積み重ねを踏まえたうえで、ごくシンプルに――「よかったな」に込められた甚爾の複雑な感情。『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」第40話放送後インタビュー 伏黒 恵役・内田雄馬さん×伏黒甚爾役・子安武人さん
MBS・TBSほかにて放送中のTVアニメ『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」。呪詛師・夏油 傑らによる五条 悟の封印をきっかけに、渋谷で巻き起こる呪術師たちの総力戦が描かれています。
第35話(第2期11話)「降霊」では、「懐玉・玉折」において五条たちを苦しめた術師殺し・伏黒甚爾がまさかの復活! 続く第40話(第2期16話)「霹靂」では、伏黒 恵の前に立ち塞がり、その圧倒的な実力で波乱を巻き起こしました。
今回は、伏黒 恵役・内田雄馬さん、伏黒甚爾役の子安武人さんによる対談インタビューが実現! キャラクターの魅力はもちろん、放送されたばかりの第40話についてもお話を伺いました。
甚爾再登場の感想は「“子安武人”で良かった」!?
ーー第35話「降霊」で再登場し、圧倒的な強さを見せた甚爾をどのような気持ちで演じられたのでしょうか。
伏黒甚爾役・子安武人さん(以下、子安):「渋谷事変」でもう一度出てくることは原作を読んで知っていたので、出番をずっと待っていました。ただ静かに、心穏やかに……。
ーー(笑)。孫の身体を乗っ取るシーンは衝撃的でした。
子安:見た目がそのままなら、孫(CV:綿貫竜之介)が甚爾っぽく喋るという選択肢もあったのかなとオンエアを見ていて思いました。僕は当たり前のように演じるつもりでしたが、甚爾を降ろしているのは孫の身体なので。ただ姿形まで変わっているので、多分僕だろうなと。改めて甚爾を演じられて、嬉しかったです。
ーー「懐玉・玉折」と比べて、演じる際の変化や意識したところがあれば、教えてください。
子安:甚爾は「懐玉・玉折」の頃のまま姿を現したので、変化は特にないですね。ただ僕の声に変わった瞬間、視聴者に甚爾だと思われないのは怖いなと思っていました。放送時にSNSなどでファンの方たちが「甚爾が来た!」と盛り上がってくれていたので、特徴のある声で本当に良かったです。"子安武人"で良かった(笑)。
一同:(笑)。
伏黒恵役・内田雄馬さん(以下、内田):本当に凄かったですよ!
子安:息子にそう言ってもらえると勇気が湧きますね。36年間やってきてよかったです。
ーー改めて、演じるキャラクターの魅力を教えていただけますか。
子安:原作を読んだときから、甚爾に一目ぼれしています。悪くて、人間的には駄目かもしれないですが、もがいて生きているキャラクター性が好きなんです。
人間臭さが根底にありつつも、ビジュアルと能力が圧倒的だから、駄目な部分も半分くらい許されている気もしますが、何と言っても「プロのヒモ」という設定ですから、実は描かれていない優しいところがあるのではないでしょうか。たまに甘い言葉をかける甚爾を想像するだけで、楽しくなっちゃいます(笑)。
現実ではとても許されないですが、「しがらみもなく自分を解放できたら、楽しいだろうな」と色々な作品で悪役を演じていて思うんですよ。そんな自分にはできない憧れまで、彼は体現してくれています。声優としてなら甚爾にもなれるので、こんなに幸せなことはないです。
内田:お芝居って凄いですね。
ーーそんな甚爾とは正反対に思える恵については、いかがでしょうか。
内田:逆に恵はかなり縛られているので、辛い人生かもしれないです。厳しいことも言うから、表面的にはクールな人に見えると思います。実際には、人を良く見ているし、色々なことを考えていて、その結果、自分を蔑ろにする瞬間もあるわけです。それが彼の優しさなのですが、優しくされた人たちは心配になってしまうのではないでしょうか。
ただクールで偉そうな人物ではないことが恵の魅力であり、演じる側としては難しさでもあって。僕自身、ずっと彼の気持ちを考えつつ、みなさんが想像を膨らませられるような人になったらなと考えながら演じています。あとは、個人的に恵には幸せになってほしいです。
子安:彼の幸せってなんだろうね。
内田:それが難しいところで……。でもちゃんと生き続けてほしいなと思います。
子安:『呪術廻戦』は、幸せの方向が見えにくいキャラクターが多いと思う。
内田:主人公の虎杖が「正しい死を求める」というキャラクターなので。恵は「不平等に人を助ける」と言っていますが、死んでも人を助けるという考えは、誰かに呪いをかける可能性もあると思います。個人的な願いとして、自分を大切にすることにも気づいてほしいです。自分を救ったうえで、誰かも救うことが一番良い未来に繋がりそうだと勝手に思っているので、彼にとっての幸せがどこにあるのかは物語とともに、もっと考えていきたいですね。