この記事をかいた人
- 藤崎萌恵
- 数年前にBLと出会い、心に潤いを取り戻しました。BLとブロマンスが癒し。主な記事は『チェリまほ』『陳情令』等。
米国大統領の息子と英国の王子が恋に落ちたなら──
確執のあった二人の恋物語を描くロマンティック・コメディ映画『赤と白とロイヤルブルー』。2023年8月11日よりAmazon Prime Videoにて独占配信がスタートしました。
公開前から話題となっていた本作は、日本でも大きな反響を呼んでいます。瞬く間に口コミが広がるなか、どんな作品なのか気になっている方も多いでしょう。
本記事ではそんな名作映画『赤と白とロイヤルブルー』をご紹介。全米ベストセラー小説を原作とし、世界中の人々を夢中にさせる作品の魅力に迫ります。大統領選に向けて奮闘するアレックス&英国王室に生きるヘンリー王子が織りなすロイヤルロマンスをお見逃しなく!
米国大統領の息子と英国の王子という世紀のビッグカップルのロマンスを綴る『赤と白とロイヤルブルー』(原題:『Red, White & Royal Blue』)。映画の脚本&監督は、第74回トニー賞を受賞の劇作家マシュー・ロペスさん。
大統領の息子・アレックス役をNetflix映画『キスから始まるものがたり』シリーズに出演のテイラー・ザハール・ペレスさん、英国王子・ヘンリー役をAmazon Original映画『シンデレラ』のニコラス・ガリツィンさんが演じています。日本語吹替版では、アレックス役を小林親弘さん、ヘンリー役を益山武明さんが担当。
アメリカ大統領の息子・アレックスは、英国フィリップ王子とマーサ妃のロイヤル・ウエディングに招待され参列。フィリップの弟・ヘンリー王子と確執のあるアレックスは晩餐会で口論になります。二人は巨大ウエディングケーキが倒れ込む大惨事を引き起こし、その様子が大きく報道されてしまうのでした。
ホワイトハウスと王室はダメージを修復するため、アレックスとヘンリーの仲の良さを世界に向けてアピールすることに。やがてお互いの誤解が解けて、二人の険悪モードは解消。アレックスとヘンリーはメッセージや電話のやりとりをするようになり、さらに思いがけない展開へと物語は進んでいきます。
アメリカ初の女性大統領エレンの息子。大統領再選を狙う母親の選挙キャンペーンの手伝いを精力的に行い、政治家を志して熱心に勉強中。ヘンリー王子を目の敵にしています。
✨Alex Claremont-Diaz✨ aka agcd aka fsotus aka loml #RWRBMovie pic.twitter.com/IMshs4jbPG
— Red, White & Royal Blue on Prime (@RWRBonPrime) July 19, 2023
高貴な佇まい&端正な容姿を持ち、国民から「愛すべき王子」として親しまれる英国王子。ゲイであることを隠しています。
h̶i̶s̶ ̶m̶a̶j̶e̶s̶t̶y̶ ̶ i mean, His Royal Highness 𝒫𝓇𝒾𝓃𝒸𝑒 𝐻𝑒𝓃𝓇𝓎 #RWRBMovie pic.twitter.com/XXAUmDG05C
— Red, White & Royal Blue on Prime (@RWRBonPrime) July 21, 2023
原作は、2019年goodreadsベスト・ロマンス賞第1位に輝いたベストセラー小説。邦訳版が二見書房より出版されています。(著者:ケイシー・マクイストン、訳者:林啓恵)
コメディ要素もふんだんに交えて、大統領選を軸にテンポよくストーリーが展開していく本作。伝統的で高貴な王室の晩餐会で起きた「ケーキ事件」をきっかけに、物語は大きく動き始めます。
事態を収拾するべく、アレックスとヘンリーは「この数年間 親しい友人関係にあった」という設定で仲の良さを世に発信することに。
小競り合いを繰り返す二人が見せかけの親友になり、やがて強く求め合う相手となっていくのですが、その過程にも非常に萌えます。数年前に出会って以来、敵視してきたアレックスとヘンリー。お互いに何年も前から執着していたのです。
本作は主にアレックス視点で描かれるため、ヘンリーの感情の動きも気になるところ。英国王子として完璧に振る舞うなかに己の感情を抑圧しているヘンリーですが、意外と分かりやすく行動に出ていたり、秘められた熱い想いが徐々に伝わるのも見どころです。
いったんわだかまりが解けると、アレックスとヘンリーの心は磁石のように引き寄せられていきます。とは言っても、二人が住むのはアメリカとイギリス。メッセージや電話のやり取りを通して仲を深めます。超遠距離のなか、まるで一緒にいて側で会話しているかのような描写が素晴らしいので注目していただきたいです。
“They talk for so long Alex has to plug his phone in to keep the battery from dying. He rolls onto his side and listens, trails the back of his hand across the pillow next to him and imagines Henry lying opposite in his own bed, two parentheses enclosing 3,700 miles…” #RWRBMovie pic.twitter.com/W7SumoYdES
— Red, White & Royal Blue on Prime (@RWRBonPrime) August 11, 2023
大統領の息子&英国王子という立場にあるため、ごく一部の人以外には絶対秘密の恋愛で簡単には会えない状況なのですが、アレックスとヘンリーは何とかやりくりしながら逢瀬を重ねます。会ったときの抑えきれない熱い想い、激しく求め合う二人の姿はたまりません。
The tension between "he's so annoying" and "kiss me already.” #RWRBMovie premieres this Friday. pic.twitter.com/DjOIofMBcp
— Prime Video (@PrimeVideo) August 9, 2023
原作小説では、二人のメッセージのやり取りもたっぷりと綴られていて、二人の愛が膨らむにつれて長文になり、熱の込められたものになっていきます。IQ高めの下ネタを織り込みつつ機知に富む痛烈な言葉、センスの良さは圧巻。聡明な二人が交わす言葉に魅了されます。
ヘンリーから送られてくる文章は特に個性的。最初は要点が分かりにくく、理解するのに時間を要するものがあるとアレックスも感じているようですが……。そんなところも愛しているのだと思います。そして、過去の人々の書簡の引用も素敵。歴史に埋もれずに伝えられた言葉の数々にも思いを馳せてしまうでしょう。ぜひ、原作も併せてお楽しみください。
母親が大統領になったことで無名の労働者階級から一躍有名人になり、今の地位を得たアレックスと、生まれながらにして高貴なロイヤルファミリーの王子で「名もなき人(一般人)になれたら」と人知れず苦悩するヘンリー。二人には高いカリスマ性やルックスなど共通点があるものの、性格や環境には大きな違いがあり、微妙に噛み合わない部分もあるのです。彼らは、少しづつお互いの人生を理解していきます。
これからの二人のことを真剣に考えるアレックスに、ヘンリーは何を思うのか。政治に生きるアレックスと王室に生きるヘンリーが愛し合う道はあるのか。相手を知れば知るほど惹かれていくなかで時に衝突し、悩みながらまた愛は深まっていきます。
セクシュアリティについて、原作でも映画でも丁寧に描かれています。これまで自らをストレートだと認識していたアレックスは、ヘンリーとのキスをきっかけにバイセクシュアルだと知ることに。そして恋心を自覚したアレックスは、ヘンリーと付き合うようになります。
アレックスは母親のエレン(ユマ・サーマンさん)にカミングアウトするのですが、LGBTQ+についての会話シーンが非常に印象深いです。彼女は将来を左右する恋愛にアドバイスを授けるとともに、その場でアレックスに性教育を始め、ダイレクトに語っています。
一方、王室の理解を得ることは難しく、ヘンリー自身も王子がゲイなんて許されないと苦しんでいました。アレックスに「カジュアルな関係」、つまり「僕に本気になるな」なんて口にしていたヘンリーですが、本音を漏らす場面も。しかし、彼にとってありのままの自分で生きていくことを選ぶのは簡単ではありません。
これまで、厳しい時代背景も絡んで悲しい結末を迎える海外のボーイズラブ作品も少なくありませんでした。現代の社会を描く本作でも、苦悩するヘンリーの姿に胸が締め付けられる思いでしたが、アレックスの行動力や二人を周りで支えてくれる人たちも印象的です。
アレックスは、大統領選でテキサス州を獲得すべく奮闘してきました。ここで票を得られるかどうかは、歴史を作る上でもとても大きなこと。心を打つ彼の演説にも注目です。二人の恋の行方、大統領選の結果をぜひ見届けてください。作品に込められたいくつかのメッセージ、世界をより良くするために闘う希望溢れるロマンスを多くの方に観ていただきたいです。
BL作品が好きな方はもちろん、そうでない方も盛大に萌えて楽しめるはず。観終わったあとは心地良い余韻に包まれると思います。睫毛がクルンとキュートなアレックス&とっても王子様なヘンリー王子をたっぷりと堪能してくださいね。
yes, i am crying and so are you. don’t lie. #RWRBMovie pic.twitter.com/6uFmwU0Anl
— Red, White & Royal Blue on Prime (@RWRBonPrime) August 12, 2023
数年前にBLと出会い、心に潤いを取り戻しました。BLとブロマンスを愛し、大好きな作品はたくさんありますが『チェリまほ』が心のよりどころです。そして『魔道祖師』をはじめ中華BLの沼へ。趣味は国内外のBL漫画や小説を読むこと&ドラマ観賞で、これまでに執筆した記事は『チェリまほ』『美しい彼』『魔道祖師』『陳情令』『ENNEAD』など。
製作・配給:Amazonプライム
配信日:2023年8月11日
製作国:アメリカ
原作:ケイシー・マクイストン
監督:マシュー・ロペス
プロデューサー:グレッグ・バーランティ, サラ・シェクター
出演:ニコラス・ガリツィン, テイラー・ザハール・ペレス, ユマ・サーマン
上映時間:2時間1分