映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』ウーリー役・津田健次郎さんインタビュー|仕事に誇りを持って働くことは素敵なことだと新人コンシェルジュ・秋乃から学んだ
小学館「ビッグコミック増刊号」で2017年から連載を開始し、「第25回文化庁メディア芸術祭 マンガ部門 優秀賞」を受賞した、西村ツチカ先生による『北極百貨店のコンシェルジュさん』。本作の劇場作品が2023年10月20日(金)より絶賛上映中です。
新人コンシェルジュとして秋乃が働き始めた「北極百貨店」は、お客様が全て動物という不思議な百貨店。秋乃は一人前のコンシェルジュとなるべく、フロアマネージャーや先輩に見守られながらお客様からの難題に向き合う中で様々な葛藤を経て、成長していきます。
アニメイトタイムズでは、本作でウーリー役を務めた津田健次郎さんにインタビューを実施! 本作から学んだことだけでなく、新人時代のエピソードなど様々なトピックスについて語っていただきました。
現場で共演することで、ひとりでは辿り着けないところまで演技を高められた
――本作へ出演することが決まった際の心境をお聞かせください。
**津田健次郎さん(以下、津田):((事前に原作を読ませてもらったんですけど、非常に個性が強く、他では見られない作品だと感じたのを覚えています。そんな本作にウーリーも登場するのですが、今までに演じたことがないタイプのキャラクターだったので、担当させていただけて大変光栄でしたし、どのように演じるか考えるのが楽しみでした。
――今まで演じたことのないキャラクターとのことですが、不安な気持ちとチャレンジできる喜びのどちらが大きかったのでしょう?
津田:不安は全くなかったです。それよりも年齢の積み重ねが必要となるウーリーのような役を演じられるようになってよかったなと思いました。
――ウーリーの第一印象はいかがでしたか?
津田:最初は孤高の人といいますか、孤独が前面に溢れているアーティストという印象でした。でも、色んなキャラクターと関わり、一気に心が花開く様子は感動的で、アフレコした時も感極まってしまったのを覚えています。
――演じた後で印象の変化はありましたか?
津田:変化というか深まった感じはありますね。現場でスタッフさんや監督さんを筆頭に、他の役者さんと想像以上に交流することができ、自分の力では持っていけないところまで演技を高めることができました。
――アフレコは皆さんと一緒に行われたのですね。
津田:川井田夏海さんと諸星すみれさん、あと高木渉さんとご一緒できました。
――アフレコ現場での雰囲気はいかがでしたか?
津田:他の方をいじるのもなんですけど、川井田さんは緊張しているように見えました(笑)。先輩方がずらっと並びますし、座長として自分が崩れたら全てを台無しにしてしまうプレッシャーも多分あったんじゃないでしょうか。
諸星さんとは収録後に少し会話していて、「緊張しました」と言っていたんですけど、全然緊張しているように見えなくて。「若いのにキャリアが長いすみれちゃんは流石だな」って感じました。
渉さんは、渉さんでしたね(笑)。たくさん話題を提供してくれて、とても楽しくしてくださいました。
――明るく楽しい雰囲気のなかでの収録だったんですね。
津田:それもあったんですけど、やっぱり緊張感もありました。本作は、コメディとシリアスが混在した複雑な構成となっていて、わかりやすいお涙ちょうだいではなく、感動をにじませる大人な作品だと思うんです。
それを表現するにはスキルが必要で、丁寧に演じないと表面をさらっただけの物語になりかねないですし、逆にやりすぎるとクサい感じになってしまうんですよ。だから繊細な演技にチャレンジする上で、緊張感みたいなものが僕たち役者はもちろん、スタッフさんもあったんじゃないかな。
――各シーンからすごく情感を感じることがあったのですが、そこをかなり意識されていたのですね。
津田:感じてもらえていたら嬉しいです。あと、緊迫感のあるバトル作品とかだったらわかりやすく緊張して演じればいいんですけど、本作では緊張してはいけない場面やどこか力の抜けたやりとりがあって。緊張しつつもそれを感じさせないようにするのは難しくて楽しかったです。こういう繊細なことをやらせていただけたというのは、役者冥利に尽きますね。
秋乃の魅力は大人になっても全く色褪せることのない心の純度
――役作りをする際に意識されたことはありますか?
津田:普通だったら、台本を読んでキャラクターのイメージや感情の流れを分析し、どのように演じたら魅力的なシーンが生まれるかを考えて、複数のパターンを用意して現場入りすると思うんです。
だけど、演技は現場で監督さんや音響監督さんがもつビジョンを共有して膨らましていくものだと考えていて。特に僕の場合は、川井田さんと諸星さんとの掛け合いが多かったので、その中で生まれるものを大切にしていました。
――ウーリーはゆったりとした口調ながらも、セリフから色々な感情を読み取ることができます。このように表現するのは難しそうだなと感じたのですが、どのように演技されたのでしょうか?
津田:彼は、作品に登場する動物の中では一番体が大きく、独自の世界を持つアーティストなので、流れる時間や感性はどこか他と違うように感じて。極力、ズーンとした重厚感のあるしゃべりが理想だなと思いながら演技をしたんです。
一番気をつけたのは、諦めや悲しみなどが上手くにじむようにしたことです。ウーリーは奥さんを亡くしているんですけど、年月が経っても悲しさを消化しきれていない部分があって。その渇きや切ない思いを少ないセリフから感じてもらえるように演じさせてもらいました。
――ウーリーが秋乃を支える場面などが多く見られますが、ふたりの掛け合いで大切にされていたことはありますか?
津田:彼は自分から話していくタイプではないので、秋乃の想いを受け止めてあげるということを大切にしました。ウーリー自身も彼女のストレートな言葉に少しずつ心の氷が溶かされていたように感じます。
――秋乃にとってウーリーは良き理解者になっているように感じました。
津田:ウーリーは色々なことを受け止められる器の大きな方なんです。
――津田さんから見た秋乃の魅力はどういったところにあると思いますか?
津田:純度の高さですかね。彼女は少女時代の出会いをきっかけにコンシェルジュを目指すんですが、その時に抱いた想いが大人になっても全く色褪せることはなくて。お客様の役に立って、北極百貨店を愛していただくことに喜びを感じられるのは彼女の魅力だと思います。