青山吉能が改めて振り返る1stアルバムのこと、そしてアーティスト活動を始めたきっかけ/配信シングル「空飛ぶペンギン」インタビュー
アニメイトタイムズで『みずいろPlace』を連載中。昨年は、主人公の後藤ひとり役で出演していたTVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく! 』が大ヒットし、大きな注目を集めている声優の青山吉能さん。
2022年にデジタルシングル「Page」でソロアーティストデビューをし、2023年3月8日には1stアルバム『la valigia』(ラ ヴァリージャ)をリリース。そして早くも新曲「空飛ぶペンギン」を、9月27日に配信リリースをする。
今回リリースする新曲についてと、1stアルバムを改めて振り返るインタビュー。
「空飛ぶペンギン」を深掘り、そして青山吉能、新たな目標は?
――デジタルシングル「空飛ぶペンギン」が9月27日にリリースされますが、この曲はどのように制作していったのでしょうか。
青山吉能さん(以下、青山):まず5月のバースデーライブで発表をし、そのときは影も形もなかったんですけど、ライブをして、それこそ自分の曲だけでも良いライブができたし、自分のことをもう少し信じていいんだと思えたので、もう少し新しいことをしてみようかなと思って、この曲に出会えたんです。
そして今回も誰かにお願いするというよりは、何百曲というデモの中からビビッと来たものを選びました。こねくりまわすとあとで後悔するというのは、これまでの経験で分かっているので、今回もほぼ直感で決めています。
――でもそれだけ聴いたいたら、直感でも数曲あるんじゃないですか?
青山:正直何曲も直感はあったんですけど、これ!っていうポイントが違っていたので、それはまた今後の展開によっては形にしていきたいなって思いました。で、そのポイントというのが、“新しい”ものであるということで、アルバムになかったものを見つけるという観点から、イントロ厨でもある私がグッと来たものが「空飛ぶペンギン」でした。
――このイントロのコーラスは、元からあったのですか?
青山:ありました。仮歌でコーラスが入っていて、良いじゃないか!と。元合唱部だから多声でのコーラスを好きになりがちなのと、これまでピアノの曲を選ぶ傾向にあったけど、今回はゴリゴリにギターなんですよね。でもこれにビビッと来たということは、『ぼっち・ざ・ろっく!』を経た変化なんだろうなとも思えたので、この変化はちょっと大事にしたほうが良いんじゃないかと思ったんです。なので、もともと好きな合唱と、新しく出会ったギターが合わさっているという意味で、懐かしいけど新しい、というバランスが良いなと思いました。
――00年代から今も続く、文学系のギターロックの感じがあって、すごく良い楽曲ですよね。歌詞は付いていたのですか?
青山:1番だけ付いていて、タイトルもほぼこのまま来ていたんです。一見、何を言っているんだろう?という感じもある歌詞でもあって……。
アルバムでヒグチアイさんに書いていただいた「透明人間」は、それこそ私の切り身のような、私というものを切り崩して出したみたいな曲だったし、そういう曲も多かったので、今回は余白を与えたい、という気持ちもあったんです。
――確かに抽象的なところはありますね。
青山:〈草むらで月に濡れ 変わりたいと泣いてた〉という歌詞を読んだとき、何だろう?と思うと同時に、ピアノ線みたいなものにいろんなものがぶら下がっている映像が見えたんですよね。手作りの景色がどんどん過ぎていく感じがあって、今までにないものが見えてきたので、これは歌詞的にも新しいのかもしれないと思って、その世界観で全部書いていただきました。
――映像が見える歌詞って良いですからね。
青山:音楽ってやっぱり景色が大事だと思うので、その景色を追いながら歌っていった感じがします。
――〈交差点〉や〈星のベンチに〉といったワードも素敵で、そんな中で〈新しい輝きを探したい〉というメッセージも入っている。
青山:最後に、地に足をつけている人の目線だったんだ!って思いました。でもすごくきれいで、丁寧な歌詞ですよね。私には書けない……。
――タイトルの「空飛ぶペンギン」からも、十分メッセージ性は感じますしね。
青山:飛べないけど飛んでいきたい。可能性とかですよね。このワードもすごく良いんですよ。
――そんな歌詞を、どう歌っていこうと思いましたか? 最初は淡々としていて、徐々にエモさを増すようなボーカルだったと思いますが。
青山:とにかく置かれている音のリズムと言葉のきれいさを、どうにかしてボーカルで表現したいと思いました。ちょっと癖とかニュアンスを入れるだけ崩れてしまう感じがあったので、合成音声(ボーカロイド)に近いような感じで歌いたいと思ったんだけど、全然上手くいかなくて。
でも上手くいかないまま続けて、そのまま少しだけ(感情を)解放していって、最後の2行で、また最初の感じに戻るんですよね。その1回解放したあとに歌った最後の2行がめちゃくちゃ良くて、振り切った先にある、アクを取ったあとの鍋の汁みたいな透明感があったんです!
急に開けて「これだ!」と思ったから、もう1回最初から録り直していいですか?と。それでやってみたらすごく良くて、結局最初から録り直しました。でも時間をかけていいと言われていたので、そこに甘えさせていただきました。
――それであの透明感だったんですね。
青山:どうしても〈君は夢 君は風〉とか、子音で表現したくなってしまうのですが、それをあえてしたくなかったので、最後まで聴いてもう一度頭から聴くと、最後の2行を経ての最初の歌唱なんだって思えて面白いと思います(笑)。
――最初はクリーンなギターで、途中でノイジーなギターが入ってくるんですけど、ボーカルがずっときれいな感じだったのも、すごく良かったです。
青山:ここも本当に悩んで。歪んでいる音に合わせてもいいけど、違うなって。これは「空飛ぶペンギン」というタイトルから思い浮かぶ、青とか瑞々しさ、清潔さみたいなものそのままで行きたいと思いました。たとえ世界観が演奏と離れたとしても、そのアンマッチさが逆に良いよね!みたいな演出にしようと思いながら歌っていました。
――後半のエモくなってからのボーカルで意識したところというと?
青山:テイクを重ねるほどエモくなってしまうのは課題で、やりすぎてしまうと別人のようになるので、そこの塩梅はすごく難しかったです。でもラスサビの〈新しい輝きを探したい もう一度目覚める〉という言葉は、まさに『la valigia』が終わって、満足し切った私に発破をかける意味でもこの曲を作っていたので、青山吉能はまだ止まらないですよっていう想いも入れていいのかなと思いました。なので裏声にしていたところを、そのまま伸ばしてみたり。それもいい塩梅でできたのかなって思っています。
――あとはコーラスの良さですよね。
青山:コーラスは最初3声で、本レコーディング前に録っていたんです。なので歌入れのときには
、自分のコーラスを聴きながらだったんですけど、少し足したくなってしまい、本レコーディングで雰囲気系のウィスパーっぽいものも足して、最終的に7声くらいのコーラスが出来上がりました。
でも合唱部なんで、コーラスは大得意で大好きなので最高でした! コーラスがあればあるほどマジでアガるので、いつかファンの人を集めて合唱部を作りたい!
――ライブのシンガロングで、観客がハモってたら面白すぎるんですけど。
青山:あなたソプラノ練習してきてねって、譜面配ったりしましょうかね。ライブで本線を歌えなくても、オタクはその後にカラオケに行くと思うので、そこで歌ってくれればいい!
でも、合唱団作りたいって目標、良いですよね。これから聞かれたらそう答えようかな。そしたら誰かが夢を叶えてくれるかもしれない(笑)。