スナックバス江に招かれた“ふじやん&うれしー”こと、藤村忠寿さんと嬉野雅道さんに、おふたりのファンである阿座上洋平さんが対面! 阿座上さんの反応は……?
『週刊ヤングジャンプ』で連載中の『スナックバス江』(原作:フォビドゥン澁川)TVアニメが好評放送中です。スナックを舞台にバス江ママ&チーママの明美と、珍妙なお客さん達が織りなすギャグに虜になっている人も多いのではないでしょうか。
第10話でスナックバス江に突如訪れたのは『水曜どうでしょう』の名ディレクター・「ふじやん&うれしー」こと藤村忠寿さんと嬉野雅道さんのおふたり。アドリブ満載のおふたりならではのお芝居に、キャスト陣・スタッフからも思わず笑いが漏れていました。そんなおふたりの姿に特に目を輝かせていたのが、山田役の阿座上洋平さん。阿座上さんは『水曜どうでしょう』の大ファンなんだとか。そこでスタッフの計らいにより、豪華鼎談が実現!
アフレコ後、フォビドゥン澁川先生による“ふじやん&うれしー”のイラストが飾られた一室で、和やかなムードの中、自然と対話がスタートしていきました。スナックにいる気分で、3人の対話を楽しんでいただければと思います。
「あまり気合いは入っていないんです」
藤村:ところで(アフレコ現場内に)ウイスキーとか置いてありましたよね? スナックならではの雰囲気でしたね。
阿座上:はい(笑)。飲んではいけないはずなんですけども「酒、飲みながらやろうよ」くらいのテンションでやってるんですよ。
――もともとは、アフレコ収録が終わったあとにみんなで飲もうという話があったらしいですね。
阿座上:そうです。本当は遅い時間にアフレコをして、その後に飲みたいという話だったんですけども、昼の時間しか取れなくて。それでお酒だけは置いておこう、という感じらしいです。雰囲気だけでもと。
藤村:スナックには行くんですか?
阿座上:この間デビューしたんですよ。この作品の打ち入りで行ったんです。その前にも一回行って。
藤村:(嬉野さんに向かって)スナックって行きます?
嬉野:行かないですよ。だからスナック感ではあまりお役に立てなかったかもしれないですけども。
阿座上:そんなことないです。僕も2回しか行ったことがありませんけど、リアルなお客さんの雰囲気が出ていました。あまりに自然体だったので、おふたりは行かれているのかなと思っていました。
――改めて、アフレコはいかがでしたか?
藤村:いや、特に。
一同:(笑)。
藤村:台本をいただいた段階で「まあ、こういう感じですね」と。
阿座上:自然体な感じでしたよね。あの抜け感が素敵だなと思っていました。
嬉野:僕らは基本的に無理なことはしないので。できそうになかったら断るんですよ。だからあまり気合いも入っていないんですよ。特段緊張することもなく。
阿座上:尺自体もそこまで長くなかったですもんね。
――でもものすごい存在感とインパクトでしたね。
阿座上:本当に! おふたりの声はものすごい通りますよ。
藤村:そうですか(笑)。
嬉野:この人(藤村さん)の声は通りますよ。一緒にいてもひとりだけ目立つ。
阿座上:藤村さんの声が聞こえたら、僕も振り返ってしまう自信があります。周りの人に気づかれませんか。
藤村:居酒屋とかで飲んで騒いでいるうちに人が見てくることはありますね。声でバレるっていう。
嬉野:声でバレるというか、そこで確信をつくんじゃないですか。「似てるけど違うかもな」とか思ってて、声を聞いて「あ、やっぱり」と。
藤村:まあ、声は通りますよ。
阿座上:絶対僕より通ると思います。僕は声の仕事をやってますけども、藤村さんの声のほうが分かりやすいと思いますもん。
嬉野:さっき「スナックバス江!」と一緒に声を合わせましたけど、多分僕の声は消えていますよ。
阿座上:(笑)。いやいや、おふたりとも素晴らしい声でした。僕は『水曜どうでしょう』をずっと見ていたんです。だからおふたりの声が生で聞けて嬉しかったですね。
――阿座上さんは『水曜どうでしょう』のファンだとうかがっています。
阿座上:僕はデビューして13年が経ちますけど、もともとナレーションから始めた人間で。アニメに参加させていただくようになったのはここ5、6年くらいなんです。そのため、いろいろな番組を見て、ナレーションの研究していたんですね。で、藤村さんのナレーションがめちゃくちゃ巧いんですよ。ナレーターさんとは違う、味わい深いナレーションをされている。でもディレクターなんだよな、と。当時から藤村さんの声を聞きながら勉強していました。
藤村:自分で原稿を書いて、自分で録音スタジオに行ってるからね。自分で書いてるから「ここを強調したい」とかって分かってるから。もともとはアナウンサーにやらせようと思ってたんだけど、時間も指定してくるし、めんどくさいなと。自分でやっちゃったほうが良いなと。
阿座上:へえ!
藤村:だからナレーターとは違う感覚でやってますよね。作業というか。
嬉野:でも職業人だよね。ナレーターさんの声だと思う。この間、笑い声を録音しなければいけない、ってときがあって。YouTubeの撮影中の休憩時間に「ここで録音していいか」って言うわけですよ。そしたら「はっはっは!」と。普通ね、「笑って」と言われてあんな笑い声、出ないと思いますよ。役者でも難しいです。
嬉野:録音ブースだろうが、どこだろうが、一緒のクオリティを出してくるわけですよ。きっとね、精神がおかしいんだと思う。
――(笑)。
藤村:どこでやっても一緒だよ。
阿座上:すごいなあ……。
嬉野:こういう人ですから。あんまり気を使わなくて良いんですよ?
阿座上:いやいや。ナレーターを目指す人間はナレーターの声を勉強しますけども、藤村さんはいわゆるナレーターには無いものを持っているじゃないですか。だからその無いものを吸収できたら良いなと思っていて藤村さんの声を聞いていました。でも、できないですね。
嬉野:この人は吸収できないと思う(笑)。
藤村:自分たちで作っているものでさ、自分たちの場でさ、自分たちでコントロールしてるからね、あの番組って。誰からもコントロールされてないから。そういう意味で言うと、全てにおいて力を抜いてるの。
嬉野:そうそうそう。
阿座上:それが良いんですよ! それがすっごく良い。
藤村:監視役がいないと人間ってこんなに伸び伸びとできるんだってくらい。次『どうでしょう』をやるのかも決めてないですしね。ナレーションに関してもね。
出演陣が男ばっかりだから「女性のナレーションがいいよね」なんて音響さんは言ってたんですよ。それで女子アナに読んでもらったこともあったんですけども、予算面とかがね。それで「俺がやる」と。だから、本編の中でもいちばん喋ってるし、さらにナレーションも俺。
阿座上:(笑)。
藤村:「それおかしいよ!」って言われたんだけどね。
阿座上:そんなディレクターさん、なかなかいないですよ。
嬉野:普通じゃないわけですよ。本編でずっと喋っているひとがいて、さらにナレーションもとなったら、ちょっとおかしいから、女性ナレーターを入れようかってアイデアだったと思うけどさ。
藤村:ありがちなね。
嬉野:そう。だからありがちでは全くない。でも、聞いてたら聞けるわけですよ。
藤村:意外とね!
嬉野:あんなに本編の中で罵倒しまくってるのに、いきなり(ナレーションとして)「さあ、それでは!」ってなる。でも全然聞ける。反対に言えば、割り込めないんだよね。それはあるのかなと思う。編集しながら原稿を書いて録音して……って風景はあまり見ないよね。
藤村:普通は秒数を指定するじゃない? でも俺はそれがないから。編集できちゃうし、ナレーションはその場で録るからバッチリ合うのよ。
嬉野:そうやって聞くと、このひとが異常に聞こえるかもしれないけど、本当はそうであったほうが作業はしやすいんですよね。普通であればディレクターは「ここはナレーションでつなげたいな」って思っても、常にナレーターが隣にいるわけではないですから。「スケジュール合わないんですよ」ってこともある。このひとは思いつくままにできる。それが人間の性にあってるのかなと思いますね。
阿座上:僕らは養成所や学校で、尺や喋り方の基本に関しても学ぶんですよ。もともとの基礎ができてるっていうのがすごくて。
嬉野:このひとの養成所は家庭ですよ。
阿座上:生まれ育った環境……(笑)。それは敵わないですね。それが今日のアフレコでもそのまま生かされていたように思います。嬉野さんのお声もすごく好きなんです。『水曜どうでしょう』の中でたまに入ってくる嬉野さんの声がすごく良くて。背もすごく高くて、タレントさんのようなイメージがありました。HTB(北海道テレビ放送)さん、すごいですね。なぜこんなすごい人たちが集まったのかと思うくらい。
藤村:嬉野さんの声は良いんですよ。実は僕なんかよりもいちばん喋るんですよ。ただ、番組の中ではカメラを回しているとあまり喋れないから、なるべく俺は嬉野さんに喋ってほしいなと思っているくらいで。
嬉野:この人がいかにおかしいか、喋りたくなることはありますけどね。
阿座上:大泉洋さんを含めてわちゃわちゃしているところに、たまにスマートなツッコミが入ってくるあのバランス感覚が素晴らしくて。
嬉野:でも喋りはスマートではないんですよ、この人。目の付け所がこの人はおかしいんですよ。話す内容が面白い。あと、語彙力がすごい。大泉さんもそうだけど。
阿座上:絶妙ですよね。よくそんな言葉がポンポンと出てくるなと見ていて思っていました。勉強になります。役者は語彙力も大切なので。
藤村:勉強にならないよ(笑)。