ワールドワイドを目指す『きらら』の成り立ちと、編集者の楽しさ。大熊先生の取材と学習の賜物によって誕生した『星屑テレパス』編集デスク・末永雅弘さんインタビュー【『まんがタイムきらら』20周年記念】
数多くのアニメ化作品を輩出し、今では“きららアニメ”というジャンルを確立している『まんがタイムきらら』(芳文社刊)。2023年11月には独立創刊20周年を迎え、10月からは『星屑テレパス』(大熊らすこ先生原作)のアニメが放送中!
今回、『まんがタイムきらら』20周年と、アニメ『星屑テレパス』の放送に際して、前後編のスペシャルインタビューをお届けします。
前編の今回は、『まんがタイムきらら』の編集デスクを務め、『星屑テレパス』の立ち上げから現在まで担当編集として活躍中の芳文社、末永雅弘さんに、『まんがタイムきらら』の軌跡を振り返っていただきつつ、ご自身と『まんがタイムきらら』との出会い、アニメ化決定からどう関わっているのか、そして今後の『まんがタイムきらら』の展望などについて語っていただきました。
『まんがタイムきらら』は女の子のかわいさや魅力を届けることをコンセプトに。「ドキドキ☆ビジュアル」がスローガン
――ご自身の経歴や担当作品などを含めた自己紹介をお願いします。
『まんがタイムきらら』デスク・末永雅弘さん(以下、末永):2017年に芳文社に入社、『まんがタイムきらら』編集部に配属されて現在に至ります。姉妹誌『まんがタイムきららフォワード』をメインで担当していた時期もありますが、現在は『まんがタイムきらら』のデスクを担当させていただいています。
デスクの主な仕事は、雑誌全体の進行管理や、編集メンバーから意見を求められた時にアドバイスしたりすることです。アニメ化した作品ですと『球詠(たまよみ)』(マウンテンプクイチ先生原作、『まんがタイムきららフォワード』にて連載中。2020年アニメ化)をアニメ放送前の2019年頃から担当しています。
そして今年10月にアニメ化した『星屑テレパス』(大熊らすこ先生原作、『まんがタイムきらら』にて連載中)は連載開始前の段階から担当させていただいています。
――改めて『まんがタイムきらら』のコンセプトや掲載作品のテーマについてお聞かせください。
末永:『まんがタイムきらら』と、姉妹誌の『まんがタイムきららMAX』、『まんがタイムきららキャラット』、『まんがタイムきららフォワード』がありますが、すべてに共通するスローガンとして「ドキドキ☆ビジュアル」を掲げています。とにかく女の子のかわいさや魅力を届けることをコンセプトにしていて、掲載される作品もその条件を満たした上で、幅広い内容や個性を持ったラインナップになっています。
――掲載される作品について、4誌それぞれ違うカラーや条件みたいなものはあるでしょうか?
末永:雑誌間でそれぞれ若干のカラーの違いはありますが、「この雑誌にはこういう作品しか載せない」みたいな区分けはありません。『フォワード』だけは4コマ誌ではないので、そこだけは明確な違いになります。
秋葉原の美少女文化が芽生えた頃に『きらら』誕生。そして“きららアニメ”の浸透が読者層の拡大へ
――末永さんは、入社前から『まんがタイムきらら』を購読されていたのでしょうか?
末永:もちろん購読していましたし、単行本も読んでいました。私が『きらら』を知ったきっかけは『ドージンワーク』(ヒロユキ先生原作、2007年アニメ化)で、初めて見た『きらら』作品のアニメは『けいおん!』(かきふらい先生原作、2009年アニメ化)でした。学生時代にそれらの作品を見つつも編集者になり、ずっと『きらら』に触れています。
――2003年11月に定刊誌として『まんがタイムきらら』が創刊されましたが、それまでの4コマ漫画誌とはまったく違うテイストでかなり衝撃的だったことを覚えています。
末永:創刊当時はまだ入社していなかったですが、元々『きらら』は『まんがホーム』という雑誌の増刊として生まれたものです。弊社は4コママンガに強いノウハウを持っていて、当時『きらら』を作る時、秋葉原を中心に美少女文化が芽生えてきて、そのあたりに詳しい編集者がいて、その人を中心に雑誌が生まれたと聞いております。
――末永さんが読者そして編集として『きらら』に関わってきた中で、変化を感じた点はありますか?
末永:『まんがホーム』の増刊として誕生したので、初期は4コママンガで実績のあるマンガ家の方が多く執筆されていましたが、最近ではマンガ未経験のイラストレーター出身の方など幅広い方に執筆していただいています。作家陣や作品の雰囲気はかなり変わってきているかなと。
読者層についても、“きららアニメ”が1つのジャンルとして浸透したおかげもあって、様々な層に広がっています。『きらら』は男性読者をターゲットにしているという印象も強いと思いますが、最近では女性読者の方も増えました。
――作品を立ち上げる時に、アニメ化などのメディアミックスも意識されていますか?
末永:作家さんと一から作り上げる時には、メディア化を目標の一つとして設定することは多いですね。アニメ化した時のことを考えて、ストーリーの軸やドラマ性も意識しながら作ることがあります。
――掲載作品はどのような経緯や方針を経て、生み出されていくのでしょうか。
末永:雑誌に連載が決まる前に、『きらら』では「ゲスト」という呼び方をしていますが、まず2、3話程度の読み切りという形で作品を掲載して、その後の読者アンケートの結果を参考にし、編集部内の話し合いを経て連載に至ります。
作品自体は、作家さんと担当編集の間で話し合いながら一緒に作っていく形なので、やり方はそれぞれで違います。例えば「ドキドキ☆ビジュアル」というコンセプトに基づいて、読者をドキドキさせるキャラクターから作り始めることもあれば、テーマや設定という土台から決めることもあるので、作品それぞれですね。
――10月にアニメ化された『星屑テレパス』は女子高生たちがロケット作りに挑戦しますが、このような専門的な分野に踏み込んだ題材で作品を作る場合は?
末永:編集者から「こういうテーマはどうでしょうか?」と提案することもありますが、『星屑テレパス』のキャラクター設定と「宇宙を目指す」という軸となるストーリーは大熊先生からご提案いただきました。
ただ専門性が高い題材については、作家さんに知識がないと描くのは難しくて、特に作画の細かい部分の描写にはとても気をつかいます。例えば、モデルロケットの作画の際、「ロケットの中心位置的にこのパーツはここにないとおかしい」ということは作家さんが理解していなければ描けないので、大熊先生の取材と学習の賜物によってリアルで緻密な表現が可能になっていると思います。