年4月から放送された第1期と、2016年10月から放送された第2期それぞれの総集編に加え、スピンオフの『リズと青い鳥』を含む4本もの劇場版が制作されてきた大人気シリーズ『響け!ユーフォニアム』(原作:武田綾乃)。
2019年4月公開の『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』以来、約4年ぶりとなるファン待望の新作がついに完成。作品集『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話』に収録されている人気エピソードをアニメ化した完全新作中編『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』が、2023年8月4日(金)から全国74館の劇場で上映されます。
今回のストーリーでは、北宇治高校吹奏楽部でユーフォニアムを担当する2年生の黄前久美子が、3年生の引退後、新部長に就任。まだ慣れない役割に戸惑いながらも、12月に開催される小編成によるコンテスト「アンサンブルコンテスト」の代表チームを決める校内予選に向けて、大勢の部員たちをまとめようと奮闘していく姿が描かれます。
アニメイトタイムズでは、本作のスタッフ&キャストへのインタビュー連載企画を実施中。監督&副監督対談に続く第2弾では、主人公の黄前久美子を演じる黒沢ともよさんと、ドラムメジャーとして部長をサポートする高坂麗奈を演じる安済知佳さんの対談。久々の『響け!ユーフォニアム』への思いなどをたっぷりと語ってもらいました。
前回の記事
『アンサンブルコンテスト』は“恩恵”。アフレコを経て『久美子3年生編』がより楽しみに
――本作では、新部長として奮闘する久美子と、ドラムメジャーとしてそれを支える麗奈たちの姿が描かれています。先に発表されていた『久美子3年生編』(テレビシリーズ第3期として制作予定)の前に、このような物語が制作されることについては、どのように感じましたか?
黄前久美子役・黒沢ともよさん(以下、黒沢):実は、原作の中にあるいくつかのエピソードは、アニメにできないまま、ここまで来ているんです。ドラマCDとして出しているものもあるんですが、「素敵なお話だから、アニメにできたらな」って思うお話が今までいっぱいありました。
今回の『アンサンブルコンテスト』では、(釜屋)つばめちゃんが初めてメインの一人として描かれるのですが、渋くて、粋で、すごく良い話なんです。なので、あの素敵な話を演じられて、映像化して残せることがすごく嬉しかったです。
高坂麗奈役・安済知佳さん(以下、安済):本格的に久美子が部長として始動する『久美子3年生編』の前に、「久美子が部長になりました。さあ、どうやっていくのかな」という時期のお話を観れたのは、視聴者目線として嬉しかったです。あと今回は、完全に久美子とつばめちゃんのお話だと思っていたのですが、想像以上に麗奈も関わってきたので嬉しかったです。
それと、ある意味『3年生編』に向けて助走をさせてもらえたような気持ちもあって。
――単独の作品として作り上げるだけでなく、『久美子3年生編』に向けての良い準備段階にもなったということですね。
安済:最初に『アンサンブルコンテスト』の制作が決まったときは、「演じるのが少し怖いな」って思ったんです。
黒沢:何が怖かったの?
安済:やっぱり、めっちゃ久しぶりの麗奈さんだから、ちゃんと高坂麗奈になれるのかなって。
――長年、演じてきた役柄でも、久しぶりにアフレコをするとプレッシャーを感じるものですか?
安済:プレッシャーはありました。私たちが初めて『ユーフォニアム』のアフレコをしたのは、もう7、8年前。そのときの私は等身大で(高校1年生の)高坂麗奈を演じていたので、いろいろな経験を積んだ今の私が、まだ高校2年生の麗奈を等身大で演じるのは、さすがに難しいかなって……。
といっても、当時、等身大で演じたこと自体は悪いことではないと思っていて。だからこそ、あの時の高坂麗奈を表現することができたと思うんです。今、演じるにあたって、(8年分の)経験値を削ぎ落として演じるのか、経験値を使って演じるのか、どうしようかなって思ったりもして。すごく悩んだ記憶があります。
黒沢:結果的には、どうなったの?
安済:開き直って現場に行った(笑)。
黒沢:ははは(笑)。
安済:『ユーフォニアム』って、アニメのアフレコがなかった時期もイベントやドラマCD収録とかの稼働があって。役者陣とも、制作陣とも、すごく信頼関係が築けていると思える現場なんです。なので、現場に行って、自分のできることを一生懸命やれば、みんなが引っ張り出してくれるというか。「みんなが高坂麗奈にしてくれるんじゃないかな」って気持ちでした。予想通り、音響監督の鶴岡(陽太)さんからは「渋い」って言われたけど(笑)。
黒沢:言われてたっけ(笑)。
安済:たぶん「大人になっちゃってる」ということを私に伝える術として、そう言ってたんだと思う。もしかしたら、ちょっと技術面とかが見えちゃってたりもしたのかも。
黒沢:ああ、「こすい(ずるい)」みたいな意味で言ったのかな。
――鶴岡さんは、「技術で上手いことやろうとしてる」みたいなニュアンスで仰ったのかもしれませんね。
安済:たしかに、そうかもしれません。昔は、ただ必死にセリフを喋っていたのに、その頃よりは多少、台本の読み方とかが分かってきた今は、どうしても「こういう演出で、ここでカット割りがあって、SEはこうで……」とか考えちゃうんでしょうね。もちろん、本番中は、麗奈として皆さんと会話をすることを一番大事にしているつもりですが、どこかに出ちゃっていたのかな。鶴岡さんは、上手いこと高坂麗奈に戻そうとして、いろいろな言葉をかけてくださったんだと思います。それで最終的には、大丈夫になったはず……です。たぶん(笑)。
黒沢:鶴岡さんは、アフレコが始まる前に「この恩恵を享受しよう」って仰っていたんです。
――“恩恵”ですか?
黒沢:「商業の作品作りで、こんな風に2.5期的な話をしっかり作れる機会は、滅多にないので。この恩恵を存分に享受して、みんなでいっぱい試行錯誤して『久美子3年生編』に向かおう」みたいなお話をされていました。
安済:私は、まさに、その恩恵を目いっぱい受け取らせてもらいました(笑)。『アンサンブルコンテスト』の収録をする前は、『アンサンブルコンテスト』も、『3年生編』も、楽しみではあるけれど、心配な気持ちの方が少し強かったんです。でも、『アンサンブルコンテスト』を経た今は、『3年生編』については、楽しみな気持ちの方が勝っています。
黒沢:そうなんだ。
――試行錯誤を経て、手応えを感じられたということですね。黒沢さんも、久しぶりに黄前久美子を演じることの怖さや苦労はありましたか?
黒沢:私は、アニメの収録が無かった時期も、ナレーションなどで『ユーフォ』の音声収録がちょこちょこあって。「そして、次の曲がはじまるのです」の一言だけだったりもしたんですが、久美子としてセリフを言って、(スタッフからの)フィードバックをもらえるという機会があったので、苦労みたいなことはあまり感じませんでした。
とはいえ、私も(第1期などは)当時の等身大で演じていたので、多少の変化はあるだろうなって思いながら演じたんです。でも、予告の映像を観たら、意外と昔の声と変わっていないように聞こえて原作の武田(綾乃)さんと、脚本の花田(十輝)さんの書かれたセリフが、本当に(キャラクターの)アイデンティティのこもったものなんだな、足腰が強いセリフなんだな、ということを改めて実感しました。
――セリフ自体が、しっかりと久美子の言葉になっているわけですね。
黒沢:そういう意味では、そこに甘えてしまっているのかもしれないですが、「久美子ではない」みたいなディレクションは、あまり言われなかった気がします。ただ、今日の取材の段階ではまだ完成版を観ていないので、実は「自分、大丈夫だったかな?」という気持ちは、(収録前よりも)今の方があるんです。でも、そういう不安よりも、現場の雰囲気がとにかく良かったことがすごく印象に残っていて。
安済:雰囲気良かったね。
黒沢:すごく温かくて。みんなそれぞれ、ちゃんと自分の仕事をして、お互いに心地いい配慮もあって。たぶん、長くやってる作品だからこそ、みんな「前よりもさらに良くしよう」みたいな意識があるんだと思います。それが現場作りにも、すごく活かされていて。穏やかだけど、ストイックにみんなで良いお仕事をしよう、という心地良さのある現場で。みんなでフォローし合うことで、一人が頑張るよりも良いものができる、みたいな良さがありました。
安済:トゥッティ(全員での合奏)じゃん!
黒沢:本当だ! トゥッティだ! 「トゥッティ!」(第1期エンディングテーマで、二人もCVとして歌唱を担当)の時より、さらにトゥッティしてました(笑)。