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『ひきこまり吸血姫の悶々』南川達馬監督が第8話までを振り返る/インタビュー

烈核解放シーンは撮影部の技術の結晶――『ひきこまり吸血姫の悶々』南川達馬監督が第8話までを振り返る|サクナの部屋はEDアニメーション1本分の労力!?/インタビュー

2023年10月より好評放送中のTVアニメ『ひきこまり吸血姫の悶々』。

3年間ひきこもりライフをエンジョイしていたテラコマリ・ガンデスブラッド(コマリ)が、皇帝直々に「七紅天」に任命され、ハッタリでその場を乗り切っていく様子が描かれていた序盤。ただ、ピンチに陥った第4話で、コマリは血を飲むと、理性をなくしてしまうほどの強大な力を解放してしまうことが明らかになった。

ハッタリでは乗り切れない状況において放たれる烈核解放【孤紅の恤】の凄まじさが光る一方、表情豊かなキャラクターたちによるコミカルなシーンも印象的な本作。アニメの南川達馬監督に、第8話までを振り返ってもらい、制作秘話などを語ってもらった。

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ひきこまり吸血姫の悶々
ムルナイト帝国の名門貴族ガンデスブラッド家の令嬢、テラコマリ・ガンデスブラッド。吸血鬼なのに血が飲めないコマリは、魔法が使えない、運動ができない、背が伸びないという三重苦に悩まされ、3年間の引きこもり生活を送っていた。しかし、ある日親バカの父がとんでもない就職先を見つけてくる。その名も『七紅天大将軍』! それは本来帝国の猛者しかなれず、3ヶ月に一度のペースで他国に戦争を仕掛け勝利しなければならない超ハードな役職。さらに部下たちは元犯罪者ばかりで将軍に就任したコマリに対して下剋上を狙う気満々......。絶対に断りたいけど、皇帝直々の任命なので辞めることすら許されない。本当の実力がバレたら即破滅なこの状況......それでもコマリはハッタリと可愛さを武器に己の任務を遂行する! 「私がこれから為すことはな、単純極まりない覇業だ! すなわち、テラコマリ・ガンデスブラッドは――他の5カ国の大将軍を武力で全員ブチ殺し、ムルナイトの国威を全世界に喧伝してやるのだ!」最強(!?)吸血姫による歴史に残る快進撃がここに始まる!作品名ひきこまり吸血姫の悶々放送形態TVアニメスケジュール2023年10月7日(土)〜2023年12月30日(土)TOKYOMXほか話数全12話キ...

コマリの強大な力が伝わる、烈核解放のエフェクトに注目

――コマリの吸血鬼としての能力が見えた第1~4話でひと区切りだったと思うのですが、監督が序盤で見せたかったことはどんなことですか?

南川達馬監督(以下、南川):最初は基本的に説明になるので、「この作品の世界では、こんなことを表現するよ」っていうのを第1話に全部入れるようにしました。

尺配分の関係で少しずつではあるんですが、「イチャイチャする女子」「かわいいけどバックボーンにシリアスな世界があること」「バトルシーンなどの動きのあるシーンもある」というのが第1話で入れ込んだところです。(視聴者の)反応を見ると、分からないという方もいたんですが、僕としては説明し切れたのではないかなと思っています。

――細かいところは、後々補足していくところですしね。

南川:そうですね。あとは観ていて楽しいエンタメ上の映像作りみたいなところも考えていて、主人公の喜怒哀楽の感情をひと通り見せて、このくらいの振り幅があるんだなっていうのを、視聴者にすり込むことができたらいいのかなと思っていました。

――確かに第1話で、「この作品はこういう感じで見せていくんだ」というのが伝わってきました。ギャグも軽快だったので。

南川:ギャグの表情も、この作品はこのくらい崩すんだという表現の幅を、最初に全部見せるイメージでした。あとはセクシーなシーンとかもそうですね。

――そのどれかに引っかかればいいですし、引っかかりどころはとにかくたくさんあった印象でした。

南川:どこかしら引っかかってほしいなと思っていましたし、原作がそのくらい良かったので、こちらもすごくやりがいがありました。原作が面白いという前提があったので、「自分がしくじったら面白くなくなってしまう」というプレッシャーしかない感じではありましたけど(笑)。

――第1話から視聴者を引き付けていき、第4話では、いじめられていたコマリの過去のトラウマや、実はコマリにすごい能力があることが明かされることになりました。このあたりの演出でこだわったのは、どんなところですか?

南川:過去回想のコマリの学生時代は一番力を入れたところです。第4話まで観ていれば分かることですが、コマリ自身の回想シーンと、ミリセント目線の回想シーンって、実は映像が違っているんです。絵のアングルは当然違うのですが、シチュエーションは同じなんですね。

第3話の途中で、めちゃめちゃ見づらい赤いフィルターがかかった回想シーンがあったと思うのですが、そこはコマリの記憶なんです。回想中にいきなり入ってくるので、気づいた人は気づいたと思うんですが、あれは捏造されたコマリの記憶なんです。それまでミリセントと同じ記憶を共有しているのに、「そんなシーンなかったのに?」ってなる。

このあたりは視聴者へのミスリードを誘っているところがあって、コマリ的には一方的にいじめられて終わっていた感じだけれど、蓋を開けてみたら、そのあと逆襲をしていた、というのが真実なわけです。ここは原作を知っている人が観て、「回想の演出が違う」と思ってくれたらなと思ってやっていましたし、第4話を観て振り返ってみて、「そうだったのか」と思ってくれたら嬉しいですね。

――コマリが血を飲んで覚醒するところは、今後も見どころになると思うのですが、このあたりの描写のこだわりや演技面で注意したことはありますか?

南川:演技のほうからいきますと、烈核解放をしたら、コマリの人格が変わる感じのしゃべりになるんですが、ここって原作の文章だとひらがなになっているんです。ちょっとIQが下がったのか、人格が変わったのか、どうとでも取れる感じの表現だったんです。もちろん台本でも、ひらがなで書いていたんですが、それを受けて、まずはテストで一度演じてもらって、そこから、彼女がどういう状態で、片言でもないけど、口数が減って人格も変わってしまっているのか、そのニュアンスのすり合わせを少しだけやりました。

そこから、あまり欲求を入れないようにとか、力を入れない感じで調整していったんですが、展開としては、普段弱かった人が、すごく強くなっているわけだから背反しているんですよね。ほわ~っとしゃべっているけど、動きはめちゃめちゃ速いし、めちゃめちゃぶん殴ってくる、みたいな感じなので。その矛盾を楠木さんにも伝えて、「動きは速いけど力は入っているわけではなくて」みたいな話をしてから、いい塩梅を探ってもらい、あの演技ができました。

映像面では、烈核解放って、今後も何度かあって、変化していくんですね。取り込む血の種類によって変わるというところまでは描かれていたと思うんですが、原作に挿絵があったので、ビジュアルの基本となるものはすでにあったんです。そこからどう動かすかということになるんですが、第4話とそれ以後の烈核解放も全く同じにはならずに、色が変わったり、技の種類や属性が違ってくる。ビジュアル的に全然違った技を使ったりするところに、作画はもちろん、特に撮影処理でディテールを加えていく感じでした。

――デジタルエフェクトをかけていったんですね。

南川:はい。スタジオのproject No.9さんの本体で撮影しているんですが、その撮影部が、歴戦の手練のクリエイターが揃っている不思議なところでして……(笑)。大きな撮影会社で撮影監督をやられていた方が、今筆頭でやっているんです。さらに最近、某ロボットアニメを担当されていた方も加わって、とんでもない技術者集団になっているんです。

烈核解放の撮影処理は、かなり複雑な処理をしているんですね。コマリがオーラを漂わせていたと思うんですが、あれは僕が細かく指示をしているわけではなくて、基本的にはその方たちが演出も兼ねる感じで組んでくれていて、シチュエーションと、激しさや強さ、あと色、そして今まで見たこともないようなオーラを漂わせているみたいな感じにしてほしいと伝えると、ちゃんと僕らが見たことがない何かになっているんですよ(笑)。

――途中で方向性だけ確認して、あとはお任せしているという感じなんですか?

南川:そうです。途中で確認はしていますが、だいたいそこから盛れるだけ盛ってもらっています(笑)。やって良いギミックとニュアンスだけ伝えると、顔に寄ったときは細かくなって、引いたときはチラチラとしたオーラが多くなるみたいなエフェクトを加えてくれていたりするので、かなり見ごたえのある、“映える”映像になっていました。これはとても真似できるものではないんですよね。なので、これからそういうシーンが出てくるたびに、さらに激しく、すごくなっていくんじゃないかなって思っています。

――期待しています!

南川:やはり撮影は画面に明確に差が出る部署なので、業界でも優秀なスタッフの取り合いになるんです。視聴者は「なんだかすごい!」って思ってくれていたらいいんですが、そこからさらに突っ込んでエフェクトを分析しようとすると、とても真似ができないような、玄人好みの処理をしていたりするんです(笑)。

――そんな迫力のアクションシーン以外に、色気のあるシーンもあるのだから、ホント全方位で楽しめる作品ですね。

南川:そのあたりのシーンも撮影は活きていますけどね(笑)。

――確かに、お風呂の透明度も高く、良かったです。

南川:よくお気づきで(笑)。アニメでよくあるシーンですが、処理ひとつでも見せ方は千差万別で、なかなか難しいんです。見せてはいけないですし、でも水って普通に透けるんですよねっていう気持ちもあって、いい塩梅を探しつつ、ギリギリを攻めています(笑)。

――バトルのシリアスさから、色気や百合やコメディが交互に来る感じが、この作品の魅力だなと思いました。

南川:シナリオ構成上もそうなるようにしていますし、基本はコメディで楽しいというのが根幹としてあって、そこにバトルがあったり殺伐としたシーンがあったりするギャップが面白いので、そのあたりを忘れずにやっています。やっぱりキャラの楽しい笑顔がある作品は良いですからね。ライトに観られますし。

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