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- おかもとみか
- 2021夏デビューのオトナ女子新人ライター。ミドル層の男性声優さん関連記事を書くことが多いです。
薬屋を生業としていた少女・猫猫(マオマオ)が、後宮で起こる不可解な事件や謎をその知識や経験で推理し解決してゆく爽快なストーリーが「おもしろい!」と大きな話題となっているアニメ『薬屋のひとりごと』。
日向 夏先生のライトノベルを原作とした本作は、2023年10月から2クールでアニメ化。また、2社でコミカライズされているほどの大人気作品です。
そんな本作には、猫猫の鮮やかな推理はもちろんのこと、美しい宦官・壬氏(ジンシ)とのコミカルなやりとりや、複雑に絡み合う後宮内の人間関係の妙、謎に包まれた猫猫や壬氏の出自の秘密など、多くの見どころが満載!
本稿では、『薬屋のひとりごと』壬氏に関する情報をまとめています。
※この記事には物語の重大なネタバレも含まれます。
国を傾けかねないほどの美貌に蜂蜜のような甘い声、絹糸のような髪。常に天女のようなたおやかな笑みを浮かべ、後宮内の女性はおろか武官のような男性すらも惑わせる魅力を持つ壬氏。そんな彼は「後宮を管理する宦官」として猫猫と出会います。
そんな壬氏は、後宮で起こる事件や噂される謎を猫猫に持ちかけ、その真相を探り対処することで、つつがない後宮の運営を司っています。しかし、実はそれは表の顔。
帝の御子をなすために存在する男子禁制の女の園・後宮では、そんな麗しい壬氏の存在は「試金石」。本来は帝の「お通り」を待つための部屋に美しい壬氏を引き入れようとするような、貞操観念の低い妃をチェックし、報告することも壬氏の仕事のひとつとなっています。
さらに壬氏には、ふさわしい妃を帝に推薦するという任務も。妃には、帝に対し邪な感情を抱かないのは当然のこと、教養や貞操観念の高さ、さらには家柄のよさや出身国と自国との関係性という政治的な面も鑑みる必要が──そのお眼鏡にかない、壬氏が帝に推挙したのが玉葉妃(ギョクヨウひ)と梨花妃(リファひ)でした。
また、4人の上級妃の中で極端に侍女が少ない玉葉妃に、侍女兼毒味役として猫猫を抜擢してその頭数を増やすことで、妃間の偏りを減らそうとする画策も。何にでも首を突っ込むところから、猫猫に「暇人」と認識されている壬氏ですが、実は多忙を極める身でした。
自身の魅力を存分に使って人心を掌握する壬氏の、そのキラキラしいうわべだけの笑顔や、「粘着質」な性格に対して寒気を生じ、つい虫やなめくじを見るような目をしてしまう猫猫。そんな猫猫のつれない対応について、付き人の高順(ガオシュン)に嬉しそうな様子で伝える壬氏はまるで「被虐性欲者(マゾ)」。ますます猫猫から半眼で見られるハメに──
美貌が役に立たないどころか、不遜な対応すらにじみ出てしまう猫猫の存在は、見る者すべてを魅了して来た壬氏にとってかつてないほど新鮮であったよう。出会った当初は「都合のいい駒」としか見ていなかった猫猫に対して、壬氏は大いなる興味を持ち、交流を重ねていくことでそれは好意へと変化していきます。
しかしながら身分の差や絶対的な主従関係があるからか、猫猫は壬氏から好意を寄せられているなどとは思いも寄らない様子。第三者から見てもわかりやすい壬氏の好意がことごとく空回りする、というコントのような状況すら生み出しています。
また、女性に言い寄られるばかりの人生だったためか、壬氏の猫猫に対する好意の示し方はまるで子どものよう。プロポーズや人材勧誘のような意味を持つ「かんざし」を園遊会で猫猫に渡す際、頬を染め「やる」としか伝えられなかったり、「猫猫」と名前で呼ぶことが出来ずに玉葉妃にからかわれたりするなど、うぶな一面も。
さらには、猫猫が別の男性を頼りにしたことを知り、落ち込んだり嫉妬するような態度を見せる壬氏の行動は、後宮内で見せる完璧で優雅なふるまいからは想像もつかない姿です。そんなギャップすらも読者・視聴者に愛されるポイントであり、壬氏の恋路を応援したくなる要素なのかもしれませんね。
帝や上級妃4人全員が出席する大規模な園遊会において、身を隠すような行動をしていた壬氏の髪には、高貴な身分の者しか身につけることの出来ないデザインのかんざしが──管理者とはいえ、後宮の「宦官」という身分にはあまり似つかわしくないその装い。
実は「宦官・壬氏」は仮の姿。実際は「皇弟」と呼ばれる、現在の帝の実弟。それが壬氏の本来の身分でした。後宮に入れるのは、「国で最も高貴な方とその血縁」と「大切なものを失った『元男性』である宦官」だけ……壬氏は、前者だったわけです。
「皇弟」である「華瑞月」は体が弱く、公の場にあまり姿を現さないとされています。そのため、園遊会での壬氏はあまり人目につかぬよう行動をしていたのです。影のように存在する皇弟が、華やかな容姿で周囲の注目を集めるような後宮の宦官・壬氏であるとは、さすがの猫猫もなかなか気づくことが出来ません。
壬氏が、帝の命を受けて梨花妃を看ていた猫猫の要望によって、突貫とはいえ「蒸気風呂(サウナ)」をすぐさま建てさせるほど強い権限を持っているのも、納得な身分のわけです。
また、猫猫に謎解きをさせるため、ご褒美として高価で貴重な生薬を用意するほか、ひと晩の酌で一般人の1年分の給金が消えるという緑青館のアイドル妓女を3人もまとめて屋敷に招く宴が催せるなど、圧倒的な「裕福さ」も見せている壬氏。
園遊会の毒殺未遂事件のとばっちりを受けて後宮を解雇となり、花街に戻っていた猫猫を大金で「身請け」するなどの桁違いな行動からも、その身分の高さが窺えます。
幼少期の壬氏こと華瑞月は、父だと思っていた人物が実は兄(現帝)であり、祖父だと思っていた人物が父(先帝)であることを知ります。それくらい、現帝とは年が離れた兄弟として誕生しました。
先帝が幼い女児を好んでいたこと。そして事実、現帝の生母である現・皇太后は出産当時、十を越えるかどうかの年齢でした。
しかし瑞月の誕生時、皇太后がとうに「少女」とは呼べない年齢に達していたことから、「不義の子では?」という噂がまことしやかにささやかれており、瑞月は心を痛めていました。
そうした事情も理由となったのか、瑞月は帝位にはまったく興味を持たず、むしろ皇位継承権を持っていることも厭うほどでした。そんな瑞月が13歳の時に先帝が崩御、現帝が即位した結果、瑞月は「東宮」となります。
現帝に何かがあった時、どうしたら自分が帝にならずに済むのか……そう考えた末だったのか、瑞月は現帝に碁をしようと持ちかけます。その勝負に勝利した瑞月は、東宮という立場を捨て「後宮の宦官・壬氏」として生きる権利を獲得したのです。
「皇弟」の身分である「華瑞月」が、「宦官」の「壬氏」であると身分や年齢、名を偽ってまで後宮を管理する任務を果たしていた本当の目的は、一体なんだったのでしょうか。
後宮で、帝にふさわしい妃を推薦することも「壬氏」の仕事のひとつでありましたが、実はその先にある「東宮」を誕生させることが、瑞月の狙いでした。
皇位継承権を持つ「東宮」。つまり、次の帝となりうる皇太子という存在の男児が誕生することで、自身の皇位継承権の順位をさらに下げるのが瑞月の最大の目的のようです。
しかしながら、現帝が東宮時代に生まれていた男児はすでに早逝しており、梨花妃との間にようやく誕生した待望の「東宮」までもが命を落としてしまう事態に。「壬氏」はさぞかし頭を抱えていたことでしょう。
そんな中、毒白粉に気づき、玉葉妃が生んだ女児である「公主(ひめ)」を救うことになった猫猫との出会いが、壬氏の人生も変えることに……! その薬と毒の知識を「使える」と判断した壬氏は、帝から一番の寵愛を受ける玉葉妃に今後降りかかるかもしれない難を、猫猫を毒味役に抜擢することで回避し、ゆくゆくは無事に東宮誕生まで漕ぎ着けることも願ったことでしょう。
不義の子の疑いがかかっている瑞月ですが、現・皇太后が生んだのは間違いなく先帝との間にもうけた男児でした。実際皇太后は、自身が先帝に呪いをかけたのではないかと猫猫に相談をした際、壬氏に先帝の面影を見いだし、思いを馳せています。
壬氏が先帝の血を受け継いでいることは間違いがないようです。
しかしながら、猫猫は皇太后の子が取り替えられた可能性があることに気づいてしまいます。それは、皇太后と時期を同じくして出産していた、現帝の上級妃の1人である阿多妃(アードゥオひ)と猫猫が交わした会話がきっかけでした。
この憶測の域を出ないはずであった猫猫の推理は、現実と違わないものでした。つまり、現帝の弟として育った男児は、現帝と阿多妃の間に生まれた子・壬氏こと華瑞月であり、阿多妃の元で育てられた男児が、先帝と皇太后の間に生まれた「東宮」でした。
難産だった阿多妃は、皇太后の出産が優先された事態を鑑み、生まれた子も今後同じ待遇を受け続けるであろうことを憂いての、赤子のすり替えでした。憎んでいた先帝の子を出産した皇太后もまた、阿多妃の行いを何も言わず受け入れていました。
周囲がこの”赤子のすり替え”に気づいた頃には、時すでに遅し。本来の「東宮」であった男児が、阿多妃の侍女頭の過失で身罷ってしまったあとの出来事でした。
これがきっかけで、当時皇太后の出産に立ち会った医官であり、のちに猫猫の養父となった羅門は肉刑に処され、後宮を追放されてしまいます。壬氏の出生の秘密が、羅門の追放で葬り去られていたにもかかわらず、その養女・猫猫が真相を見抜くことになったのはどんな因果なのでしょうか。
2人の恋の行方とともに、壬氏の今後が気になります。
声優の大塚剛央(おおつかたけお)さんは、10月19日生まれ、東京都出身。
『風が強く吹いている』の蔵原走〈カケル〉役をはじめ、『【推しの子】』のアクア役など、人気作品のキャラクターを演じています。
2021夏から駆け出した新人ライター。大人になってから乙女ゲームに触れたことがきっかけで、男性声優さんに興味を持ち、本格的にアニメを見始めた文学部出身のオトナ女子。初めての乙女ゲームは『ときめきメモリアルGirl's Side(1st)』。作品などの聖地巡礼やコラボカフェも好き。ミドル層の男性声優さんやKiramuneレーベルについての記事を書くことが多いです。
毎週土曜24:55より日本テレビ系にて全国放送中!
※放送日時は予告なく変更になる場合がございます
※地域で放送時間・日時が異なります。詳細は各局番組表をご確認ください。
放送終了後、各種配信プラットフォームでも順次配信中!
後宮を舞台に「毒見役」の少女が、宮中で起こる様々な難事件を次々に解決する、
シリーズ累計2400万部突破の大人気後宮謎解きエンタテインメントが待望のアニメ化!
大陸の中央に位置するとある大国。その国の帝の妃たちが住む後宮に一人の娘がいた。
名前は、猫猫(マオマオ)。
花街で薬師をやっていたが、現在は後宮で下働き中である。
ある日、帝の御子たちが皆短命であることを知る。
今現在いる二人の御子もともに病で次第に弱っているという話を聞いた猫猫は、興味本位でその原因を調べ始める。
呪いなどあるわけないと言わんばかりに。
美形の宦官・壬氏(ジンシ)は、猫猫を帝の寵妃の毒見役にする。
人間には興味がないが、毒と薬への執着は異常、そんな花街育ちの薬師が巻き込まれる噂や事件。
きれいな薔薇にはとげがある、女の園は毒だらけ、噂と陰謀事欠かず。
壬氏からどんどん面倒事を押し付けられながらも、仕事をこなしていく猫猫。
稀代の毒好き娘が今日も後宮内を駆け回る。
原作:日向夏(ヒーロー文庫/イマジカインフォス刊)
キャラクター原案:しのとうこ
監督・シリーズ構成:長沼 範裕
副監督:筆坂 明規
キャラクターデザイン:中谷 友紀子
色彩設計:相田 美里
美術監督:髙尾 克己
CGIディレクター:永井 有
撮影監督:石黒 瑠美
編集:今井 大介
音響監督:はた しょう二
音楽:神前 暁・Kevin Penkin・桶狭間 ありさ
オープニングテーマ:緑黄色社会『花になって』
エンディングテーマ:アイナ・ジ・エンド『アイコトバ』
アニメーション制作:TOHO animation STUDIO×OLM
製作:「薬屋のひとりごと」製作委員会
猫猫:悠木碧
壬氏:大塚剛央
高順:小西克幸
玉葉妃:種﨑敦美
梨花妃:石川由依
里樹妃:木野日菜
阿多妃:甲斐田裕子
梅梅:潘めぐみ
白鈴:小清水亜美
女華:七海ひろき
やり手婆:斉藤貴美子
羅門:家中宏
李白:赤羽根健治
小蘭:久野美咲
やぶ医者:かぬか光明
ナレーション:島本須美