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『特別編 響け!ユーフォニアム』松田彬人(音楽)インタビュー【スタッフ&声優 短期連載:第3回】

『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』音楽・松田彬人さんインタビュー|成長していく久美子たちを表現するために、劇伴も“新しさ”を追及!【スタッフ&声優 短期連載:第3回】

吹奏楽曲「フロントライン~青春の響き~」は歌物みたいな構成にした

――劇伴とは別に、久美子たちが管打八重奏で演奏する「フロントライン~青春の響き~」(以降、「フロントライン」)も松田さんの手掛けられた新曲ですね。こういった吹奏楽の曲と劇伴は、同じタイミングで発注が来るのですか?

松田:吹奏楽曲の方がかなり前から動いています。制作に時間がかかるというのもありますし、演奏される皆さんやスタジオの都合を合わせる必要もあるので。

――では、本作のための音楽としては、「フロントライン」が最初に作られた曲になるのですね。この曲については、どういったオーダーがあって、どのようにイメージを膨らませていったのでしょうか?

松田:最初は、同じ楽器編成での参考曲、吹奏楽のアンサンブルコンテストの曲があって。その方向性で「命の躍動」をテーマの曲を作りたいといった話だったんです。でも、参考曲通りにそのまま作るのもあれだなと思って、僕なりの解釈で、今までの『ユーフォ』ではやっていなかった和風な曲で出してみたら、全ボツになってしまいまして。監督たちは、どういう音楽を目指しているのかを確認したところ、特に想像している完成像はないみたいだったので、こちらからどんどん提案していこうと思い、次はドラマとかのテーマ曲になっているような、ちょっとメロディアスな方向で出してみました。ですが、それも違ったみたいで。

――劇伴とは正反対に、難航したのですね。

松田:それで、監督たちサイドでどういう曲が良いのかを話し合ってもらった結果、欲しいのはバンドみたいな曲ということだったので、いくつか参考曲を出してもらいました。それを参考に、かなりポップにまとめる感じになっていきました。あと、実際のアンサンブルコンテストで演奏されるような、いかにアンサンブルしているかがよく分かるような曲ではなく、一般の人たちがパッと聞いて「あ、明るくてかっこいい曲だね」みたいな感想を抱くキャッチーさ。すごくライトな感じを目指していたということで、ああいう曲になっています。

――作中の校内選抜オーディションで、一般投票1位になった曲というところが重要だったわけですね。その方向性が見えた後は、どのように組み立てていったのですか?

松田:この曲は、歌物みたいな構成にしました。もちろん、マリンバとユーフォ(ユーフォニアム)が活躍しているパートはあるのですが、AメロがあってBメロがあって、サビがあってみたいな。そういう構成の方が分かりやすいのかなって。それで出してみたらOKだったので、ああいった曲になりました。

――ちなみに、吹奏楽の演奏曲で全ボツというのは、過去にもあったのですか。

松田:はい、あります。なんなら、この後の『久美子3年生編』の曲でももうありました(笑)。

――吹奏楽曲のレコーディングでは、松田さんからは、演奏者の皆さんにどういったことを伝えているのですか?

松田:レコーディングの前には、もちろんリハ(リハーサル)があって、リハの時、主に皆さんとお話をされるのは、音楽プロデューサーの斎藤(滋)さんで、「こういう場所で、こういう感じで演奏するシーンに使われます」みたいなイメージも伝えてくださっています。僕から、より音楽的な「トランペットは、こういう風な解釈で」みたいな話をすることもあるんですけどね。

――レコーディングの回数を重ねることで、皆さんとのやり取りもよりスムーズになってきていますか?

松田:はい、スムーズにできていると思います。シリーズの最初の頃は、楽団の皆さんもけっこう遠慮をしていて。「失敗しました」とかも言いづらかったようで、収録が終わって、僕らが「よし、できたー」とか言ってる時に、指揮者の大和田(雅洋)先生のところに来られて、「ここ大丈夫でしたか?」って確認しているというようなことも多かったんですけど(笑)。今はそういうことも減ってきています。

あと、今回のサントラには、過去の劇伴を吹奏楽アレンジした曲も入っているんですが……

――Disc3に7曲も収録されていますね。

松田:その演奏をしてくれたメンバーの中に、テレビシリーズから観てくれていた方がいらっしゃって。「ずっと、松田さんの劇伴を吹奏楽でやりたかったんですよ」って言ってくれたんです。すごくありがたいなと思いました。

劇伴の吹奏楽アレンジは、コンサートでの演奏を意識

――完成した映像を観た時の感想を教えてください。

松田:自分としては、どうしても「どうだったかな? 大丈夫かな?」と思ってしまいますね(笑)。でも、評価は観て下さった皆さんがしてくださること。僕としては、想定通りになっていました。

――では、2回目、3回目と劇場へ行く予定の方々に、ぜひ、ここを意識して聴いて欲しいと思うようなポイントがあれば教えてください。

松田:難しい質問ですね(笑)。でも、この10曲の中で特に思い入れがあるのは、やっぱり「アンサンブルの息づかい」になります。盛り上がるシーンとは言われたけれど、音楽では、あえて、そんなに盛り上がってはいないわけで。アンサンブルの神髄の話というか、息で合奏を合わせるみたいなアドバイスをしているシーンに対して、劇伴では今にも壊れそうな危険なことをやっている。そのアンバランスさはけっこう面白いと自分では思っています。ファンの皆さんにとってどう映るかは、僕には分かりませんが。

――本作は、『響け!ユーフォニアム』ファンにとっては、4年ぶりとなる待望の新作ですが、松田さんにとっては、どういった意味を持つ作品になりましたか?

松田:言葉は変ですが、「準備体操」みたいな作品ですね。

――本気でやった「準備体操」ですね。

松田:そうですね。次の第3期に向けての布石でもあるので、ここで得られた反応や感想を元に、第3期でどこまでやっていこうかなというジャッジができる作品になったかなと思います。

――発売中のサントラについても聞かせてください。先ほども少しお話に出たDisc3の吹奏楽アレンジの劇伴ですが、何曲かをメドレーにして収録している曲もあります。どのような経緯で、これらの曲は生まれたのでしょうか?

松田:最初、サントラについての会議をした時、(CD1枚分で)7曲ぐらいは欲しいよねという話があって。それに、だいたいの劇伴は1曲が1分半から2分半ぐらいしかなくて短いんです。そうすると、後々、この曲を実際のコンサートで演奏することになった時も短すぎるんですよ。なので、僕の方から「例えば、学園生活の曲だけで、まとめて1曲にしたらどうですか」という提案をさせていただいて。何曲かはメドレーになりました。

――最初から吹奏楽コンサートで演奏することも想定してあったのですね。ご自身の作った劇伴の曲を吹奏楽の曲にアレンジするという作業もなかなか機会のないことだと思うのですが、作業をしてみての感想を教えてください。

松田:すごく楽しかったです。細かいオーダーとかはないので、自分の好きな通りにできますし(笑)。それに、実際の劇伴では別の楽器、例えば、エレクトリックピアノを使っているところの音色をどうやって表現しよう、とか考えるのは面白かったです。

――Disc3の収録曲の中で、吹奏楽アレンジによって、特に印象的な変化が生まれた曲などはありましたか?

松田:例えば、学園生活の曲(『日常~「新天地」「純心」より~(Wind Orchestra Ver.)』とかは、オリジナルの劇伴が祭りみたいな楽しい雰囲気の曲なので、あえて小さい音のところがあったと思ったら、急に大きい音のところもあってみたいに、コンサートを意識した演奏にもなっていて。そういう遊びもあります。

――他の曲に関しても、コンサートでの演奏を意識したアレンジになっているのでしょうか?

松田:そこは、ものすごく意識しています。やっぱり、いろいろな曲があった方がコンサートでも飽きないので。

――最後に、サントラのおすすめポイントを教えてください。

松田:劇伴を聴くことによって、この作品のいろいろなシーンを思い出してもらえるかと思います。それに、オリジナル曲以外に、有名な曲もいっぱい入っているので、吹奏楽に触れる良い機会にもなるんじゃないでしょうか。劇伴の吹奏楽曲も、印象深い曲ばかりのチョイスになっているので、「いつかコンサートで聴けるんじゃないかな」みたいなワクワク感も感じてもらえたら良いなと思っています。

[取材・文/丸本大輔]

オリジナルサウンドトラック

発売日:2023年8月4日(金)
音楽:松田彬人
価格:【通常盤】4,400円(税込)
アニメイト特典:L判ブロマイド

【INDEX】
◆Disc1
01. 慣れない舞台
02. ゆれる心棒
03. 泣いてるの?
04. ささやかな自覚
05. コンテストに向けて
06. たゆたう歩み
07. 一番がいいでしょ
08. 懐かしいやりとり
09. アンサンブルの息づかい
10. ステップをひとつ越えて
11. オーメンズ・オブ・ラブ
12. フロントライン~青春の響き~
13. メヌエット
14. フラワー・クラウン
◆Disc2
01. アルヴァマー序曲
02. トランペット吹きの休日
03. ノアの方舟
◆Disc3
01. はじまりの旋律(Wind Orchestra Ver.)
02. 日常〜「新天地」「純心」より〜(Wind Orchestra Ver.)
03. 一途な瞳(Wind Orchestra Ver.)
04. コンクール〜「微かな光」「青春の苦悩」「重なる心」より〜(Wind Orchestra Ver.)
05. 意識の萌芽(Wind Orchestra Ver.)
06. そこに兆しは存在する(Wind Orchestra Ver.)
07. テーマ〜「運命の流れ」「去来する想い」より〜(Wind Orchestra Ver.)

『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』作品情報

2023年8月4日 劇場上映!

THEATER

全国74館にて上映。最新情報は下記ホームページをご確認ください。
https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=eupho

INTRODUCTION

新世代、スタート!

京都アニメーションが描くのは、吹奏楽に懸ける高校生たちのささやかだけれど“トクベツ”な青春!

武田綾乃の小説「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話」(宝島社)から、人気エピソードを中編アニメーション化!

強豪吹奏楽部の新部長、はじめての大仕事は部内の“調整”!?

総勢65人の吹奏楽部。

主人公・久美子の部長としての日々は、部員たちから舞い込む相談と勃発するトラブルで幕を開ける。

無事に初仕事をやり遂げることができるのか──。

チューニング、OK!

STORY

新部長・久美子を待っていたのは、アンサンブルコンテスト――通称“アンコン”に出場する代表チームを決める校内予選だった。

無事に予選を迎えられるように頑張る久美子だが、なにせ大人数の吹奏楽部、問題は尽きないようで……。様々な相談に乗りながら、部長として忙しい日々を送っていた。

部員たちがチームを決めていくなか、肝心な久美子自身はというと、所属するチームすら決まっていなくて──。

STAFF

原作:武田綾乃
(宝島社文庫『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話』)
監督:石原立也
副監督:小川太一
脚本:花田十輝
キャラクターデザイン:池田晶子
総作画監督:池田和美
楽器設定:髙橋博行
楽器作画監督:太田稔
美術監督:篠原睦雄
3D美術:鵜ノ口穣二
色彩設計:竹田明代
撮影監督:髙尾一也
3D監督:冨板紀宏
音響監督:鶴岡陽太
音楽:松田彬人
音楽制作:ランティス、ハートカンパニー
音楽協力:洗足学園音楽大学
演奏協力:プログレッシブ!ウインド・オーケストラ
吹奏楽監修:大和田雅洋
主題歌:TRUE「アンサンブル」
アニメーション制作:京都アニメーション
製作:『響け!』製作委員会
配給:松竹ODS事業室

CAST

黄前久美子:黒沢ともよ
加藤葉月:朝井彩加
川島緑輝:豊田萌絵
高坂麗奈:安済知佳
塚本秀一:石谷春貴
釜屋つばめ:大橋彩香
中川夏紀:藤村鼓乃美
吉川優子:山岡ゆり
鎧塚みぞれ:種﨑敦美
傘木希美:東山奈央
久石 奏:雨宮 天
鈴木美玲:七瀬彩夏
鈴木さつき:久野美咲
剣崎梨々花:杉浦しおり
滝 昇:櫻井孝宏

公式サイト
公式ツイッター(@anime_eupho)

(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
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