冬アニメ『僕の心のヤバイやつ』第2期連載インタビュー第1回:原作・桜井のりお先生|山田の葛藤を市川が見つけてあげる第13話、アニメだけ見ている人の感想も気になるところ
キャラクターの魅力が詰まった『ツイヤバ』、本編を見ていない人でも楽しめるように
――公式X(旧Twitter)にて公開されてきた「僕の心のヤバイやつ」のスピンオフ『ツイヤバ』が12月10日より「Amazon Prime Video」配信になります。『ツイヤバ』のお話を受けたときはどのような印象がありましたか?
桜井:お話自体は結構前からいただいていたんです。最初は「ショートで作るのかな?」と思っていました。そしたら20分のお話として作っていただいていてびっくりして。しかも、ちゃんとつながりのある脚本を作っていただいていて、それが素晴らしいなぁと思いました。
――アニメ『ツイヤバ』の見どころについても教えてください。
桜井:本編とはちょっと違ったコミカルさや、良い意味での軽さがアニメーションにも出ています。本編を見ていない人でも気楽に楽しめるのかな?と思っています。「ふたりはこういう関係性ですよ」というのが手っ取り早くわかるものだと思うので、たくさんの人に見ていただけたら嬉しいです。
――続きが見たいと思ったら、桜井先生のアカウントで見られるというのがまた贅沢ですね。
桜井:ぜひ見ていただけたら。
――『ツイヤバ』で山田の魅力もさらに知られるような気がしています。『ツイヤバ』を描かれる時に意識されていることはありますか?
桜井:本編を見ていない方にも、キャラクターの魅力が一発で分かってもらえるように、楽しんでもらえるように、というのは意識しています。深くは考えてはいないんですが……「山田ってこういう人ですよ」というのをわかりやすく出せたらなと。山田はこういう人だから市川はこう行動する、というふたりの関係性をとにかく分かりやすく描くようにしていますね。
――Xでの『ツイヤバ』の展開も楽しみにしています。もしよかったら、(インタビュー段階は)年の瀬なので、2023年を振り返ってのご感想もお聞かせください。
桜井:いやあ……今年はアニメ関係のお仕事も多くて、いちばん大変な1年だったのかなとも思いますが、すごくたくさんの方に作品を知ってもらえたのが嬉しかったですね。来年はもっともっと、海外の方や、普段アニメを見ないという方にも知っていただけたら嬉しいですね。
担当編集福田(以下、福田):実際、第1期放送後に漫画の海外翻訳版が増えたんです。特にヨーロッパ圏が増えて。それはアニメの効果なのかなと思っています。
――来年は『僕ヤバ』の魅力がさらに多くの人に届く1年になりそうですね。
原作の「これから」についても(ネタバレ注意)
――お話できる範囲で、原作の今後の展開についても教えてください。
桜井:原作ではもうふたりは付き合っていて。でも市川と山田がどうなっていくのかというより、市川自身がどう自分と向き合っていくのか、というところでしょうか。それこそ中学校3年生で受験も控えているので、受験に向けて、どう気持ちを作っていくのか、そういう部分がメインになりつつ……中学生同士のお付き合いってどんなものなんだろう?とか、私自身も手探りつつ。ふたりのお付き合いも、楽しく描けていけたらと思っていますね。その一方、山田と市川だけじゃなく、周りの子たちも一緒に受験をして成長していくわけなので……そういうところも描けたらなと。
――最新話(Karte.133〜134)を読んで、萌子にも葛藤があったんだなぁと。萌子の気持ちに共感するところがありつつも、個人的には「山田をいじめないで!」という気持ちになってしまいました。
福田:反響が大きい回でしたね。桜井先生もどちらかと言うと、そう思われていましたよね。私は萌子に「もっと言ってしまえ!」と思っていたタイプです(笑)。
桜井:最初「萌子の言い方がきつすぎるかもしれない」と不安もあったんです。福田さんに聞いたら「山田が悪い」と。
福田:(笑)
――きっぱりと(笑)。
桜井:それで「そうなんだ」と。友だち同士の喧嘩って、どちらが正しい・悪いってなくて、ちょっとずつズレがあって、そこで爆発してしまうと思うんですよね。どちらかが悪者にならないように、というのは気をつけて描きました。
――特に中学生の場合は、些細なことがきっかけでヒビが入ってしまう、繊細な時期ですもんね。
桜井:そうですね。例えば「言い方が嫌だなぁ」って胸を痛めてしまうことも、中学生だとあると思うので。
――「どちらかが悪者にならないように」というお話がありましたが、実際、萌子の気持ちもわかるところがあって。桜井先生のお話には「どちらの気持ちもわかる」という共感も忍ばされているのも、ポイントだと思っています。
桜井:そうですね。どんな人にも「わかるなぁ」って思ってもらえるところを作りたくて。「こういう人っているよなぁ」「こういうこともあるよね」とか……そういう人間らしさが出ると良いなぁと思っています。
[文・逆井マリ]
作品情報
あらすじ
美少女らしからぬ行動を繰り出す山田に、市川は目を離せずにいた。
そんな市川の恋心を知ってか知らずか、山田は天真爛漫に近づいて来る!!
全く違う世界にいたはずの2人。しかしその距離は、徐々に近づいていき……。
キャスト
(C)桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会