![『ミルグラム』×『クロケスタ』コラボ記念 仕掛け人 超ロングインタビュー](https://img2.animatetimes.com/2023/09/f171536db7b4ad595cfb7166fdb0ceea6516306fd231b8_60369375_daeaadd938229280c3d1f6b4a55277cd0813ebf3.jpg)
Never↓andへ誘われた囚人たちとの楽しい楽しい夢裁判──『MILGRAM』×『Clock over ORQUESTA』コラボレーション記念!『MILGRAM』原案者・山中拓也さん&『Clock over ORQUESTA』原作者・大河ゆのさん&プロデューサー・岡本純さんの初対談
キャラクターが誕生するまでの三者三様
大河:ところで、山中さんはキャラクターを生み出すときに、エッセンスは自分の中から取り出していますか?
山中:自分が生きる中で感じた疑問や怒り、その環境にいる人の興味から生まれますね。
大河:外的な要素も取り入れているということでしょうか。
山中:そうですね。様々な環境にいる人間が持つであろう悩みや視点を極限まで想像することから、描くべきテーマが決まってくる感じです。常にその時代にしか書けないことを書きたいと思っているので、極力現代的なテーマを表現するために、色々な人間に触れていくことで、キャラクターが生まれていくようなイメージですね。大河さんはどうですか?
大河:『Clock over ORQUESTA』は12キャラクター。それぞれ、自身の何かの側面を強く前に出しデフォルメしてキャラクター化しています。なので、キャラクターのセリフを書く時に、自分が本当に思ったことじゃないと書けないんです。それがパワーワードになって、いちばんグッと感情を掴むポイントにもなり得ると思っています。自分の中にない素材でモノを作ることはなかなか難易度が高いんです。高いから遠ざけていても作品のためにならないと思っているので、ポップなものを世に出したい時はあいざわ先生を頼っています。
──本当に個性豊かなキャラクターが揃っていて。このコラボレーションで作品を知ったという方や、友だちに教えられて知ったという方はどこから入門すればいいでしょうか?
山中:……ひたすらがんばってほしい……。
岡本:(笑)
──『Clock over ORQUESTA』に関しては、まず「1分で分かる『Clock over ORQUESTA』」を観てもらえたら……。
岡本:そうですね。
山中:でも1分だとわからないですよね(笑)。
岡本:そう、わからないです(笑)。でも感覚的にどんなものなのかが分かりやすい動画がほしいなと思っていて。そういうMVを作っています。気になった方はぜひ観てほしいですね。
山中:『MILGRAM -ミルグラム-』に関しては難しいですね。『MILGRAM -ミルグラム-』は食べやすい形には切っていないので。本当は『Clock over ORQUESTA』さんのように「1分で分かる『MILGRAM -ミルグラム-』」を作ったほうがいいんですよ(笑)。ただ出会い方は正直どこからでも良いとは思っていて。
例えば、「曲がかっこいい」「このキャラクターがかっこいい」など興味を持ってくれたら曲を聴いてくれたり、キャラクターを調べてみてもらったりしたらいいのかなと。ゆっくり進んでいくコンテンツなので、時間があるときに探ってもらえたらなと思っています。ここからの長い時間に、勧めてくれている人と出会ってくれたり、楽曲を聴いてくれたりしたら。「絶対に見てください」というわけではないです。
岡本:でもどこかで見つけたら絶対に最後まで見てしまうと思いますよ。長い時間を掛けて醸成しているから、なにより面白いですし。
山中:それはYouTubeというプラットフォームがよくて、1個気になったら次々と情報が入ってくるんですよね。そこから他のコンテンツに入ることも可能ですし。
物語はまだ続いていくんですが、長くやっていると、小学生のときにミルグラムに出会ったひとが大学生になるかもしれない。その時に改めて見返すと、例えばフータに対する思いも変わっていくと思うんですよね。感覚の変化って、思い出として残るもので。『MILGRAM -ミルグラム-』を皆さんの人生の隣に置いてそういう装置として使って欲しいという感覚ですね。日頃ニュースで見かけるような、ありそうな事件も登場するので、ニュースを見たときの感覚も変わるんじゃないかなと。「この事件はハルカかもしれない」「ムウかもしれない」とかね。
岡本:作品ってどれだけ長く続けるかでしかないと思っていて。作品と一緒に育っていくという体験もそうですし、最初に触れてから5、6年後、少し離れてしまったとしてもまたふらっと戻れるんですよね。だからファンの方、作品を知ってくれている方にとっては作品がなくならずそこにあるということ自体、すごく嬉しいことだと思っています。ただ、作品を続けるのってすごく難しくて。特に2、3年目は、会社としての体力やクリエイターさんのモチベーションも試される時期なんじゃないかなと思っています。だからそこを超えられた作品ってすごく強い。
山中:そう言ってもらえるとうれしいですね。
岡本:それともうひとつ、作品に大事なのって“運”もあると思っていて。
山中:それはありますね。面白いから売れる、ってあまりないように思うんです。面白くて、かつ、運があったら売れるっていう。どちらも必要条件。
岡本:そうなんですよね。ただそこはアンコントローラブル。
山中:面白いですよね。何がきっかけで人の目に触れるかはわからないものなので、大事なのって、いつか誰が触れたときにもきちんとかっこいい在り方をできているか、なんじゃないかと。「当たらないから」と焦って迷走していると、いざ触れたときに「変なものだな」と思われてしまうので。
岡本:そうですね。そこはプロデューサーが折れてはいけないところですよね。その胆力も大事だなと、身をもって感じています。
山中:そこは自分が作っているものが面白いと信じるしかないですよね。誰かにウケそうだから、誰かが好きそうだからって理由で作った作品だと踏ん張れないので、自分が面白いと思うものをやり続けるしかない。
岡本:それって作品作りだけでなく、他のことにも言えますよね。
山中:そうですね。
AIの発展で今後コンテンツはどうなるのか
岡本:それにしても話が尽きませんね(笑)。永遠に話せてしまう……。
山中:そうですね。なかなかこういう機会がないので楽しいです。めちゃくちゃ面白い。盛り上がりついでに、単に僕の最近の悩みの話で、皆さんがどう考えているか聞きたい話題なんですが、僕の場合、アシスタント、それっぽく表現すると後継者的な存在はいないんです。だから僕の頭の中にしか、『MILGRAM -ミルグラム-』の物語は入っていない。そこから出すと鮮度が落ちてしまうように思うんですよね。
岡本:ああ、分かります。私もあえて、頭の中にあるものは外に出さないようにしています。
山中:同じですね。後継者という意味では、「岡本さんのようになりたい」という方もいらっしゃるんじゃないですか?
岡本:後継者的な存在ということですか? う〜ん、いないような……?
山中:いませんでしたか(笑)。
岡本:みんなベクトルが違うんですよね。同じバンドを組んでいるけど、ベースとボーカルのような感じというか。
山中:ああ、なるほど。僕は周りから右腕を作ったほうがいいとよく言われるんですよね。ひとりで抱えるクリエイティブの範囲が大きすぎるので。しかし、なかなか誰かに任せるのが難しい。
岡本:ああ、それは私自身も言われるんですよ。でもそこは最も属人化すべきポイントだと思っています。というのも、手放すメリットが思いつかないんですよね。だから後継者を増やすより……他意はないのですが、新しいコラボレーションなどをしていって、ファンになってくれる方を増やしていったほうが良いように思っています。そうしたら、そのエッセンスを受けとった方が、新しい何かを将来作ってくれるんじゃないかなと。ただ、最近はAIの発展によって、未来の作家たちは厳しい状況になるかもしれないなと危惧しています。
──AI時代によってクリエイティブな業界がどうなっていくのかは、皆さん気になっているところだと思います。
山中:今はAIはイラストの問題が表面化していますが、実は我々のシナリオの方がAI発展の影響を受けると思っていて。シナリオは短いセンテンスの範囲ではイラストよりも作家の個性を感じにくいものなので、大衆性の高い作品だと今後厳しくなる時がくるかもしれません。例えばAIに「いくつかセリフを出して」と言っただけでもある程度精度高く大量のセリフを出してきますから。ただ、今のところは例えや意図的な嘘が苦手なんですよね。そこはまだ明確な強みとして、人間が持っていられる印象です。
岡本:ああ、なるほど。つまり、これからのエンタメって「どれだけ尖っていられるか」の世界なのかもしれませんね。
山中:そう思います。
岡本:独自性ですよね。そういった流れは感じてはいたんですが……。
山中:そうですね。また、よくAIによって仕事が奪われるとも言われていますが、AIが発展することで逆に助けられる側面もあると思うんです。それを生業にしていけるかは、僕からはなんとも言えないですけども。
岡本:そうですね。でもどんな時代がきたとしても、やっぱりクリエイティブって楽しいなと思うんですよね。作家の純粋さが出るモノというか。
山中:邪念があれば、それも出てしまいますからね。
岡本:そう、そうなんですよね(笑)。
──今日は多岐に渡るお話をうかがいましたが、読者の方にこれは伝えておきたいということはありますか?
岡本:私は『Clock over ORQUESTA』のことをすごく愛していて。ファンの方と同じ思いでいます、ってことを伝えたいです。時には「思っていたのと違った」と離れてしまうこともあると思うんです。私たちから追いかけはしないけれど、来てくれたら「いつでもおかえりって言うつもりでいるよ」くらいの気持ちです。一緒に末永く愛していきたいなと思っています。
山中:それで言うと、僕はお客さんに何を言われてもスタンスを変える気はないんです。それはお客さんのことを大事にしていないというわけではなくて、変えていない部分を好いてついてきてくれたお客さんを大事にしているつもりです。『MILGRAM -ミルグラム-』は、きっと皆さんが喜ぶ展開ばかりではなく、皆さんの選択次第では好きなキャラクターが痛い目に遭うことも、予告していることですが、好きなキャラクターが死んで、いなくなってしまう可能性もあります。でもその体験こそがこの作品である、ということをご理解いただけたらうれしいなと思っています。それはあなたが好きになってくれた『MILGRAM -ミルグラム-』を保ち続けるために必要なことである、と考えてくれたら。
岡本:今日はありがとうございました。またお話をしたいですし、コラボレーションもしたいです。
山中:ぜひ。楽しい時間でした。
インタビュー・逆井マリ
MILGRAM -ミルグラム-
スタッフ
プロデュース/サウンド:DECO*27
プロデュース/企画/脚本:山中拓也
MV/デザイン/制作:OTOIRO
キャスト
エス:天海由梨奈
ジャッカロープ:福山潤
ハルカ(櫻井遥):堀江瞬
ユノ(樫木優乃):相坂優歌
フータ(梶山風汰):ランズベリー・アーサー
ムウ(楠夢羽):香里有佐
シドウ(桐崎獅童):仲村宗悟
マヒル(椎奈真昼):岡咲美保
カズイ(椋原一威):竹内良太
アマネ(桃瀬遍):田中美海
ミコト(榧野尊):花江夏樹
コトコ(杠琴子):愛美
■Offisial Site
https://milgram.jp
■Twitter
https://twitter.com/MILGRAM_info
Clock over ORQUESTA
キャスト
朱鷺燈 一夜:山下大輝 / 田村睦心
桜小路 二香:森川智之 / 皆川純子
小豆沢 三斗:服部想之介 / 白石涼子
栗花落 四麻:置鮎龍太郎 / 三瓶由布子
音葉 五百助:野田てつろう / 伊瀬茉莉也
天馬 六華:村瀬歩 / 金田朋子
天馬 七星:日野聡 / 井上麻里奈
榊 八色:堀内賢雄 / 朴璐美
九重 九日:立花慎之介 / 佐藤利奈
不破 十紀人:鳥海浩輔 / 竹内順子
春海 一十:山路和弘 / 久川綾
朱鷺燈 零士:緑川光 / 緒方恵美
ティンク:mino
キャラクターデザイン
めふぃすと
トミダトモミ
漣ミサ
京一
白皙
黒裄
北島あずま
jin8pati
唐々煙
烏間ル
有坂あこ
ヤスダスズヒト
冬臣
しきみ
■公式HP
https://clockoverorquesta.com/
■twitter
https://twitter.com/ClQST_info