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『葬送のフリーレン』市ノ瀬加那&小林千晃インタビュー

「映像を見るだけで泣きそうになる」異なる不器用さを持つ二人が『フリーレン』の世界に与える彩――アニメ『葬送のフリーレン』フェルン役・市ノ瀬加那さん&シュタルク役・小林千晃さんインタビュー

年頃の女の子は難しい……!

──ご自身のキャラクターの印象を教えてください。

市ノ瀬:フェルンは、初回の収録段階ではまだ感情をどこまで出して良いのか悩みました。さらに、一緒に旅をしているフリーレンはエルフで、自分は人間なので、その対比を表現するためにも「感情をもっと出してください」とディレクションをいただくことがあって。

表情は変わっていないように見えても、ちょっと気持ちを乗せていることが結構あります。逆に表情変化があるところはお芝居を薄くしていて。そういう意味では、『葬送のフリーレン』は今までとはお芝居のベクトルが違っているんですよ。

フェルン自体は不器用ながらも真っ直ぐで、等身大の女の子らしさもあって。私としてはただただ可愛いと思いました(笑)。

また、フリーレンとの絡みも大好きです。フリーレンに対してお母さんのような立ち振舞をしながらもちゃんと師弟関係で。対してシュタルクと一緒にいるときは女の子の顔が増していて。

演じるうえでもフリーレン、シュタルクとのやりとりで、ぜんぜん違うお芝居をしています。

──ハイターとフリーレンの影響か、すごく良い女の子に成長しましたね。

市ノ瀬:そうですね。両親を失い、命を絶とうとしたところで出会ったハイターは恩人です。ハイターに救われたからこそ見れた景色もたくさんあるので、彼が拾ってくれて本当に良かったと思います。

ただの家族として迎え入れるのではなく、ちゃんとひとりで生きていけるように魔法を教えてくれました。本当に、ちゃんとした向き合い方をしてもらえたなと。

ハイターとはおじいちゃんと孫のようでもあり、師匠と弟子の中間の関係性でもあると思っています。

──ふたりの別れを見て涙した方も多いかと思います。

市ノ瀬:あのときのフェルンは、早く一人前になって、ハイターに安心してほしいという思いだったんでしょうね。ひたすら魔法を学んでいた姿は彼女の真面目さや真っ直ぐさが現れていました。

──お話にもありましたが、無表情に見えて感情は動いていますよね。

市ノ瀬:そうなんですよ。特に、シュタルクと話しているときは怒っていることが多いです(笑)。

小林:フリーレンはフェルンよりも年下みたいな振る舞いをするからフェルンはお姉さんになっていて。でもシュタルクは同年代だからこそぶつかっていくんだと思います。

──ある意味、シュタルクと話しているときが素の状態なのかもしれませんね。

小林:シュタルクからすると、フェルンは初めての同年代の女の子なのでどう接すれば良いのか未だにわからない存在だと思っていて。僕もそうなんですけど、女性の扱いというものは古から難しいと言いますよね。

市ノ瀬:(笑)。

──そうかもしれません……(笑)。

小林:女性という生き物がわからない、そんな不器用さをフェルンからも、シュタルクからも感じられました。シュタルク自身、フェルンには苦戦しています。年頃の女の子ということも相まって、僕もその気持がわかるくらいにフェルンは難しいです。

でも第三者目線で見ると、素直になれないフェルンの気持ちもわかります。同じことをハイターやフリーレンから言われたら素直に反応するのに、シュタルクから言われるとついムキになったり恥ずかしがったり。時には冷たい態度になることもありますが、それが微笑ましいし、愛らしいなと。

ただ、これは今の僕だから思うことなのかもしれなくて。中学生や高校生の頃だったらまた違う感想になるんじゃないかなと思います。

──世代によって受け取り方は異なりそうですね。

小林:もう少し大人の方からしたら「早く付き合っちゃえよ」みたいに思うかもしれませんね。

市ノ瀬:(笑)。

小林:でも誰しもがこういう時期はあると思うので、今後も関係性を大切に築いていってほしいです。

シュタルクは日本人っぽいから共感できる!?

──シュタルクについてはいかがでしょうか?

小林:シュタルクは幼少期から厳しく育てられましたし、兄と比べられては「才能がない」と言われたりして。そのせいですっかり自己肯定感が低くなってしまいました。

本当はアイゼンやフリーレンに認められているんですけれど、「俺なんて」みたいに自信がないことばかり言っていて。

でも、僕としてはそんな性格がすごく共感しやすくて。視聴者からしても勇気がもらえるキャラクターなんじゃないかなと思います。

──人間味に溢れていますよね。

小林:フリーレンは戦闘面で卓越しすぎていますが、シュタルクは戦闘面も、精神面もまだまだ未熟なのでそこが共感に繋がるんじゃないかなと。僕としてはすごく日本人っぽいなと思いました。

自信がなくて、自分からコミュニケーションをとるのが下手だったり、空気を読むけど上手く読めていない。そんなところが魅力的に感じました。

でもやるときはちゃんとやるんです。そのときのかっこよさに惹かれるものがあります。

──市ノ瀬さんからご覧になっていかがですか?

市ノ瀬:小林さんが演じるシュタルクは、見事にシュタルクなんです。

小林:どういうこと!?(笑)

市ノ瀬:表現が難しいんですけど、シュタルクのお芝居のパターンっていろいろあると思ったんです。

小林:たしかに。

市ノ瀬:でも小林さんのお芝居を聞いて「これしかない!」と。

小林:嬉しい。

市ノ瀬:特に、男の子の無神経さみたいなものが出る瞬間が好きです。この先、そういうところがより出てくるんですけど、小林さんご本人とは間逆に感じられて。

小林:そこに関しては、僕もシュタルクの気持ちがわかるからこそ、むしろ同じ道を通ってきたからこそ理解できたんですよ。

市ノ瀬:なるほど。

小林:実は小学生の頃、同学年の女の子に「ヒゲ生えてるよ」と言ったことがあって。

市ノ瀬:それはやばいですね(笑)。

小林:僕からしたらヒゲは男子しか生えないと思っていたから、良かれと言ったんですけど、女子からすごく非難されました。でも、当時はそれに対してムキになったりしたんですけど、よくよく考えたら言うべきじゃなかったなと。

そういう風に、10代の頃、男子女子で接し方を変えることが上手い人ってあまりいなかったじゃないですか。だから演じながら「自分にもそんな無神経なこと、あったな」と共感できました。

市ノ瀬:いろいろなことがあって今の小林さんがあるんですね。

小林:そうですね(笑)。でも計算しすぎてもいけないなと思ったので、バランス感覚は意識しました。

市ノ瀬:シュタルクは表裏がないですからね。

小林:そうそう。狙いすぎると変になっちゃうので、シュタルクらしさは大事にしました。それはフェルンも同じだと思います。

──市ノ瀬さんは演じるにあたって苦労されたポイントなどありましたか?

市ノ瀬:序盤は感情を出して良いと言われたんですけれど、冒険が進み、シュタルクと出会っていく中で、より感情を出してほしいと。

私自身、最初はフェルンを演じるならこうじゃないといけない、みたいなものがあったんですけれど、最近はこういう一面もあって良いのかな?と想像するようになって。実際、フェルンは冒険をして、いろいろなことを経験したので、新しい一面が出てきてもおかしくないんですよね。

なので、「フェルンならこうする」という部分もありつつ、私がこうしてみたいなと思ったことを混ぜたりもしています。

──ほかにディレクションはありましたか?

市ノ瀬:こちらのお芝居に委ねていただいたところがありつつでしたが、最初は感情を抑えてほしいと言われたり。

小林:感情を控えめにするディレクションは多かったよね。

市ノ瀬:そうですね。この作品は特に絵が芝居をしてくれるので。

小林:セリフは最低限で良かったのかもね。

──小林さんはいかがでしたか?

小林:僕は途中から(フリーレン役の)種﨑敦美さんと市ノ瀬さんの中に混ざっていく流れだったので、おふたりに溶け込みつつも、シュタルクはムードメーカーなところもあるので、パーティー全体が少し賑やかになるように意識しました。

あと、シュタルクは自分に自信がないので、自信ありげに見えたり、かっこいいと思われないような作り方をしています。普段はかっこよくないけど、セリフの節々やちょっとした表情で「やるときはやる男なんだ」と感じ取ってもらえたら良いなと。

──視聴者に委ねている部分も大きいんですね。

小林:そうかもしれませんね。絵や音楽も素晴らしい作品なので、会話は必要最低限に徹していて。

(ヒンメル役の)岡本信彦さんもおっしゃっていたんですけれど、ヒンメルは過去に世界を救ったおじいちゃんでありながらも、その背景をあまりセリフで色付けていなくて。この作品は全体として感情を乗せすぎない方向性なのかなと思っています。

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