『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】』渡邉祐記監督&西川将貴副監督インタビュー|フロストノヴァは絶対にはずせない、一番気を使わなければいけない繊細なキャラクター
2023年10月より絶賛放送中のTVアニメ『アークナイツ【冬隠帰路PERISH IN FROST】』。本作は昨年(2022年)10月から12月にかけて放送された『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』の続編となっており、主人公であるドクター(CV:甲斐田ゆき)やアーミヤ(CV:黒沢ともよ)らが属するロドス・アイランド製薬をはじめとする様々な陣営の思惑や想いが交錯する物語が描かれています。
アニメイトタイムズでは、そんな『アークナイツ【冬隠帰路PERISH IN FROST】』の放送が折り返しとなったタイミングで、監督の渡邉祐記さん&副監督の西川将貴さんへのインタビューの機会を得られました。
今後の物語についてや、原作からの人気キャラクターである“フロストノヴァ(CV:高垣彩陽)”を登場させる上での苦労など様々なエピソードをこの機会に語っていただいています。またシリーズ通して印象に残るキャラクターたちの“目のアップ”のカットにまつわるこだわりも必読です。ぜひ後半戦の前にチェックしてくださいね。
原作からの取捨選択で苦労があった
――シーズン2『アークナイツ【冬隠帰路PERISH IN FROST】』の放送も折り返しとなりました。まずは今の心境をお願いします。
渡邉祐記監督(以下、渡邉):ゲームをプレイしている方はわかっているかと思いますが、アニメから入られた方たちは龍門という場所には何かあるのだろうなであったり、ウェイという人間には何かあるのだろうと、見えてきている段階かと思います。この後も色々とある感じなので、そのへんをお楽しみにしていてください。
西川将貴副監督(以下、西川):ちょうど対局の動きがうつされていて、どことどこが対立していて、解消するためにどことどこが動いてという、けっこうわかりやすい対局と言いますか、感情論とか全部抜きにした、組織対組織の対立関係であったり、見えやすい部分が出ているようなところだと思います。例えばですが、ニュースで報道されやすいような分かりやすい内容に焦点があたっているというのが9~12話な気がします。
――キャラクター視点とかで言いますとどうでしょうか?
渡邉:この後の話数では、今まで交戦に出ていたレユニオンの人たちが、どうなるのかという部分が描かれます。
ロドス、近衛局、レユニオンという陣営が3つあったと思いますが、1クール目でいうミーシャとはまた別ベクトルで、どこかに属しているようで、属していない、宙ぶらりんな人が登場したりするので、その人たちはこの都市の中でどうなっていくのかに注目して欲しいです。
西川:組織という形式や型というよりは思想みたいなところでキャラクターそれぞれが思い直した人から、組織を外れていく感じになるのか、どうかという点にも注目してください。9~12話で一区切りあってからの、13話以降という、視点が変わるので、見て頂きたいです。
――本作は監督と副監督の体制となっていますが、制作においておふたりはどのような作業をされていたのでしょうか?
渡邉:副監督はもう1名道解さんという方がいまして、道解さんが見ている話数、西川さんが見ている話数、私が見ている話数と別れているのですが、それぞれキャラクターに対するお話の区切りで、分けていました。
10話は西川さんがメインでみていました。序盤の話数は西川さん、道解さんの力を借りつつ、やって頂き、これからの後半の見せ場の話数は私が担当している感じで、その他は西川さんにある程度管理して頂いていました。
1期の時もそうだったのですが、アーミヤやドクターという一番軸になる部分はどうしても話数の割り振りの関係上私がやることになっていて西川さんにレユニオンまわりをやって頂き、今回はそこに道解さんが加わって近衛局まわりをやって頂いた感じです。
西川:2期目は近衛局まわりが新しく追加されたので、道解さんにやって頂き自分はまた変わらずレユニオン側を中心にやっていて渡邉さんがドクターとアーミヤを中心にして関わる人間たちという感じだったと思います。
渡邉:主人公サイドのメインストーリーの軸の部分で、つながりを作るという作業は私の方でやって、周りを取り囲む敵対しているレユニオンなどの軸の部分は西川さん、道解さんにお願いして、前半に積み重ねて頂いた感じで分担しました。
――シーズン2のシナリオは制作するうえでどのような苦労がありましたか?
渡邉:原作の内容のどこを取捨選択して詰め込むかという部分で、要素として拾わなければいけない部分は拾うのですが、お客さんにはわかりやすく伝わるよう選択していかなければいけないので苦労しました。全部の中身をそのまま当て込めれば一番楽なのですが、それをやると尺が足りないので、絶対に必要な部分を外さないようにちゃんと拾っていかなければいけないといのが、大変な作業でした。
西川:元のシナリオに対する理解度をあげて、どこが特に必要なのか、ここのためにこれが必要なのだという部分を見落とさないようにという作業は大変でした。
渡邉:他の作品であれば、このキャラを見せたいから重点を置くなどありますがこの作品は特殊なので、最終的にこの話がこう進むから、キャラクターの活躍より、積み重ねになる要素を拾っていかないといけない。
原作のこの部分はキャラクターの魅力を出せていて、たしかに良いのだけど泣く泣く削らなければいけないという、、、そこを削らないとテンポの問題であったりちゃんと見せたいものがぼやけてしまうので、難しい作業でした。
西川:見ている側もお話が散っちゃって、今の何? という感じになってしまったり、キャラクターを悪く見せることにもなりかねないので、作品的にもヘンに悪目立ちしてしまい、そのキャラクターのせいでノイズになったみたいな嫌な展開になってしまわないようにしました。
渡邉:今回群像という部分はすごく意識しているので、まんべんなく色んな所で起きているのを、龍門という都市を俯瞰して、状況が変化しているのを見ている状態なので、もう少し尺があれば、、、という感じではありました。
西川:ただ、限られた尺の中なので、ちゃんとシナリオを読み込んで、ちゃんと考えて凝縮しなければいけないという、ある種の縛りができたので、逆に深く考えてできたかなというのはあります。
――シーズン2の映像について、制作する上で新たに挑戦したことはあったのでしょうか?
渡邉:具体的にこれというはないのですが、アクションシーンを頑張ろうというのはありました。
西川:ストーリー的に1期目は派手にしずらい部分があったのですが、2期目には派手にできる余地がありました。その他で言いますと、1期目は敵側にプロがいないんです。
ミーシャ、スカルシュレッダー、レユニオン兵のモブたちという感じで誰一人として戦闘のプロフェッショナルがあの中に1人もいないので1期目はロドス側と近衛局側が一方的に蹂躙しているような感じになっているのです。
ロドスと近衛局側にはプロがいるのですが、相手側にはいないので、正直に言いますとバトルが成立していないのです。ゲリラ的に苦戦するところがあったとしても、真正面からやりあってというのはタルラ戦ぐらいしかなかったと記憶しています。2期目に関しては、真っ向勝負が出てくるので、派手にやらなければというのはありました。
渡邉:フロストノヴァも含め、アーツを使うこと自体がアイデンティティーにつながっているキャラクターが沢山いるので、それを見せることが大前提にありました。
我々としてはただただ戦いを楽しんで見せるためだけの戦闘は避けていて、戦うことにしっかり意義を持たせるということを1期目から大切にしてきていて、今回はそこにアーツという派手な要素がのってきたので作業は大変ではありました。