P.A.WORKS「お仕事シリーズ」最新作&初のオリジナル長編『駒田蒸留所へようこそ』吉原正行監督インタビュー|こだわったのはウイスキーのグラスとビン。作画と3Dの組み合わせという高い難易度に挑戦!
『花咲くいろは』『SHIROBAKO』など、P.A.WORKSが手掛ける「お仕事シリーズ」の最新作&初のオリジナル長編となる映画『駒田蒸留所へようこそ』が、2023年11月10日(金)より全国公開!
本作は、亡くなった父親の後を継ぎ、ウイスキー蒸留所の若き社長となった駒田琉生(こまだ るい)が経営難の蒸留所の立て直しと、災害の影響で製造できなくなった「家族の絆」とも呼べる幻のウイスキーの復活を目指す物語です。
既に世界各国の映画祭にも出品されている本作が、ついに日本で公開されることを記念し、監督を務めるP.A.WORKSの吉原正行さんにインタビュー! 企画が生まれたきっかけから制作秘話、見どころなどを語っていただきました。
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成果物を得るまでに時間がかかるウイスキー作りを題材に、若者の群像劇を描いた映画
――本作は、P.A.WORKSオリジナル作品ですが、どのように着想・企画されたのでしょうか?
吉原正行監督(以下、吉原):専門職にはそれぞれ特性があると思いますが、P.A.WORKSが「お仕事シリーズ」を通して一貫して描きたいのは、若者の取り組む姿勢や想いと、群像劇です。そして今回、僕自身も若者の「before/after」を描いた群像劇にしたいという気持ちがありました。そこがスタートで、後でハコ(題材)をいろいろ検討して探したという流れです。
――本作のコンセプトやテーマをお聞かせください。また、モチーフや参考にされたもの・ことはありますか?
吉原:他人が言う「成功」と自分が望む「成功」って、こういうものなんじゃないかというのがテーマになっています。意外と自分では気付けなかったりするけれど、他人から「こうだよね」と言われたことが自分が望んでいたことだったんだ、と思える瞬間だったり、自分が望んでいたものに到達した瞬間のような気がする、というプロセスを描いていこうというのがコンセプトです。
――これまで日本酒の蔵元が舞台の『夏子の酒』や、ウイスキーの蒸留所がテーマになったドラマ『マッサン』などがありましたが、今回なぜウイスキーの蒸留所が舞台になったのでしょうか?
吉原:ウイスキーは、作り始めてから成果物となって自分が手にできるのは早くて3年後、つまり3年間は想い続けないといけないわけです。この題材がふさわしいなと思ったし、「それについて若者がどう感じて、どれくらい響くのだろうか?」というのも描けると思って。それが題材として選んだ理由です。
――思えば、アニメーションも着想や企画の立ち上げから世に出るまで5年かかることは普通ですよね。
吉原:そうですね。少なくとも望んだポジションに到達したり、思ったことを受け入れてもらえるようになるには、その前段階でまず人に認めてもらわないといけないし、喜ばせなければチャンスは巡ってこないという流れが絶対にあるんです。そのためにどうしたらいいのか、考えるきっかけになれたらいいなと思っています。
――ちなみに監督はウイスキーを飲まれますか? P.A.WORKS代表であり、本作のプロデューサーの堀川憲司さんは「下戸だったのに飲み比べするようになった」とコメントを寄せていました。
吉原:僕は飲みます。めちゃめちゃ(笑)。特に学生時代はひどい飲み方で、ウイスキーは早く酔うのに最適だったので。でも今回、作品を制作するために取材をいろいろさせてもらって、とても反省しています(笑)。
――自分は学生時代、お金がなかったので、ウイスキーを薄めて、飲む量や回数を稼いでいました(笑)。
吉原:僕はラッパ飲みでした(笑)。