場所や世代を問わず「かわいい」を追求する“きららアニメ”。『星屑テレパス』のシナリオ制作は『ゆゆ式』のノウハウが活きている?『星屑テレパス』作者・大熊らすこ先生×アニメ『星屑テレパス』監督・かおりさん×『まんがタイムきらら』編集デスク・末永雅弘さん座談会
今明かされる『星屑テレパス』誕生の経緯。そしてかおり監督が気になった疑問を先生へ直撃!?
――改めて『星屑テレパス』の誕生秘話をお聞かせください。
末永:大熊先生に初めて『きらら』で連載していただいた『ハッピーセピア』(※)の時、担当編集は別の人で、連載が終わった後に私が担当を引き継がせていただきました。その時に『星屑テレパス』の原型になるような、「ガール・ミーツ・ガール」で、女の子たちが宇宙に行くことを目標にする物語を作っていただいて。初期の段階から非常に温かくて繊細で、今の『星屑テレパス』の魅力につながる部分が盛り込まれていました。その後、『きらら』2019年6月号と7月号にゲストとして掲載されて、8月号から連載になりました。
連載になった最初の話は、第3話目にあたりますが、その時のアンケート結果が非常に良くて、「これはイケるな」と手応えを感じました。
※2017年3月号~12月号に掲載。2023年11月27日発売の『ハッピーセピア 大熊らすこ作品集』に収録
かおり:ロケットを作るという設定は、最初にどこまで想定されていたんですか?
大熊:初期構想は、天文学部っぽい話だった気がします。この時点で私の中では物語のエンディングまで決まっており、それは今でも変わっておりません。ただ、実際のロケット作りはメインに置いてはいなくて、もうちょっとSF寄りでした。連載が決まってからの第3話ではより多くの読者の方に興味を持っていただきやすいものにしようと思って描いていましたが、連載にあたって、「現実的な軸が1本欲しいな」と考えるようになり、モデルロケットについていろいろ調べてみました。これなら高校生の部活の範囲でもできるかなと。
かおり:そうなんですね! 初めて聞きました! 最初の3話は、宇宙に行くとは言っているけど、具体的にどうとは言ってないですもんね。
大熊:そうなんです。これはもしかして、ゲスト掲載システムがある『きらら』さんあるあるかもしれませんけど(笑)。
末永:もちろん連載になることを想定しながら、先生に第2話まで描いていただいていましたが、「連載が決まってから先のことを考えましょう」と話していました(笑)。
かおり:同時進行で進めていた感じなんですね?
末永:連載になると決まった段階で、大熊先生に1巻分のプロットを作っていただいて、先の見通しをしっかり立てた上で、執筆を進めていただきました。
かおり:第2話から連載として描かれた第3話まで、どのくらいの制作期間があったんですか?
末永:第2話が掲載された1カ月後に連載が始まるので、当時は先生に多大な負担をおかけしました。細かいことを言うと、第1話が掲載された段階で、第2話はほぼできていたので、第3話までは若干猶予はあったかなと思います。
大熊:ちなみにコミック第1巻の全体プロットはだいたいワード2ページくらいでしたが、第2巻では15ページくらいになっちゃいました(笑)。
かおり:貴重なお話、ありがとうございます。
『星屑テレパス』を描く上で大切にしているのは“セリフ作り”。かおり監督がアニメを制作する上で意識しているのは「原作者に喜んでもらうこと」
――『星屑テレパス』を描く上で大切にしていることや意識されていること、また大変なことなどお聞かせください。
大熊:一番気を遣っているのはキャラクターのセリフだと思います。場面やそのキャラクターの人生観にふさわしいのかを考えた上でセリフ作りをしていて、迷ったら末永さんにも相談させていただいています。
また『星屑テレパス』はロケットが題材のマンガと言っていただいていますが、いろいろな題材を盛り込んでいるので、それぞれについて下調べするのが大変ですね。でも下調べする時に教えてくださる素敵な先生方とか、この作品がなければ出会えなかったご縁に恵まれたのが嬉しいことです。
――モデルロケットの制作について詳しく描かれていると思いましたが、下調べもかなり綿密にされているんですね。
大熊:個人的にアポをとって、お願いしている方が何人もいます。
――かおり監督はコミックをご覧になった印象とアニメを制作していく中で意識していることをお聞かせください。
かおり:『星屑テレパス』は繊細な色使いで、素晴らしいなと感じていて、それをできるだけアニメに落とし込みたいと思いました。そして“きららアニメ”で比較的よく見られるパステルトーンではなく、シュッとしたフィルム、パキッとした色味を再現したいと思って、スタッフィングしました。
お話的には原作が4コママンガなので、4コマ目で必ずオチがある部分をアニメでどう組み立てたらいいんだろうと。でも『ゆゆ式』の時に得たノウハウが私もライターの(高橋)ナツコさんにもあったので、その経験を存分に活かして今回のシナリオ制作をしました。
原作がある作品をアニメ化する場合、私のモットーは「原作者さんに楽しんでもらえるものにしたい」です。作品の一番のファンは作者である先生だと思うんです。だから先生と、作品を支えている編集者の方、出版社さんに喜んでもらえるものにしたいと思いながら作っています。