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『BASTARD!!』&『ゴブスレ』スタッフ座談会

『BASTARD!! -暗黒の破壊神-地獄の鎮魂歌編』&『ゴブリンスレイヤー』スタッフ座談会──尾崎隆晴監督&黒田洋介さん&倉田英之さんが考える二作品の共通点は……?

 

いつのまにか女の子だらけ

──『BASTARD!!』と、その同時代の作品が広げた日本のファンタジーというジャンルの枠の中から、今のウェブ小説が出てきた。おもしろいです。さらにいえば、そうした流れから出てきた『ゴブリンスレイヤー』が、『BASTARD!!』と比べて結構クラシックな、海外のファンタジーに近い雰囲気を持っているのも……。

尾崎:そうですね。

倉田:『ゴブリンスレイヤー』は絵も内容もかなりクラシックで。

黒田:でもどちらかというと、『ゴブリンスレイヤー』は「ドラクエ」や「FF」とはまた違う、近年のゲームからの影響が強いと僕は捉えていましたけどね。『スカイリム』とか『ダークソウル』とか『デモンズソウル』とか『エルデンリング』みたいな、ああいうダーク・ファンタジーをベースにして、蝸牛くも先生が自分なりの世界観を作られた。倉田さんの下でサブライターとして参加したとき、僕はそう理解しました。

 

 
倉田:たしかに蝸牛くも先生がずっとこだわってらっしゃるのは、ゲームらしさなんですよね。でもどちらかというと、TRPGの方が強いかな。ただ、その要素をアニメで強調すると、視聴者は感情移入しづらくなってしまう。

尾崎:やっぱりアニメでは視聴者がプレイヤーとして動くことはできないわけで、そこにあるものを見ることで楽しむという意味では、ちょっと感情を入れないと厳しい。

倉田:物語のキャラクターであると同時に、ゲームのキャラクターでもあって、そしてその世界を眺めながら キャラクターの行動を左右するサイコロを振っているプレイヤーがどこかにいるような多重構造的な世界って、文章では書けるんです。

でもアニメで描くと、表現にものすごく手間がかかって、さらにダサいものにもなりかねないので、そこはアニメ向けに調整しています。

黒田:ダイスロールっぽい感じを描こうとすると、どうしてもキャラクターが何かの力に操られているような感が出てしまうんですよね。

尾崎:ですね。倉田さんたちは感情移入の部分を上手に、アニメという形式にあわせてよくまとめてくれているなと思っています。

 

 
倉田:でもそもそも原作から、主人公のゴブリンスレイヤーさん自体はものすごく感情移入させられるキャラなんですよ。そこのバランスどりが原作の魅力なので、アニメでも調整しつつ、あくまで原作の魅力を損なわないように気を使った感じです。

……しかしですね、それはそれとして、クラシックな雰囲気だと思っていた『ゴブリンスレイヤー』ですけど、何か気がついたら、ゴブスレさんのまわりは女の子だらけじゃないですか。

──たしかに。

倉田:僕は2期のシリーズ構成をやっているときに気がついたんです。妖精弓手(エルフ)さんの結婚式のあたりで……。

──女性キャラがそもそも多いし、2期になると水着回もある(笑)。冷静に考えるとびっくりしますよね。

黒田:くも先生に言われたことがあるんですけど、ゴブスレさんは『装甲騎兵ボトムズ』のキリコのイメージがちょっとあるそうなんです。だからまあ、女の子がたくさんいても、あれはキリコのまわりに女の子がいっぱいいるようなもので、さしてゴブスレさんに影響は与えないのだなと(笑)。

尾崎:ははは。たしかに。そもそも水着になるシーンは、尺(映像の長さ)に原作のエピソードが収まらなそうだったら、真っ先にカットする候補でしたからね。

倉田:でしたね。何か2期のシナリオを書いていてあらためて思ったんですけれど、この作品に出てくるようなかわいい女の子というのは、日本のファンタジーならではのものなのかなと。

黒田:うん。そう思うよ。

 

 
倉田:「D&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)」にああいうキャラって出ないじゃないですか。

黒田:出ないね。それこそ『BASTARD!!』だったり、もうひとつ遡るなら、いのまたむつみさんが『幻夢戦記レダ』でビキニアーマーの美少女を描いたところから、何かが始まったのかもしれない。

倉田:『レダ』いいですよねぇ〜……このあいだ、Blu-ray BOX買っちゃいました。

黒田:マジか!

倉田:今見てもいいですよ、『レダ』。ストーリーもちゃんとしてるし、絵もきれいだし。

黒田:そうかぁ。ただ、「なぜあのデザインだったのか?」ってとこだけは、今でも俺、わからんわ。

倉田:いやでも、あれね、異世界の登場人物がみんな、あんな格好なんですよ。だとしたらわかるじゃないですか!

──あの世界ではそれが常識だと。

黒田:うーん、それで納得していいのか(笑)。

倉田:あの辺からやっぱり、日本のファンタジーのスタイルみたいなものができていった。

尾崎:そうですよね。

 

 
倉田:海外もののファンタジー……『コナン・ザ・グレート』とかをそのまま日本でやっても受けないと、あの頃、うすうすみんな感づいてたんじゃないかなと。

黒田:マッチョは受けない、みたいなね。『北斗の拳』は受けたしなあ、とは思いましたけどね。

倉田:でもそれも、肩パットが大事だったんですよ。たぶん。

尾崎:マッチョのムキムキのやつが突然日本のマンガやアニメに出てきて主役を張ったら、ひいてしまう人もいるかもしれない。

でもダーク・シュナイダーは美形で、筋肉質でもどちらかというと耽美な部分を持っている。あそこで単純にアメコミ風のマッチョを持ってきていたら、歴史は違ったと思うんですよね。あの耽美さも上手くファンタジーの要素を日本でアレンジした部分なのかな、と。

倉田:日本だとヘヴィメタルのバンドもそうですよね。海外だとメタルはマッチョがやるんですけど、日本だとひょろひょろした人がやる。この思想の違いはなんなんだろうと思うけれど、そういうのがマンガやアニメのデザインにも反映されている。

尾崎:そうそう。

倉田:マッチョに限らず、海外はとにかく、強い人は強そうに描く。日本のデザインって、弱そうな人が実は強い、みたいなのに目がないじゃないですか。

黒田:「柔よく剛を制す」みたいな精神が、どうしようもなく日本人にはあるんじゃないか(笑)。

 

 
倉田:ファンタジーも日本人の感性に一致して進化しているんでしょうね、きっと。水野良さんとかは真面目だったんですよ。『ロードス島戦記』はディードリットくらいじゃないですか。可愛い女の子の要素って。

黒田:基本はおっさんばっかりだもんね。

倉田:それを女の子でやったら? みたいな発想の転換で『スレイヤーズ』が出てきて、「どうせだったらやっぱり、キャラクターは女の子の方がいいよね!」みたいな感じで、そのやり方が広まっていって、そして今の日本のファンタジーの形がある(笑)。

黒田:『スレイヤーズ』もすごいよね。これもまた、始祖のひとつですよ。

倉田:やっぱりパイオニアは偉いんですよ。最初に道を切り開いた人たちは、本当に偉い。

黒田:「ドラクエ」「ファイナルファンタジー」『BASTARD!!』『スレイヤーズ』……もちろん他にもね。

そもそも「ドラクエ」にしたって、おそろしい魔王がいて、モンスターが跋扈している世界に、「ぱふぱふ」とか平気で言ってるジジイがいる(笑)。ああいう、どんなに厳しい世界でも娯楽に執着している人がいる、そういう感覚を許してもらえる環境が僕ら日本人の中にはあったのかな? と。

倉田:そういう息抜きが世界の中にないと、子供は絶対に作品を楽しめないですよね。特に中高生とかは、絶対にそういう部分がないと、真面目一辺倒ではその世界を最後まで遊べない。

ストイックな人は『ウィザードリィ』や『ディアブロ』をやれるけど、それがここまでの広がりを得るには、さっきからタイトルを挙げているような作品だったり、ほかにも『イース』みたいな、美少女が出てきて、主人公は生き残ることが確定していて、安心して見ていられるようなところが必要なんでしょうね。

 

 

『BASTARD!!』と『ゴブリンスレイヤー』の共通点は……

──なんだかとても大きなテーマの話につながりました。こうしてお話をうかがっていくと、『BASTARD!!』と『ゴブリンスレイヤー』に、広い意味での日本のファンタジー作品としての共通項があるということなのかな、と感じます。

尾崎:とはいえやはり、パッと触れた感じは、真逆な作品ではあると思いますよ(笑)。ただ、僕が思う共通点はあります。それは主人公がどちらも「俺流」なところ。ベクトルは全く違うんだけども、ゴブスレさんはゴブスレ流があって、ダーク・シュナイダーにもダーク・シュナイダー流がある。

 

 
黒田:別のジャンル、たとえば時代劇でいうと、『遠山の金さん』と『必殺仕置人』くらいの違いはある二作品なんですけど、でも根底には「ファンタジー」というジャンルへの意識がきちっとあって、ジャンルとして大事なことは守られている。そういう中で、どういう方向性に振るかが、主人公たちの姿に現れているってことなんじゃないですかね。

尾崎:なるほど、そうですね。

黒田:その方向性こそがいわゆる「作家性」で、言い換えればどちらの作品もたしかな作家性がある点が共通しているともいえるんじゃないかな。

──では、きれいにまとめていただいたところで、今日の取材は終わりに……。

 

 
倉田:いや、もっとはっきりした共通点がありますよ。思いつきました。

黒田:え、何?

尾崎:気になりますね。

倉田:……ゴブリンですよ!!  『BASTARD!!』にも『ゴブリンスレイヤー』にも、両方ゴブリンが出てくるじゃないですか!! これだ!!

黒田・尾崎:わはははははは!

黒田:ファンタジーもののアニメなら大体出てくるだろうが、ゴブリンは!!(笑)

 

 
【取材・文 前田 久】

 

『BASTARD!!』掲載情報

(1)第2期『BASTARD!! 地獄の鎮魂歌編』放送情報
・BS11・ABEMAにて2024年1月2日(火)24:00より放送開始!
初回のみ90分スペシャル放送!

※初回(1月2日)は第1話~第3話連続放送
・第4話以降:1月9日(火)より毎週火曜日25:00~ 1話ずつレギュラー放送
※初回と放送開始時間が異なるのでご注意ください。
・アニマックスにて2024年1月27日(土)22:00より放送開始!
・第1期、第2期ともにNetflixにて全話好評配信中!

(2)第1期 一挙配信情報(12/22(金)18時解禁)
ABEMAにて『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』第1期「闇の反逆軍団編」が一挙放送決定。
第2期配信直前に、第1期 全話視聴できるチャンスをお見逃しなく!

12/29(金)19:00〜25:25 前半#1-13
12/30(土)19:00〜24:25 後半#14-24
※いずれも「アニメSPECIAL2チャンネル」にて放送

 

『ゴブリンスレイヤーⅡ』掲載情報

(1)TVアニメ『ゴブリンスレイヤーⅡ』配信情報
・ABEMAにて見放題独占配信中!
・1月1日(月) 16時15分~ABEMAにて 初・全話一挙無料放送決定!

■公式サイト:https://goblinslayer.jp/
■公式X:https://twitter.com/GoblinSlayer_GA
■公式TikTok:https://www.tiktok.com/@goblinslayer_official

 

(C)萩原一至/集英社・BASTARD!! 製作委員会
(C)蝸牛くも・SBクリエイティブ/ゴブリンスレイヤー2製作委員会
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