夏アニメ『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』第9話放送後 アンペル役・野島裕史さんインタビュー|30代の頃には、今のアンペルは出せなかった――キャラクターとの出会いはタイミングも大事【連載第10回】
3年ぶりの大人数のアフレコで新人みたいに戸惑った
――本作のアフレコスタジオは、どのような雰囲気なのでしょうか? 印象的なエピソードなどがあれば教えてください。
野島:比較的、メインキャラの人数も少なく、「今日は誰がいるんだ?」みたいなことも少なく同じメンバーで回っている現場なので、ちょっとしたファミリー感のある雰囲気で収録できています。とはいえ、収録が始まった時は、コロナ対策のためにできるだけ少人数で録っていたので、大人チームと子供チームに別れて録ったり。アンペルとライザがすごく会話をする回では、僕もライザと一緒に録るみたいな形で収録していました。でも、何話の収録だったかは忘れてしまったのですが、コロナも収まってきて、メインキャストはほぼ全員揃って録れた回があったんです。その時、3年ぶりに2本のマイクの前で移動しながら収録したんですよ。
――コロナ以前のスタジオでは、キャストの人数よりもマイクの数が少なく、キャストさんが入れ替わり立ち替わり、マイク前と自分の席を移動しながら収録するのが普通でした。ただ、コロナ禍では、スタジオに入るキャストの人数を絞り、一人一本のマイクがある状態で収録していたそうですね。
野島:はい。言ってしまえば、僕らにとっては、普通の収録を久々にできたので、すごく印象に残っています。
――以前、音響のスタッフさんから、コロナ禍にデビューした新人声優さんは、そういったマイクワークなどが苦手だったりするとも聞きました。
野島:いやいや、新人がというより、久しぶり過ぎて僕も「あれ? どうやってたっけ」ってなりました。中堅どころのはずなのに(笑)。1回演じた後でダメ出しがあってセリフをやり直す時、前回入ったマイクと同じマイクに入った方がミキサーさんが作業しやすいんですね。だから、僕らは、どのセリフの時にどのマイクに入ったかを覚えてるものなんですけど、そんな気づかいのことも忘れてて。「あれ? このセリフはどのマイクだったっけ?」ってなりました(笑)。
あと、マイクに入る時も共演者の動きを先読みして、自分はどのマイクに入るべきかを考えるんです。例えば、この人は今はめっちゃ喋ってるけど、このセリフの後はしばらく出てこないから、このマイクに入ろうとか。自分のセリフの何秒前くらいに(マイク前から)出て行って、何秒後に入ってくるんだなとか、演技の他にいろいろと難しいことを考えてるんです。
その意識が全く無くなっていて、「どのマイク入ろう。あ、みんな入ってる!」って本当に新人みたいに戸惑いました(笑)。
――では、その回のアフレコでは苦戦したのですか?
野島:実際にやり出したら意外と体が覚えていました。ただ、頭で考えようとすると、どうやるんだっけってなるんですよね。その戸惑いをみんなで共有できたから、より仲良くなれた気がします(笑)。あと、大人数で録る時、マイク前に立ってない役者は、後ろにある椅子に座ってるんですね。
――スタジオの壁際に並んだ椅子に座っている光景をよく見ます。
野島:音響監督さんから、「皆さん、お忘れでしょうか。後ろの音も拾いますよ。ノイズが多すぎます」というダメ出しをされて、他の人がセリフ喋ってる時は、大人しくしてなきゃいけなかったことを思い出したり(笑)。
――そんなダメ出し、初めて聞きました(笑)。
野島:そうですよね(笑)。3年でこんなに衰えるんだなって、あの回の印象は大きかったです。
30代の頃には、今のアンペルは出せなかった
――ここまでもいろいろなキャラクターについてお伺いしてきたのですが、アンペル以外で、特にお気に入りのキャラクターを教えてください。
野島:以前、イベントでも言ったんですけどタオです。どうしてもアンペル目線で見ちゃうんですけど、先ほど(前回)も言いましたが、きっと幼い頃のアンペルって、こういう子供だったろうなと思わせるキャラクターですし。好奇心旺盛で真っ直ぐで、なおかつ勉強熱心というのは、僕自身も大好きで可愛いと思える子なので、アンペル目線でも野島目線でも好きというか、注目して助けてあげたくなるキャラクターですね。
ライザに対しては、「一回失敗して、勉強してみろよ」って言いたくなる感じがあるんだけど(笑)。タオに関しては、「違うよ。こうだよ」って助けたくなる。そういう可愛さを感じるキャラクターです。
――野島さんにとっては、『ライザのアトリエ』という作品やアンペルというキャラクターは、どのような存在になっていますか?
野島:もちろん、どの作品も大切な作品ではあるんですけど、僕は昔からファンタジー作品が大好きだし、錬金術も好きということもあって、僕の好きな世界観が本当に詰まった作品だなと感じています。しかも、ファンタジー作品って、アニメがすごく得意なジャンル、相性がすごく良いと思うんですよね。そして、アンペルについてですが、助言をする立ち位置のキャラクターはたくさん演じさせていただいてきたと最初にも話したのですが、その中でも圧倒的に演じやすいキャラクターだと思います。というのも、ライザ、レント、タオの3人って、素直に可愛いな、育ててあげたいなと思えるキャラクターなんですよね。変な話、キャラクター同士は仲が良くても、僕自身は「え?」と思うようなキャラクターに助言する場合もあるじゃないですか。僕も人間なので、好みもありますし(笑)。
――アニメでは、憎まれ口を叩き合う師弟みたいな関係性もよくありますしね。
野島:それに僕の年齢的にも、ちょうどアンペルの気持ちが合うのかもしれません。今、僕は50歳なのですが、30代の頃に出会っていたら、演じられなかったというか、今のアンペルは出せなかったと思います。キャラクターと声優の出会いは、タイミングも大事だという話は声優同士でよくするんですけど、それを強く感じられる作品であり、キャラクターですね。
――では、最後に、まもなく放送される第10話以降の見どころをネタバレにならない範囲で教えてください。
野島:大人組は、子供組と別行動をしているのですが、ここから先は、ここまでに培ってきたライザ、レント、タオの成長を確認できる内容になっていくと思います。アンペルやリラはもちろん、きっと1話からずっと見て下さっている皆さんも、感慨深い気持ちになってもらえるんじゃないでしょうか。
[取材・文/丸本大輔]
TVアニメ『ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜』作品情報
あらすじ
そんな刺激が少ない村での暮らしに活力を持て余していたのは、平凡で特徴がないことが特徴の少女、ライザ。「あーあ。何か面白いことないかな。」窮屈で退屈な村、そこに身を置く“なんてことない農家の娘”である自分に不満を抱いていたライザは、ある日、幼馴染みのレントやタオとこっそり小舟に乗り込み、島の対岸へはじめての冒険に出かける。
そこで出会ったのは、“錬金術”という不思議な力を使う一人の男だった。その力に魅せられたライザは、錬金術を教えてほしいと頼み込む。“なんてことない農家の娘”から“錬金術士”へ。これまでの遊びとは違う、自分たちだけの“ひと夏の冒険”が始まる――。
25周年を迎えた「アトリエ」シリーズの人気作『ライザのアトリエ』が遂にアニメ化!
キャスト
(C)コーエーテクモゲームス/「ライザのアトリエ」製作委員会