『魔道祖師』原作の中国ドラマ『陳情令』プロデューサー・楊夏さんインタビュー
アニメやラジオドラマなど、多メディアで人気を博す小説『魔道祖師』を原作にした、中国発の世界的大ヒットドラマ『陳情令』!
日本のみならず、多くの国の女性陣の心を掴んでいる本作について、プロデューサー・楊夏さんが熱い想いを聞かせてくれました。
【PROFILE】
楊 夏(ヤン シア)
1990年生まれ、北京出身。
主な制作作品は「陳情令」「你微笑时很美」「光·渊」。初制作作品「陳情令」ではチーフプロデューサー・脚本を務める。
ドラマ『陳情令』ができるまで
――『陳情令』は墨香銅臭先生の小説「魔道祖師」を原作として制作されました。タイトルを『陳情令』とした理由を教えてください。
楊夏:タイトル候補は数十個ありましたが、まず原作で主人公の魏無羨が武器として使う笛の名であるということ。魏無羨は「陳情」で吹く曲で傀儡を操る……つまり「陳情」で傀儡を「令」する(命令して動かす)という意味です。
また「陳情」の意味は「自分の心の中で、言葉にできない情(想い)を訴えること」ですが、この言葉自体がドラマ中の魏無羨およびほかのキャラクターを表すものだからです。
物語の中では魏無羨だけではなく藍忘機や江澄もさまざまな感情を抱くものの、それらを言葉には出しません。たとえば魏無羨は共に育ってきた江澄を救うため自分の力の源である金丹を江澄に差し出します。
金丹を渡す、イコールこれまで生きてきた道を捨てて魔道の道に堕ちざるを得ないということで、究極の選択であり自己犠牲です。ですが魏無羨はなぜそうしたのか、その理由を誰にも言いません。それは藍忘機も同じで、彼もいろいろな想いを抱えながらも誰にもその気持ちを語ろうとはしません。
私がずっと愛読していた中国の有名な小説家・金庸先生の『天龍八部』に通じる部分を感じて原作の『魔道祖師』に強く惹かれました。二つの作品に共通するのは「登場するすべてのキャラクターが心の中に情があるからこそ苦しみがある」という描写です。
――『魔道祖師』を読んだきっかけは?
楊夏:小さい頃から小説が大好きでたくさん読んできました。文学系インフルエンサーやいろいろな方のおススメを読んでいたんですが、あるとき友人が「この小説面白いよ、読んでみて!」と。
それがおそらく2016年の末か2017年の頭のことですが、読み始めたらあまりの面白さに一晩で読み終え、次の日には「この小説を絶対にドラマ化したい!」と速攻オファーをしてドラマ化の権利を獲得しました。
――原作は日本版だと4冊です。それを一晩で読み、しかも翌日にオファーとは!
楊夏:若かったので(笑)。
――主役の魏無羨と藍忘機を決められた際のエピソードはありますか?
楊夏:まず俳優さんのビジュアルと雰囲気がいかにキャラクターに合うかが大切だと考えていました。
また制作協力をしてくれたテンセントビデオが勢いのある若手俳優の起用を支持してくれましたので、純粋に作品とキャラクターに合うと感じた俳優さんに決められました。
当時は主役の俳優二人だけではなく私も新人でした。ですから「同じ新人だからこそ、同じように心を込めてキャラクターを表現していただける」と思い、肖戦さんと王一博さんにお願いしました。
『陳情令』で描きたかったもの
――『陳情令』では友情とともに家族、特に父と子の関係が多く描かれています。なかでも金光瑤は父に認めてもらえないという葛藤がありました。家族に対する思いもテーマのひとつだったのでしょうか?
楊夏:そのとおりです! このドラマはそもそも藍忘機と魏無羨、二人の物語だけを作ることが目的ではなく、登場するすべてのキャラクターの性格・生い立ちを描くことを意識していました。
私は彼らがどのようにして育ってきたか、それこそがキャラクターを作るものだと信じています。ですからドラマ中でもキャラクターの過去のエピソードや幼い頃の思い出を入れるようにしました。
――薛洋の飴のシーンではつい涙が…。
楊夏:その涙は原作の墨香銅臭先生の力です(笑)。ドラマには長さの制限がありますので、それぞれのキャラクターにとって特に大切なエピソードを選んでいます。
たとえば金光瑤の場合は、父親に宮殿の階段から蹴り落とされるシーンと、幼い頃母親に「身だしなみを正そう」と教わり帽子を治してもらうシーン。どちらも金光瑤のその後の人生に大きく影響するものです。
金光瑤の複雑さと矛盾とをこれらのシーンで表現しました。
――ドラマ化にあたり「原作ファンのために、ここだけは変えずに守っていこう」と思った部分はありますか?
楊夏:このドラマを作った2016年頃は、もちろん原作には熱狂的なファンがいましたが、現在のように世界各国で出版されてはいない状態でした。
ですので「ファンが大事にしている部分を守らなくては」というより、私自身が原作を読んで感動した部分をしっかり守って作ろうと意識しました。製作チームと共に、作品中、どの部分が読者の心をギュッと掴み感動させたのかを分析して、そのひとつひとつの要素を大事にしながら作っていったんです。
たとえば私たちが一番感動したのは魏無羨と藍忘機の関係性です。二人の感情をどう定義するかはさておき、彼らは血の繋がりこそありませんが、お互いを深く理解し、信じ合っています。無条件ですべてを委ねられる、すべてを任せられる……そんな関係性は人間として最高のものですよね。ここだけはしっかり守って描かなくてはと意識しました。
――逆に実写だからこそ描きたいと思った部分はありますか?
楊夏:実写化にあたって決めていたことは、キャラクター設定と原作者・墨香銅臭先生が作品中で書かれてきた価値観は絶対に変えないということです。
それを前提に実写ドラマという新しい料理を作るため、素材となるエピソードの並べ方・展開を変更しました。たとえば義城編は原作では比較的早くに登場するエピソードですが、ドラマでは後半になって出てきます。理由としては、観てくださっている方達がまだ魏無羨と藍忘機の性格をよく分かっていない状態、しかもまだ二人の感情の繋がりもそこまで深まっていない段階ですので、新しいキャラクターが登場して義城編が繰り広げられると分かりにくいと思わせてしまうのではないかと義城編をまるごと後ろに移しました。
義城編の位置を変えて良かった点としては、観てくださる方達がすでに魏無羨と藍忘機二人の性格・関係性を良く理解したうえで、他の物語が繰り広げられるという部分です。その状態で義城編の三人のキャラクターのストーリーを観ることで、主人公二人の関係性とも比較できますし、主人公達の感情もより理解していただけるのではと考えました。
――『陳情令』は世界中で大ヒットしましたが、最初から世界を狙って作られたのでしょうか?
楊夏:私もまだ若かったので「世界に向けて作ろう!」なんて野望はありませんでしたし、正直言いますと市場のことすら考えていませんでした(笑)。ただただ「皆が大好きな原作をちゃんと自分が納得できるように。またファンの皆様にも納得していただけるように」という気持ちで作りました。
――ここまでの大ヒットになると思っていましたか?
楊夏:実は今でもどうしてここまで海外の方に評価していただけるのか信じられません (笑)。初めてのドラマということもあって「もっとこうできていたら…」という部分も多くて、自分的には100点満点中70点の出来だと思っています。
ですがそのような作品でも世界中でたくさんの方に「好き」と言っていただけるのは、とにかく心を込めて作ったドラマであるということを理解してくださり、広い心で受け止めてくださっているからかな、と思っています。
――楊夏さんの経験から若い世代の方に伝えたいことはありますか?
楊夏:自分の経験でしかお話しできないのですが、私は修士課程を卒業後に会社を作り、20代で『陳情令』を作りました。『陳情令』が成功したのは制作中ずっと「できる!」と強く信じていたからではないかと思います。
30代になり、改めて学生時代などを振り返ると「自分を信じる」にもう一言足して「世界を少し疑ってみてください」とお伝えしたいです。ですので10代~20代の方には「世界を疑ったとしても自分だけは自分を信じてあげてください」とお伝えしたいです。
『陳情令』ファンの皆さまへメッセージ!
楊夏:『陳情令』が日本でこんなにたくさんの方に愛されるなんてまったく予想もしていませんでした。ファンの皆さんには心からの感謝をお伝えしたいです! 3年後も5年後もこの作品を観て楽しんで、そして希望を見出していただけるとうれしく思います。
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© 2020 杨夏
Originally Published in China in 2020 by THINKINGDOM MEDIA GROUP LTD ,China. Japanese version Publishing rights arranged with Sony Music Solutions Inc. and libre inc.2022 in Japan.
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