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『16bitセンセーション』伊藤健太郎(六田勝役)×福島潤(五味川清役)インタビュー【連載第8回】

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』第7話放送後インタビュー:伊藤健太郎さん(六田勝役)×福島潤さん(五味川清役)|てんちょーの人間らしさがにじみ出た第7話。90年代にデビューしたお二人ならではのゲーム・声優業界トークも!?【連載第8回】

美少女ゲームによって磨かれた声優の技術

――作品を見ていて、90年代はこうだったなって、懐かしく感じたシーンはありましたか?

福島:それこそプレイしていたゲームとか、何だったら自分が出演しているゲームタイトルが出てくると、内心盛り上がるものがあったというか。ほっちゃんの名台詞の「うぐぅ」とかも出てきましたからね。そういう“分かる人には分かるネタ”もあって、ワクワクドキドキしながらアフレコをしていました。

伊藤:僕は95年デビューなんですよ。アフレコの様式は大きく変わらないにしても、現場の雰囲気が違うというか……技術が発達していない中での録音の仕方とか、あの頃はデジタルとアナログの中間くらいでやっていたんですよね。そんな我々の作業と、あの当時の美少女絵の塗りのテクニックみたいなものがシンクロしているんだなって思いました。90年代を経て、2000年代に入っていく前の過渡期を過ごしていた人たちの、うちに秘めている思いって同じだったんだなって、改めて感じさせてくれる90年代の描き方だなと思いました。

――「できないから工夫して、こうやってみよう」みたいなことをやっていた時代でしたよね。

伊藤:我々プレイヤー側も、今ほどリアルじゃない画面だからこその想像の余白があって、例えばこういったジャンルのゲームなら、言い方は悪いですが、そこに自分の性癖なんかがプラスαで入って、それぞれにとっての、そのキャラクターが生まれていったような感じがするんです。今は、誰が受け取っても同じ印象になるようなリアルな造形が、声も含めて出来上がっている。

なので、想像する余白があった昔の良さと、作り手の100%の意思が伝えられる今の良さというのはある気がしますね。僕は世代的にも前者のほうが好きだったりするんですが。

――分かります。自分で想像できたから、アニメも話数ごとに絵が違っても、あまり気にならないんですよね。

伊藤:例えば『ドラクエ』も、ドット絵のかくかくした動きの中で、強大なりゅうおう(竜王)をイメージしていたりしましたが、今は見たら分かりますからね。

福島:僕もデビューしたのは98年とか99年あたりなんですが、その頃は美少女ゲームがめっちゃあって。だから僕は美少女ゲームに出ることによって育てられたというか、技を磨いたというか、いろんな無茶をやらされたんですよ(笑)。「お金がないので、男性声優さんはひとりしか雇っていません!」「え?」っていう。「このシーンに、A、B、C、D、E、Fって6人男性が出ていますけど、全部俺がやるんですか?」みたいなのが普通にあって。でも、そういう仕事をいただけたことによって、声の変え方やキャラの付け方を学べたんです。例えば主人公の親友役をやるときに、「自分がプレイする側なら男の声は飛ばす(スキップする)よな」って。「だったら飛ばされない芝居って何だろう? 男性が面白がる芝居って何だろう?」って試行錯誤をして、今のスタイルが出来上がってきたなぁって思うんです。

――今、とある役を浮かべながら、すごく納得しています(笑)。

福島:あははは(笑)。「こういうの面白いでしょ?」って同じ男が見ても楽しめるお芝居は、主人公の親友役で鍛えられました。

――お二人は、90年代の秋葉原も知っている世代ですよね。

福島:上京したばかりだったので、家電はすべて秋葉原で揃えました。

伊藤:家電の街だったんだよね。パソコンが手に届くようになってからは、自作PCにハマっていたから、結構パーツとかも買いに行ってたなぁ。逆にオタク文化が盛り上がった頃は、この仕事を始めちゃってたから、お仕事で行く街になっちゃったけど。

福島:そうでしたね〜。

――伊藤さんは、守と仲良くなれそうですね(笑)。

伊藤:彼の98へのこだわりは非常に分かりますね。あと、守はアニメになって変化を遂げたキャラクターでもあるんですが、キャストが阿部敦で、ついに敦のお父さん役をやる日が来たかと思いました。

――阿部さんもその話をしていました。

伊藤:彼は若い役も全然やりますから現実的な話ではあるんですけどね。時代によって息子が成長していく姿を見ながら、父親として目頭が熱くなっていました(笑)。

――守にとって、iPadはオーパーツ的なものでしたが、90年代を生きてきて、「あの時代に、今のこの技術があったらヤバいな」って思うものはありますか?

福島:完全にネットかな。あの時代、収録終わりに飲みに行くときなんて、店との間に人を何人か配置して、「店取れた」「店取れた」って伝言ゲームみたいなことをしていたんですよ(笑)。

伊藤:確かにネット通信って本当に便利だよね。昔のトレンディドラマなんて、大体スマホがあれば解決するようなすれ違いが山ほどあったから。あんなことでみんな人生が変わっていたんだからすごいよ(笑)。

そういう変化はすごいけれど、変わってほしくなかったなってこともいっぱいありますよ。僕らが小学生の頃の、最後のダイヤルを回す前に勇気が出なくて切っちゃう感覚とか、家の電話だから親が出るかどうかの駆け引きとか。そういう心の機微を学ばずに大人になっていくみんなが心配ですよ(笑)。

福島:うちも兄弟で子機の取り合いをしていましたから。

伊藤:それはまだ新しいほうだよ。

――今は今の悩みがあることはもちろん分かっているんですが、「こんな時代もあったんだな」って思ってほしいですよね(笑)。でもダイヤルを回す電話があるのを知らない人は多い気もします。

伊藤:確かにそうだよね(笑)。

(C)若木民喜/みつみ美里・甘露樹(アクアプラス)/16bitセンセーションAL PROJECT
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