秋アニメ『ひきこまり吸血姫の悶々』楠木ともりさん(コマリ役)×鈴代紗弓さん(ヴィル役)インタビュー|ターゲットは全方位! ギャグ、シリアス、百合、ジャンルを絞れない面白さ
笑える変態よりも笑えない変態でいい
――テラコマリ・ガンデスブラッドは、3年間ひきこもりライフを送ったのちに「七紅天大将軍」に任命されて、軍を率いることになりますが、本人は魔法が使えず、ハッタリでその場をしのいでいく感じが面白かったです。演じてみて、いかがでしたか? 何か、ご自身にとってチャレンジなことなどはありましたか?
楠木:原作PVのときに声を出しているんですけど、それが今だと結構ギリギリの高さで、地声の一番高いところくらいなんです。だからめっちゃ大変でした! しかも大声でしゃべり続けたり、表情変化も大きかったりするので、そのテンションについていくのに必死!みたいなところがあって。
しかもコマリは必死なのに、周りがどんどんボケてくるから、それに対してもツッコまなければならない。だから終始チャレンジでした(笑)。もう、自分の集中力とスタミナが持つのか!みたいなところが結構あったんです。
ただ、コマリの動きとか表情に付けるアドリブは頑張ったところで、ヴィルがしゃべっているときに、ずっと腕を引っ張って、うーうー言ってたり、ちょこまか動いている小動物みたいなところがあるんです。画面の端を見るとコマリがいたりすると思うので、そういうところは見てほしいし、目が離せなくなる魅力が、コマリにはあると思います!
――そんなギリギリの高さを出すのに、朝収録だったんですよね?
楠木:そうです! 朝でした! だからずっとのど飴を舐めたり、シロップを舐めたり、休憩時間に「あーあー」ってチューニングをしながらやっていました。
鈴代:してたね~。
楠木:テストで出し過ぎると本番が持たなくなるって分かっているんですけど、漫才みたいな掛け合いって準備をせずに、出てきたものに乗っかりたいから、テストを全力でやりたくなっちゃうんです。でも、そこをぐっと我慢して、喉を60~70%で使い、本番で100%を出す、みたいなことは心がけていました。
――周りの矢印がだいたいコマリに向いているから、それに対して対応していくのも大変ですよね。誰が演じていて手強い相手でした?
楠木:やっぱりヴィルかなぁ。コマリってヴィルに対しては結構当たりが強いし、掛け合いが多くてスピーディーだったので、相手がどう出てくるのか、というところに対応するのは大変でした。
あと、第1話で大変だったのが演説のシーンで、軍隊の規模が大きいとは思っていたんですけど、自分が想像していた以上に大きくて。これは結構大声を出さなきゃ無理だ、という規模感だったので、「私、持つのかな?」と思いながら、結構リテイクを重ねつつ、録っていただきました。
――確かに、軍隊に対してが一番大変かもしれないですね。結構ハッタリで、調子に乗ってくるところがコマリの魅力でもあったので。ちなみに鈴代さんから見て、コマリと楠木さんの共通点とかはありましたか?
鈴代:コマリとともりですね! ついツンツンしたくなっちゃうかわいさは似ているかもしれないです。小動物感があるというか。あと、ツンツンやっても反応してくれない人っていると思うんですけど、ともりはそれにもちゃんと反応してくれるんです。ボケを拾うことはもちろん、ちょっとしたいたずらにも反応してくれるところは、コマリに似ているなって思います(笑)。あと、仲良くなるとよりコマリっぽいというか。おうちとかでは、きっとコマリみたいな感じなのかなって思うんですよ。
――パブリックなイメージだとクールな感じがあるけれど、ということですか?
鈴代:そうです。しっかりしているように見えるし、実際にしっかりしているんですけど、ちょっと気を抜いていい場所ではコマリに近いような感じはあるのかなって、勝手に思っています(笑)。
――では次に、コマリの専属メイドのヴィルヘイズですが、コマリに従順ではあるけど、コマリがハッタリをかますときは、裏で上手く操縦している感じもあります。演じてみていかがでしたか?
鈴代:アニメなどでは、通常のテンションが落ち着いているキャラクターって、あまりやっていなかったので、やってみたいキャラクターではあったんです。
――確かに元気なキャラを演じているイメージはあります。
鈴代:だからキャストのイメージとキャラクターを見ると逆じゃない?って思われることもあるのかな?って思ったし、実際自分でも少し思っていたところはあるんですけど、新しい挑戦でもあるなと思いました。ただ、変態な部分は、今までアドリブが求められる役をいろいろやってきたので、変態のアドリブだ!って思いながら挑んでいけたと思っています。
それとヴィルの落ち着いた部分の話だと、先程朝の収録だったという話が出ましたけど、コマリはハイカロリーで、ヴィルは滑舌が大変だったんです。とにかくすらすらすらすらしゃべっていくから本当に大変で。私としては初めて言う言葉でも、ヴィルにとっては日常的な言葉なので、それをさらっと、そしてちゃんと相手に伝わるように言うことは意識していました。
楠木:滑舌が本当にすごくて! あれ、家で練習してたよね?
鈴代:うん。言いにくいところは何回かやってから行ったと思う。
楠木:変態な感じで早口で来るときって、何を言ってるか分からなくなったら笑えないと思うんですけど、本番前に隣の席からぼそぼそ言っているのが聞こえてきて、何を言っているのかな?と聞いてみたら、すっごい変態セリフを連発してたんです(笑)。だからはっきり聞こえるように努力しているな~って思っていました。
あと無口キャラって、淡々としていて気持ちもフラットなときがあるけど、ヴィルって気持ちはあるんですよ。コマリに対しての愛がすごいから、淡々とした中で愛を表現しなければならない。この温かさと冷静さのバランスが、私はすごく好きでした。
鈴代:嬉しい!
――あと、変態のアドリブっていうワードが強烈だったのですが。
鈴代:やっぱり普通の変態にはなりたくないじゃないですか。だからもはや笑える変態よりも笑えない変態でいいかなと思ったんです。原作を読んでいても、ヴィルのセリフってギリギリなところを攻めてくるんですよ。(おしっこを)「漏らしながら聞いてください」とか。変態度合いが、度を超えているんですよね。だから芝居は笑えない変態でやって、かわいさは、動きとビジュアルで補完してくれればいいかなと、私はギリギリを攻めていました(笑)。
――ヴィルがコマリを愛でているという話も出ましたので、親交の深いお二人に、お互いの好きなところをひとつ聞いてもいいですか? おそらく色々なところで聞かれる質問だと思うので、ひとつで大丈夫です。
鈴代:確かに、ちょこちょこ聞かれてますね。
楠木:恥ずかしいな。何にしようかなぁ。
鈴代:どのひとつを言うかだよね。じゃあ私から。これは当たり前に思えて実はすごく難しいことなんですけど、自分の芯をしっかりと持ちつつ、周りが見えているから、ちゃんと人のことを考えられる。つまり、人間力があるところが好きです!
楠木:ひとつというかめっちゃ褒められてる気がする。
鈴代:役者には人間力も大事だと思っているので!
楠木:私は、周りを元気にしてくれる雰囲気を持っているところが好きかなぁ。紗弓は自分がボケだというのは自覚していて、その上で、周りを明るくしてくれたり、前向きにさせてくれるんですよ。自分がボケタイプだという自覚があるからこその動きとかもしてくるんです。なので、紗弓も周りがよく見えているんだと思います。
鈴代:自覚のあるボケってこと?
楠木:ボケるタイミングとかは自覚ないんだけど、自分がそういうタイプだという自覚があるってこと。
鈴代:あぁ。そう思って行動しているってことか。
――確かに鈴代さんがいたら現場が明るくなりそうですよね。この話をもっと深く聞いてみたかったのですが、時間が来てしまいました。
鈴代:そうなんですか! じゃあ、この質問用紙にある最後の質問に答えますね! 好きなオムライスは、とろとろです!
楠木:分かるー! 同じだ!
鈴代:昔ながらのオムライスももちろん好きですけど、中がふわとろの卵が乗ったオムライスだと嬉しいです。
楠木:嬉しいよね。中がケチャップライスで、トマトクリームソースがかかっているのも美味しい!
鈴代:めっちゃ分かる! 私、バターライスのも好き!
[文&写真/塚越淳一]
『ひきこまり吸血姫の悶々』作品情報
あらすじ
吸血鬼なのに血が飲めないコマリは、魔法が使えない、運動ができない、背が伸びないという三重苦に悩まされ、3年間の引きこもり生活を送っていた。
しかし、ある日親バカの父がとんでもない就職先を見つけてくる。その名も『七紅天大将軍』! それは本来帝国の猛者しかなれず、3ヶ月に一度のペースで他国に戦争を仕掛け勝利しなければならない超ハードな役職。さらに部下たちは元犯罪者ばかりで将軍に就任したコマリに対して下剋上を狙う気満々......。
絶対に断りたいけど、皇帝直々の任命なので辞めることすら許されない。
本当の実力がバレたら即破滅なこの状況......それでもコマリはハッタリと可愛さを武器に己の任務を遂行する!
「私がこれから為すことはな、単純極まりない覇業だ! すなわち、テラコマリ・ガンデスブラッドは――他の5カ国の大将軍を武力で全員ブチ殺し、ムルナイトの国威を全世界に喧伝してやるのだ!」
最強(!?)吸血姫による歴史に残る快進撃がここに始まる!
キャスト
(C)小林湖底・SBクリエイティブ/ひきこまり製作委員会