『わたしの幸せな結婚』連載インタビュー最終回 斎森美世役・上田麗奈さん、久堂清霞役・石川界人さん対談 第一期を振り返って「これが運命の出会いだったんだなということを描ききった印象です」
二〇二三年七月五日より放送開始となったTVアニメ『わたしの幸せな結婚』がクライマックスを迎え、第二期制作が発表となりました。
『わたしの幸せな結婚』(顎木あくみさん著、月岡月穂さんイラスト)の舞台となるのは、日本古来の美意識と西洋文明の流行が織りなすロマンの香り高い明治大正を思わせる架空の時代。継母たちから虐げられて育った少女・美世が、孤高のエリート軍人・清霞と出会い、ぎこちないながらも、互いを信じ、慈しみ合いながら、生きることのよろこびを知っていく――〝愛〟と〝異能〟が紡ぐ、異色のシンデレラ・ストーリーです。
アニメイトタイムズでは『わたしの幸せな結婚』のメールインタビューを連載形式でお届けしてきました。連載インタビュー最終回は、斎森美世役・上田麗奈さんと久堂清霞役・石川界人さんの対談をお届け。しとしとと雨が降り、季節の変わり目を感じさせる9月中旬。最終回放送直前に、じっくりとお話をうかがいました。
美世が強くたくましくなるまで
――第一期を終えた率直な感想をおうかがいできればと思います。
斎森美世役・上田麗奈さん(以下、上田):美世が清霞様をはじめとする皆さんに、幸せや家族などいろいろなものを教えてもらって、そのつながりの中で成長し、自分の気持ちを認められたり、周りの人が思っていることを知ったりするタイミングがあって。
また、過去に置いてきてしまった自分と向き合うことがあったりと、いろんなことを経て、「わたしの幸せな結婚」に向かっていくんだろうなという希望を感じさせる物語に行き着いた印象です。見ていてとても幸せな気持ちになりました。特に12話は美世が凄く成長を見せましたよね。
――美世の声色が全然違いました。
上田:実はそこは不安なところだったんです。変わりすぎてしまったんじゃないかなって。
――いやいや、すごく素敵でした。美世の成長や、芯の強さを感じる声色で。
上田:そう言っていただけて嬉しいです。私が気になっていたのが、清霞の心の動き。清霞は寄り添ってくれる温かい人だし、美世よりも社会の中で生きてきた人なので先輩感は強いんですけども、まだこれから変わっていく部分があるんだろうなと12話を見たときにすごく思いましたね。
――清霞もこれから成長していくと。
上田:そんな気がしました。これから二人で幸せになるために、まだまだエピソードがありそうだなって。TVアニメの後日譚となる13話でも「幸せの形は夫婦それぞれだから」と感じさせるシーンが多かったですし、二人の今後がとても楽しみです。
――石川さんはいかがでしょうか。
久堂清霞役・石川界人さん(以下、石川):「美世がとっても強いな」というのが率直な感想です。「強くなったな」というのが正しい表現かな。第一期の最後まで見たあとに、1話を見返すと凄く弱々しいし、「えっ」と言うくらい、弱々しく今にも消えそうなんです。でも、この短い期間で人ってこんなにも変われるんだなと。
もちろん(美世と清霞は)普通に出会ったわけではなく、なかなか体験し得ないような大きな出来事だらけでしたけど、ここまでの短期間でガラッと変わり、誰かのために何かがしたいって思えるようになるのは本当に素晴らしいことです。この第一期を通して、これが運命の出会いだったんだなということを描ききったなというのが、印象と感想になります。
――12話のあとに改めて1話を視聴したのですが、上田さんの演技の幅に改めて驚かされるところがありました。
石川:ね、恐ろしいですよ。
上田:(挙手して)いや、私からもいいですか?
石川:発言を許可する(笑)。
上田:清霞のお芝居、凄くないですか……?
――凄いです。2人とも凄いです。
上田:本当に……美世に目線を合わせる優しさや、寄り添う力が凄まじくって。美世にとって清霞は社会を生きる大先輩で、こんなに差があるのにも関わらず、美世のところまで降りてきてくれる。その優しさを声から凄く感じて、清霞という人物がより魅力的になっているなと言うのが素直な感想です。それをどうやって表現しているんだろうって、本当に凄いなと。
石川:(笑)みんな凄いね〜。
――中盤から後半にかけて、石川さんのお声がどんどん優しくなっていく印象でした。
上田:そうなんです! 優しい。当のご本人はあまり寄り添うことがないと、おっしゃっていたことがあったんですけども。
石川:そうですね。「わからないことはわからない」と思ってしまうタイプではありますね。
上田:そうとは思えないですよね。お芝居って、すごいなあと……。
石川:(他人事のように)凄いねえ(笑)。
上田:界人さんがすごいって話です(笑)。
――石川さんから「みんな凄い」という話がありましたが、先行上映会のVTRで「僕は上田麗奈さんのお芝居に引っ張ってもらったと思っています。彼女のお芝居が色づくたびに、こちらのお芝居の柔らかさが変わっていく。僕は美世に変えられたなと思っています」とおっしゃっていましたね。
石川:序盤は特にそうですね。まだ清霞が美世に対して冷たかったり、突き放していたりした時期に……掛け合いがそこまで多かったわけではないんですが、美世の悲壮感や自罰感で作品全体の空気ができていました。僕もそれだったらここまでいっちゃおうとか、自分の指針になってくれたのが美世のお芝居だったので、そういう点において引っ張られました。
終盤になるにつれて恋愛的なシーンが増えていって。「美世可愛いな」と、清霞と同時に、僕もそう思う瞬間があったんです。そういう意味では、恋愛的なシーンもリードしてもらっていたんじゃないかな?と僕としては思っています。
上田:確かに3話くらいまでは、美世を軸とした雰囲気作りが重要でしたよね。それ以降は美世も変化のターンに入って、右も左もわからない期間が続くので……序盤以降は、かなり清霞が寄り添って、目線を合わせてくれている感じがありました。それもあって、恋愛的なシーンも含めて、私的にはあまり美世が引っ張ったような感覚はなくて。ずっと清霞に支えてもらっていた気がします。
――イベントで、当初の収録には緊迫感があったと語られていましたね。
上田:1話の斎森家でのシーンがいちばん緊張感ありましたね。あと、美世の声が小さすぎて、皆さんが音を立てないようにと気を使ってくださっていて。それが本当に申し訳なかったです。
石川:(笑)
上田:それと同時に、皆さんの緊張感も伝わってきました。
――香耶役の佐倉綾音さんが先行上映会のときに「香耶だって被害者だ」と佐倉さんが言っていたのが印象的でした。
石川:斎森家は時代の被害者なんですよね。
上田:確かにそうですね。佐倉さんはそれを理解した上で“悪役じゃない悪役”をやってくれていたように思います。少し伝わりにくい表現かもしれませんが。
――いやいや。分かります。
上田:演者さんそれぞれがそれを理解して演じているのを感じて私はそこに感動しました。
――その緊張感とは違って、上映会時のイベントは皆さんすごく楽しそうでしたね。上田さんがずっと笑いを堪えられていて。
上田:作中とは全然違う雰囲気でしたね (笑)。下野さんと佐倉さんが大変盛り上げてくださって、西山さんがニコニコしていて、上田が戸惑うという構図でできておりました。